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風呂場到着。
かごから何まで真っ白で統一された脱衣所で服を脱ぎ、白いタオルをもって風呂場に入る。風呂場も何から何まで白で構成され、どういうわけか風呂の水まで白かった。
「どんだけ白に拘んだよ……」
「ほら、風呂に入る前にちゃんと体洗って。それとも俺が背中を流してやろうかいなぁ」
「いらねえよ」
ぶっぎらぼうにそう答えると、俺は石鹸を使って全身をごしごしと洗い始めた。別段綺麗好きではないが、三日間も風呂に入っていないことを思うと念入りに洗いたくなる。普段より少し長めに体を洗った後、俺は風呂場に飛び込んだ。
「ふおー、何だこのぬめぬめした風呂! すっげえ体温まるな!」
「風呂程度でテンション上がるとか、六号くんは子供だねえぃ。俺としてはたまには白濁湯以外にも入りたいところなんだけどね~」
じゃぽん、と音を立てて風呂に入り込む綾崎。
風呂のおかげで少し口が軽くなった俺は、前から言おうと思っていたことを吐き出した。
「おい、その六号って呼び方止めろ。なんで六号なのか分かんねえし、そもそも俺の名前は津山睦雄だ。ちゃんと名前で呼べ」
「六号ってのはちゃんと理由があるんだよな~。まあどうしてもっていうなら、これからは津山キュンって呼んであげるけど」
「その変な呼び方したらもう一発殴るぞ。普通に津山って呼べ」
「はいはい。津山キュ――津山君。それじゃあ、改めて質問に答えちゃおうかねえぃ」
綾崎の表情が少しだけ真剣なものになる。これで、ようやくスタート地点まで戻ったわけだ。
さて、何から聞くか。いざ聞くとなると何から聞くべきか悩む。脱出方法を一番知りたいのだが、どうせそれはこいつも知らないだろう。その前に、『毒消し』だとか『火炎』の意味について聞くべきか。
質問する内容を決め口を開く。と、風呂場の扉が開き、南方が入ってきた。




