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「くそっ、こんなとこに閉じ込めるなんてふざけてんじゃねぇぞ!」
俺は苛立ちを込めて目の前の扉を蹴飛ばした。
学校からの帰宅途中、突然俺の目の前に現れた真っ黒なリムジン。中から出てきた黒服の男たちは、呆気に取られて動けないでいる俺をあっという間にリムジンの中に押し込み、車を発進させた。ようやく自分が拉致されかけていることに気づき抵抗しようとしたところ、何やら変な薬品を嗅がされ意識を消失。気づいたら物が何もない、真っ白な立方体の部屋の中に横たわっていた。
自分の身に起こった理不尽過ぎる事態に、ただただ苛立ちが込み上げる。
自分を善人だと思ったことはないが、だからと言って拉致されるような恨みを買った覚えもない。俺はどこにでもいる一般人。そんな人間を拉致するなど一体何を考えているのか。
考えれば考えるほど。怒りがあふれ出してくる。
その衝動に任せ、飽きることなく扉を蹴飛ばし続けていると、根負けしたかのように扉が音もなく開いた。
取り敢えず、真っ先に目についたやつをぶん殴ってやろう。
もちろん俺は一般人。相手が死ぬまで殴ったりはしない。




