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「……それで、いつまでお前はそうしてるつもりなんだよ」
「あなたが質問に答えてくれるまでです」
呆然と立ち尽くすこと約五分。
その間も飽きることなく袖を引っ張ってくる少女に耐え兼ね、俺はため息とともにそう尋ねた。
「はあ、そうだよ。気味の悪い奴ってのはお前のことだ。だからいい加減袖を引っ張んのをやめろ」
「はい」
ぱっと、惜しむ様子を一切見せず、掴んでいた手を放す。
俺は再度深いため息をつく。ようやく悪夢のような質問サイクルから解放された。
「それで、どこら辺が気味悪いんですか?」
「まだ質問続くのかよ!」
こらえきれず、猛烈なツッコミを入れる俺。本当に、ここに来てから調子が狂いっぱなしだ。
また質問サイクルが始まらないよう、さっさと話題を変えにかかる。明らかにどこか狂っているとはいえ、全く話が通じないわけではないのだ。
「お前って、いつからここにいるんだ。俺としてはさっさと家に帰りてえんだけど、少しはここでの実験とやらを終えるヒントとか知らないのか?」
「はあ、私は確か三年位前からここにいますけど。実験を終えるヒントはさっぱり分かりません。終わらせようと思ったこともありませんし」
「三年って、マジかよ……」
どんなに頑張っても数日でここから出るのは無理そうだ。一旦考えをまとめて、じっくりと策を練る必要がある。そのためにもまずは――
「他の住人にも挨拶しに行きますか?」
俺の考えを読んだかのように、うつろな少女が提案する。
俺は小さく頷いてから、久しぶりに少女の顔を直視した。
「ところで、お前の名前って何なんだ。因みに俺は津山睦雄だ」
「睦雄さん……。私の名前はムクロです。なんとなく、似た名前ですね」
「いや、似てねぇよ」




