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「ここか」
「ここです」
うつろな少女に案内されたのは、無駄に頑丈そうな鉄の扉の前。床も天井も壁もありとあらゆるところが白いのに、この扉だけは特に白くもない武骨な銀白色。ここから先には進ませないという明確な拒絶の意思が伝わってくるようだ。
そんな鉄の扉の中央には人の顔と同じくらいの大きさのモニターが一つ。
うつろな少女は俺の手を離すと、モニターの前で軽く手を振った。
「このいかついお兄さんから質問があるみたいです。答えてあげてください」
「いかついお兄さんって……まあいいか。んで、モニター越しに俺をここまで連れてきた野郎がいんのか。善良な一般市民をこんな隔離病棟みたいな場所に拉致した理由、話してもらおうか」
ガン、と強めに一発扉を蹴る。予想はしていたがびくともしない。
こりゃ力業での脱出は難しそうだなと考えていると、モニターの電源がつき、全身を真っ白な防護服で包んだ男が映った。防護服のせいでその顔をはっきりと見ることはできないが、取り敢えず知り合いではなさそうだ。
眉間にしわを寄せ、かなりきつめに睨み付けてみる。
「お前が俺を拉致した野郎の親玉か? 今なら顔の形が変わる程度にボコるだけで許してやるから早くここから出しやがれ」
「……君は、ここに拉致された理由を聞きに来たんじゃないのか」
かなりハスキーな声。ただ、一切感情がこもっているようには思えず、ロボットなんじゃないかと疑いたくなる声でもあった。
どうやらこの場所には俺のようなまともな人間はいないらしい。俺はチッと舌打ちし、「両方だよ」と怒鳴った。
「さっさとこっからは出してもらう。勿論その時に俺を拉致した理由も聞く。だからまずは俺をここから解放しろ。白ばっかの部屋って長くいると頭がおかしくなりそうなんだよ。しかも薄気味の悪い奴もいやがるしよ」
「薄気味の悪い奴って、もしかして私ですか?」
くいっと服の袖を引っ張りながらツインテ少女が言う。
肯定するのも否定するのもやばいことになりそうな気がして、俺は無視したまま防護服の返答を待つ。
防護服は俺の袖を引っ張り続ける少女に目をやった後、「ここから出すことはできません」と言った。
「あなたにはここで行われている実験に参加してもらいます。なので、私達が望む結果を得られるまではその場所で、彼女たちと一緒に暮らし続けてください」




