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「『毒草』が人を狂わす被験者。『毒消し』が『毒草』の効果に耐性のある人間。『火炎』は『毒草』に耐性がありなおかつ『毒草』を殺そうとする人間、か。なら僕は『毒消し』として呼ばれた『毒草』と言ったところだな」
「じゃあ俺は『毒消し』だと勘違いされて呼ばれた、ただの被害者だな。芥川の『毒』に殺されかけたし」
「『毒消し』として呼ばれたからと言って、どれだけ強い耐性を持っているかは人それぞれだからねえぃ。もうここに呼ばれちゃった時点で『毒草』でないなら『毒消し』ってことになるだろうねえぃ」
「安心しろ。君はまず間違いなく『毒草』だ。何の罪もない初対面の人間をぶん殴り、いまだに謝罪の一つもしない。これが狂人でなく一般人なら、僕の知らないうちに世界は終末を迎えていたことになる」
「お前、まだそのこと怒ってんのかよ。借りなら丸ごと返すって言っただろ」
「せめて借りを返してからそのセリフを吐くべきだと思わないか? やはり君は『毒草』のようだな。君と話しているとまるで僕がおかしなことを言っている気になってくる」
「別にこんなの狂ってる内に入らないだろ。ただの個性だよ、個性」
「そうだな。君は狂人ではなく礼儀や常識を知らないただの野蛮人ってことだな」
「おい、喧嘩売ってんのか?」
「先に喧嘩を売ったのは君だろう?」
「……こんなに楽しそうに会話してる人たち久しぶりに見たよう。二人とも随分仲がいいんだねえぃ」
「「仲良くねえよ」」
声も動作もピッタリに綾崎を睨み付ける。
会話中ずっと風呂に入っていたため真っ赤な顔の綾崎は、俺たちの視線から逃げるように湯船から立ち上がった。
「まだまだ話してないことはあるけど、『火炎』が現れたってことはいろいろと次の動きがあるだろうからねえぃ。そろそろ風呂から出て、いつもの広間に行ってみようや。津山キュ――津山君としては、中々に嬉しくないことが起こってるだろうからよん」
「俺にとって、嬉しくないこと?」
すでに最悪なのにまだ何かヤバいことが起こるのか。
俺は南方との言い合いを打ち切り、風呂を出て行った。




