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「まず一人は、池田守。性別は男で今年ちょうど二十歳になる。普段は大人しいが、何かきっかけがあると性格が豹変。非常に暴力的になる。そして厄介なのが、この暴れてる最中に発される『毒』だ。池田自身の苛立ちや不安が感染するのか、暴れている彼の姿を見る、または声を聞くだけで周囲にいる者も心が荒み始める。そして気づけば、彼と同じく周囲の人間に意味もなく暴力をふるうようになる」
「ふうん。確かに厄介だけど、君ならこの『毒』には免疫がありそうだね。何せ意味なく人を殴るのは得意分野なんだから」
「お前まだ殴ったこと根に持ってんのかよ。あんま昔のことを掘り返すような男はモテねえぞ」
「あれを忘れろと言う君の異常性には舌を巻くばかりだよ。きっと脳が獣並みに小さいんだね。ある意味羨ましいよ」
「あ? お前もしかして喧嘩売ってんのか?」
「別に喧嘩を売っているつもりはないさ。馬鹿にしているだけだ」
「てめえ――」
「二人とも、喧嘩はしないでくれ」
苛立ちから南方の顔めがけ繰り出そうとした俺の拳が、神月の『エセ祈願』により止められる。喧嘩を吹っ掛けてきやがった南方にもその効果が効いているのか、何度か声を発そうとした後、「チッ」と舌打ちして口を閉じた。
その様子を眺めた神月は、ひどく気怠そうに溜息をついた。
「……彼のヤバいところは、視覚と聴覚の両方から『毒』が流れ込んでくる点だ。加えてこの『毒』は感染性がある。『毒消し』としての資質を持たない者を、今回の鎮圧作戦に入れられない要因の大半は彼の存在だ。
で、二人目は久住一馬。こちらも性別は男。年齢は三十三歳。一言で云うならクズかカス。性格は最高にねじ曲がっていて、奴のあまりのクズっぷりを見たり聞いたりしたものは、人間不信に陥り引き籠るか、善人でいることに馬鹿らしさを感じ最悪のクズに生まれ変わる。性格改変系の『毒』を持つ者はそれなりにいるが、その悪質さで彼を上回る者はいない。彼に関しては見かけたら速攻で殴って気絶させてくれ。因みに三十過ぎのおっさんはこの施設には奴一人だから、見ればすぐに分かると思うよ」
「おい。やっぱり事前に知っとかないとやばい奴紛れてんじゃねえか」
「三十過ぎのおっさんは本当に一人なのか? 職員の中にもそれぐらいの年齢の人が一人はいそうな気がするが?」
俺と南方から即座に文句と質問が飛ぶ。
神月は「そういえば職員の中には三十過ぎもいたなあ」などと呟きつつ、そのまま三人目の話をし始めた。
「最後は安楽音メルト。性別は女。年齢は十八。まあなんというか、こっちの施設でおそらく最強の『毒草』だ。『毒』の力単体で言えば、十分ムクロに並びうるんじゃないかな。具体的には――」
三人目の超やばい毒草について話し始めた直後、俺たちは長い廊下を歩ききり、毒草どもが待つ扉の前までたどり着いた。監視カメラからこちらの映像が届いているのか、数秒と待たずして自動で扉が横にスライドする。
扉の先は、やはり精神を狂わせるような真っ白な空間が続いていた。しかし一点、ある箇所だけは、やや色彩豊かに彩られている。
白い空間の中にあって、特によく生える赤い色。
不自然なオブジェのような物が壁から生え、その上には赤い文字で『ようこそ』と記されている。
入って早々に飛び込んできた衝撃的な画に、俺らが立ち尽くす横で。神月が呆然とした表情で
「安楽音……」
と呟いた。




