表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人人人皿毒  作者: 禍影
2日目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/95

46

 足りない酸素を補給するため、何度も大きく息を吸い込む。

 一度、二度、三度……。

 少し呼吸が楽になったところで、全身に力を入れ立ち上がる。視線は天井に向けて荒い呼吸をしながらも、俺はムクロに礼を言った。

「……悪い、助かった」

「いえいえ、大したことは何もしてませんよ」

 謙虚と言うか、本当に大したことをした自覚がないのか。ムクロはいつもと変わらない無感情な声で返してきた。

 その態度に落ち着きを覚える自分に驚きつつ、俺は再びマリアへと目を移した。

 彼女は目の前で起こったことが信じられないのか、驚愕の瞳で俺を見つめている。まあそれもそうだろう。こいつ(ムクロ)は別として、生者なら誰だってマリアの声を聞けば自殺を考える――いや、命を捧げるのが正しいと考えるはずだ。

 あるべき場所に還る。奥底に眠る本能がそう告げる感覚。俺のような一般人では、本来なら耐えるべくもない絶対的な強制力。

 もしこれを無意識に発動させているのだとしたら、それは近寄る相手全てを殺す『毒』となっていただろう。そう考えると、この施設が作られた当初の目的にも何となく予想が立つ。まああくまで予想だし、俺がここに連れてこられたことへの理由には全くならないが。

 さて、『毒』の無効化はできたし、いろいろと話を聞いておくか。

 そう考え、口を開く。が、言葉を発する前に耐えがたい酷い痛みが頭を襲う。そのあまりの激痛から立っていることすら困難になり、再び俺は床に膝をついた。

 なぜ突然こんな頭痛が?

 そう思ったのも束の間、茫洋とした表情のムクロが目に入り、自分の失策に気づいた。マリアの『毒』から逃れるために必要だったとはいえ、ムクロの『毒』をもろに食らってしまったという事実。頭の中で、ムクロに『お願い』をされた結果、その『毒』を受け止めきれず死亡した少年が浮かんでくる。

 ――これって、もしかして死ぬのか?

 そう考えると同時に、俺の意識は深い闇の中に落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ