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「少し冷や冷やした場面はあったけど、結局殺されずに済みそうでよかったよ。色々と庇ってもらったようで悪かったね」
一応の手当てが終わった神月が、苦笑いを浮かべながら言った。
俺は周囲に神月以外誰もいないことを確認してから、小さくため息をついた。
「まだ安心はできねえぞ。いつムクロの気が変わるか分かったもんじゃないしな。ただ理由は知らねえが、ムクロの奴は妙に俺には好意的だからな。俺の頼みを無下に破ったりはしないだろうが。さて――」
ムクロをうまく(?)説得することに成功し、ケガの治療が終わるまでは面倒を見ると言って神月と二人きりに。
別段ムクロから離れる必要はなかったのかもしれないが、隣にいるだけでもかなりの緊張感を強いられるのは必須。いざという時には頼りにしたいが、今のように平和的な話し合いを行おうと考えているときには比較的邪魔だった。
そうして二人だけになったところで、俺は神月への尋問を開始したのだった。
「命を救ったって恩義もあるわけだし、今度は面倒がらずに俺の質問に答えてくれるよな。あんたがわざわざここに潜入した目的と、ここから脱出するための手段。死なれる前に茶々っと答えてくれ」
「津山君は怪我人に対しても容赦がないな。とはいえ命を助けてもらったのは事実。俺が知っている範囲でならできるだけ答えよう」
一度言葉を切ると、頭痛がするのか包帯を巻いた頭に手を当てる。それも当然だろう。手当てをしたとは言え、かなりの血が流れていたように見えた。本来なら一刻も早く病院に行って検査を受けないといけないレベルだ。まあそれは俺も似たようなものなのだが。
すでに包帯を取り去った頭を撫でながら、やや自嘲気味に笑う。
と、痛みが過ぎ去ったのか、少し苦しそうな顔ながらも神月は話し始めた。
「何から話したらいいか困るが、まずは俺がここに来た目的から話そうか。私的な用件を含めたうえで、大きな目的は三つ。
すでに言ったことだが、彩智が死ぬ間際に何と言っていたのかを聞くこと。
この実験を終了させるために、施設内にいる人間を全員殺すこと。
万が一俺の持つ『命令』よりも上の力を持つ存在がいたら、そいつの能力を習得したうえで、再度皆殺しを決行すること。
この三つが、俺がここにやってきた理由だ」




