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俺の言葉が唐突過ぎたからか、ポカンと呆気にとられた様子でドクロ女は固まった。
数秒の間、緊迫した静寂が二人の間を流れる。
そしてふと我に返ったらしいドクロ女は、「ああ、そうなっちゃうのか」と呟くと、ゆっくりその場で立ち上がった。
彼女は気まずそうに頬をかくと、窺うような視線で俺を見つめてきた。
「あのさ、信じてもらえないかもしれないけど、私に変な目的なんてないわよ。あんたが質問してきたから、知っている範囲で答えただけだし」
こちらの機嫌を取ろうとするかのような、ややへりくだった口調。
その態度に少し苛立ちつつ、俺は強い口調で迫った。
「なんでそんだけのことを知ってんのかって俺は言ってんだよ。たった一週間しかこの場所にいないってのに、芥川の過去を含めてどうしてそれだけの情報を持ってるんだ? 普通に考えて、お前がこの実験を進めてるやつらの仲間だって思うのが当たり前じゃねえかよ」
「そう思う気持ちも分かるけど、それは誤解よ。だいたいもし私が研究者側の仲間だっていうんなら、もっとばれないように、少なくともペラペラと知ってることを喋ったりしないはずでしょ」
「だからだよ。どうしてそんなばれるような真似をしたのかを聞いてんだ。この実験の情報を与えて、俺にどういった行動を取らせるつもりだったんだ。素直に吐かねえなら――」
「ちょ、ちょっと待って! 私は本当に――」
俺は拳を振り上げてじりじりとドクロ女に近づく。ドクロ女は怯えた様子で数歩後ろに下がり――次の瞬間、心臓からナイフを生やしていた。




