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「マリアちゃん、隠れてないで出てきてください。マリアちゃんとお話をしたいという方を連れてきましたから」
実に堂々とした躊躇いのない動きで、ムクロは毛布の塊に近寄って行った。そして、マリア自ら顔を出すのを一秒ほど待った後、反応なしと考え無理やり毛布をはぎとった。一切の容赦なしである。
心臓がバクバクと波打ってるのを感じつつ、視線をそらさず毛布の中身に集中する。ついに、ここに十年間住み続ける化け物とのご対面だ。
ばさり、と毛布が床に落ちる。
そして、毛布を失ったベッドに残されたのは、銀髪で碧眼の、美しい少女だった。
天使。
女神。
いや、聖女と呼ぶのが一番ピンとくる。
見た目はまだ十二、三歳と言った幼い少女。だが、わずかに涙を湛えうるんだ碧眼の瞳。薄いピンク色に染められた小さな唇。シミ一つなく真っ白で、透き通ったすべすべの肌。穢れを一切感じさせない銀色の髪。
そのパーツの一つ一つが人間とは思えないほど美しく、それでいて不思議な包容力を兼ね備えていた。
マリアの姿に見惚れ、呆然と立ち尽くす。
そんな俺に、「今更ですが」とムクロが小声で囁いてきた。
「ご対面させてから言うのもあれですが、マリアちゃんの声を聞いた方のほとんどが、なぜかすぐに自殺するらしいです。私は自殺したくならないのでよく分かりませんけど、睦雄さんは気を付けてくださいね」




