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皆に紹介してあげるというムクロの提案を断り、俺は一人で挨拶回りを行うことにした。正直こんなところに集められた人間がまともだとは思えないので、話しかけに行きたくはない。だが、ここで行われている実験を終わらせるためには、集められた奴らの情報が必要不可欠だろう。
ムクロはここから脱出する気がないらしいが、ここにいる全員がそうだとは限らない。ここから出るためにいろいろな計画を練っている奴もいるかもしれない。というかいてくれることを強く望む。もし誰もここから出ようと考えていなかったのだとしたら……ここでの生活は果てしなく厄介なものになりそうだ。
未来への不安を感じ、つい溜息がこぼれる。このままだと負のイメージに押しつぶされそうなので、軽く自分の頬を叩き気合を入れなおす。
さて、まずは誰に話しかけるか。
できるだけまともそうな奴を探してきょろきょろあたりを見回していると、意外にも一人の青年が声をかけてきた。やや長めの黒髪に、人懐っこそうな丸い瞳。年齢はぎりぎり二十に達していないくらいだろうか。先にムクロを見ていたからそう思うのかもしれないが、比較的まともで穏やかな雰囲気を感じる。
彼の声に反応して軽く頭を下げると、警戒心を抱かせないにこやかな笑みを浮かべながら青年は言った。
「どうも、初めまして。芥川幽と申します。何か困りごとがあるのなら、相談に乗りますよ」




