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頭がずきずきする。あの時はああでもしないと本気で危なかったから仕方ないとはいえ、やりすぎた感はある。このまま脳出血で死亡、とかになったら流石に笑えねぇ。
医者に見せようとまでは思わないが、軽い応急手当はしておきたい。
どこかに救急セットでも落ちてないものかと、ふらふらと部屋の中を歩き回る。
「あんた生きてる? 頭から血たれてるみたいだけど、意識とかある?」
いつの間に近づいてきていたのか、警戒心の強そうなきつい目をした女が話しかけてきた。若干朦朧とする頭の中で、女の姿を観察する。服装はドクロマークがでかでかと描かれた、黒いローブのようなものを着ており、あまりまともなやつには見えない。が、ムクロほどヤバいオーラは感じない。その上、こちらを警戒するような素振りを見せるところなんかは、一般人のそれにかなり近いものに思えた。
総じて、まだまともな部類ではないか、という結論に。
俺は力なく首を横に振ると、その場に座り込んだ。
「生きてるし意識もあるよ。ただすっげえ頭ふらふらする。もう一歩も動きたくないから綺麗なタオルと包帯、持ってきてくれよ。ついでに治療もしてくれ」
「初対面だってのにかなり図々しいわね。でも、まあいいわ。運よくそのどちらも持ってるから手当してあげる。痛くても暴れたりしないでじっと座ってなさいよ」
そう言うと、変な服装の女はローブの中からタオルと包帯、消毒薬を取り出してみせた。
運よく包帯や消毒薬を持ってることなんてあるのか? と頭の中に疑問が生まれる。しかしすぐに、手当てしてもらえるのならまあいいかと疑問を打ち消した。
その変な格好からは想像もできないほどてきぱきとした動きで、ドクロ服の女は手当てを進めていく。数分と待たずに手当てを終えると、ちょっと自慢気な様子で俺を見つめてきた。
「ほら、終わったわよ。大した怪我には見えなかったけど、ここに医者はいないからね。万が一のことを考えてしばらくは安静にしておきなさい」
俺は頭にまかれた包帯を触りながら言う。
「助かったよ。まさか本当に治療してくれるとは思わなかったしな」
女は自慢げに胸をそらしながらも、少し照れ臭いのか頬を赤くした。
「こんな場所に送り込まれる奴なんて、本当は助けたくなかったんだけどね。怪我してる人を放っておくのは、私のプライド的になんかあれだったのよ」




