9.ジョー・カーペンターの場合
~鍛冶屋 ジョー・カーペンターの場合~
受付嬢さんに教えてもらった道すがら、少し現世の思い出を思い出した。
日本刀(そのときは包丁だったけど)製作工房へ、つまり刀鍛冶屋さんに見学に行った時の事だ。
小説やゲームではあっさり作ってるけど、あれすんげえ大変なのよなー。
まずは火を起こして、鉱石の精錬から始める。
その工程を繰り返して鉱石の純度を高めて、そこから初めて鍛冶作業になる。
熱い(こっちの字の方が正しいと思う)わ、腕キツイわ、バンバン破片飛ぶわ。
火傷はデフォだしなー。
そう考えると、鍛冶屋=ドワーフってのも判る気がするなー。
あんな頑丈な体でないと、鍛冶屋なんぞ出来ないとしみじみ思ったね。
(あ、あいつは違うぞ、あいつはドワーフなんかじゃねぇえええええ)
店はすぐ判った、看板が出てたからな。
確かに字は読めん、けどな、
金床にハンマー振りかざしてるドワーフの絵が描いてありゃ、だれも鍛冶屋以外には思わんと思うんだが。
店にはいると、当たり前だがたくさんの武器・防具。
実物見ると、改めて色々あるもんだと感心する。
ゲームとかだと、これネタ装備?とか思う装備も一杯ある。
だけど、この世界へ来たときにその考えは間違ってると気づいた。
この日記で何回か書いてるけど、
生き残る=一番重要
な訳で、当然使いやすいものが一番になるんだな。
年齢・性別から体型・種族・体格・得意技能に向き不向き、
それらを考慮すると、種類が一杯あるってのは当たり前だわな。
例えば、”通称剣”ってだけでも
ロングソード、ショートソード、ブロードソード、ツーハンデッドソード、グレートソード、シミター、ククリ、鉈、偃月刀、カッツバルケル、レイピア、エストック・・・・
キリがねぇ。
余談だが、この世界で剣について学んだ事をもう一つ。
鋭い刃物(例えば日本刀、この世界ではまだ見たことない)と通常の剣(いわゆる西洋の剣、ゲームであるやつ)の違いな。
オレはシロウトだけど、シロウトでもハッキリ判ることがあるのよ。
それは重心の位置なんだな。
何?とかイウナ、結構大変な問題なんだよ!
日本刀とかレイピアとかの切れ味優先の刃物の場合は、剣の前の部分、極端に言えば切っ先で斬ることになる。
そのため、切っ先の速さを上げるには先端は重くできない=手元重心になる。
少し考えてくれれば判る。
棒状のものを振り回す時、早く振り回したいなら軽い方がいい。
なー、ガキの頃さ掃除でホウキ振り回したでしょ?
ホウキの部分を先にするか、逆に持って竹の柄を先にするか。
どっちが速いかは、今更説明もいらんでしょ。
釣り竿なんかも、当然そう。
先が細いから、なんてのは当たり前。
プロ(漁師)が使うのは先は細くなかったりする(例、カツヲの一本釣りの竿)
ところが、こっちの世界(現世でも西洋かな)は違う。
前にも書いたけど、切るよりかは絶つ。
つまり通常の剣は、その重さを叩きつけその重さをもって切る。
だから、切れ味よりも重さや頑丈さが重視されるんだな。
野球でゆうところのバットだわな、もしくはゴルフクラブ。
重さでダメージをあたえる分、先端の方へ重心がいく。
専門家の方には基本だ!!って言われるかもしれんけどさ、オレもこんな世界にこなきゃ知らなかったことだしねー。
これも生活の知恵・・・・、ちと違う気もするが、まぁいい。
色々見て廻ってると、背後から声が掛かった。
振り返ると、そこは金髪のスラリとした、まぁ鉄板中の鉄板、エルフ(♂)だった。
「いらっしゃいませお客様、僕の店へようこそ。
すべて僕が自作したものですから、品質には絶対の自信がありますよ。
どのような物をお探しですか?」
うん、なんか不穏な発言が聞こえた気がする・・・・僕の自作??
「あぁすいません、この店のオーナー件、鍛冶屋のジョー・カーペンターです、ご贔屓に」
なんで、鍛冶屋が大工やねん!!!!
しかも、エルフの鍛冶屋??
「なにかご不信な点でも?エルフは自然物との親和性が高く、鍛冶屋には最適なんですよ」
あの看板は、なんだよ!!
どこにドワーフがいるんだよ!!
い、いえ、まぁ、トー●キンさんの設定が現実とは限らないけど・・・、んん?まてよ?
あのクソドワ・・・ジムさんの義兄弟って言ってなかったっけ?
「あぁジムですか!大事な兄弟ですよ!」
なんだそれ、生物学的に謎ばかりなんだが・・・?
「勿論、義兄弟なんですがね、生まれた日は違えど死ぬ時は一緒って、それですよ」
いや、あんたエルフならあんたの方が長生きでしょーが。
「この町は種族関係なく、みんな幸せに暮らせる町なんですよ。
国全体がそうですが、特にこの町はね。
だから、他の場所よりも人間以外の種族が多く住んでいるんですよ。
でも種族なんて大した違いはありませんよ、みんな素晴らしい仲間なんですから」
おぉぅ、エルフはプライド高く排他的って聞いてたのに、凄げえな。
現世でも見習わなきゃな、いあ本当に。
「ジムも、傭兵と鍛冶屋の関係からすぐ友人になったんですが、とある出来事から兄弟になったんですよ、懐かしいなぁ」
あのクソドワーフとかよ、博愛なのかなぁこのジョーさんは。
「あの日、ジムと飲みに行きましてね、大いに盛り上がってヘブンにいったんですよ、二人して。
お客様、ヘブンはご存じですか?」
・・・まて、なんか話の方向ちがくね?
「いざって時、二人とも指名したのはライカンスロープのナーナちゃんだったんですよ。
ふたりとも常連だったらしく、そのまま意気投合しまして・・・・」
その兄弟かよ!!!!
一瞬感動したオレが馬鹿じゃねぇか!!!!
この町には、こんなのしかいねーのかよ!!!!