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待ちに待った瞬間。
料理注文から十分が経過すると同時に、鉄の扉が重厚な音と共に開かれた。
誰が料理を運んでくるのかは不明だが、もし職員が運んできたのなら絶好の機会。ここから出してもらえるよう、拳を交えた穏便な交渉が行える。そうでなくとも、脱出に繋がる何かしらの糸口はつかめるはず。
そう信じて、突進するかの如く開いた鉄扉の中に駆け込む。が、すぐさま中の光景を見て希望は打ち砕かれた。
鉄扉の向こうは、人が数人入る程度の小さな部屋。入ってきたのと逆方向にもう一つ鉄扉が存在するほか、料理が載せられたカートがぽつねんと存在するだけ。他には何もない。
要するに、二重扉。料理を置いていった人物は既にここには存在せず、さっさと帰っており出会うことは不可能という事実。
流石にそううまくはいかないらしい。
一瞬でも希望を見出してしまった自分が馬鹿らしく思え、その場にペタリと座り込む。
そんな俺をうつろな目で眺めながら、ムクロが料理を取っていく。
因みにムクロが注文した料理はカレーライス。スパイスの利いた絶妙な香りに刺激され、座り込んだ俺の腹から盛大な音が鳴った。
腹が減っては戦はできぬ。
俺は軽く自分の頬を叩き、気分を入れ替え立ち上がる。
そして、ちゃんと注文通り提供された料理の数々を眺めてから、ムクロのカレーに目を向けた。
「なあ、俺も一口カレーが食いたいんだが、もらってもいいか」
「いいですよ。注文すればいくらでもお替りできますし」




