8.現実の場合
~現実の場合~
残り300!
先頭は依然としてメグロパーマー、ここでビミハヤヒデに変わった!
そして外から赤い帽子、トウカイダイオーも来ている!
残り200!坂を駆け上がる!
外からトウカイダイオー、トウカイダイオーがきた!!
ダービー馬の意地を見せるか!
しかし、ウチからビミハヤヒデがくいしばる!!!譲らない!!
残り100!先頭はトウカイダイオー、かわしたかわした!トウカイダイオーだ!!
トウカイダイオー1着!!!
奇跡の復活!!!!
勝ったのはトウカイダイオー!!!
なんと1年ぶりの草津記念で、見事な復活劇!!!
んが!!!!
ハズした~~~~っ
年越しの正月のモチ代がぁ~
キャバクラメロウの麻衣ちゃんへ会いに行く資金がぁ・・・・
ん?キャバクラ??
て、夢かよ・・・。
生々しい夢、つうかこれ記憶だわな。
あのあと、騎手タバタへの”タバタコール”があって・・・
この世界にも競馬ってあるのかな・・・
あったら気晴らしにはいいかもしれないかも。
歩きながら、今朝見た夢・・いや過去の記憶について考え込む。
これ、間違いなく記憶だわ、夢じゃない。
店を出て、ギルドを目指して歩く。
改めて周りをみると、この町は戦乱の最中にもかかわらず、くたびれた様子がない。
昨日も思ったが、人々も生き生きとし、町全体に活気がある。
浮浪者や、行き倒れみたいな人間もあまり見ない。
それと人間以外の人種も多く、ごく普通に混ざりあって生活している。
オレが支援者に助けられた場所は、人間ばかりだったんで新鮮だな~と独りごちる。
前世も、種族や宗教へのこだわりをなくせれば、こんな町になれるのかな~
なんと言うか、失ってから気づく、いや、届かないから判る?
夢のせいか、なにか切なくなってきたのは気のせいだと思うことにする。
と、気づいた。
ここは昨日追い出された宿屋の前だった。
おっと、表で水を巻いてるのは給仕の女の人だ。
迷惑をかけたことだし(あのクソドワーフがな!)、挨拶だけでもしておこう。
「あらこんにちは、その様子だとお部屋は見つかったみたいですね。
よかったよかった。
いい人なんだけど、短気なのがねぇ・・」
いや~ナゴむわ、ぽやぽやした感じで話すみ包容力を感じさせる人だなー
「やだ、ごめんなさいねぇ、まだこの町にいるなら今度こそ泊まってってくださいね」
と、そこへ親父が現れた。
日光の下でみると、このおっさんすげえ。
人間、だと思う、うん・・・・
スキンヘッドにあのクソドワよりごつい腕、鋭い眼光。
宿屋のオヤジには到底みえねぇ、つうか現役傭兵泣かすって、アンタ何者やねん!!!
と、心でツッコムにとどめる(命は惜しい)
ともかく機先を制して、速攻でワビを入れる、勿論90度でだ!!!
じゃぱにーずサラリーマン(1年生)の必須スキルの見せ場だ!!
「そうですよ~、まだ若い子なのに、イジメたらだめですよ~」
「あ、い、いや、ボウズ、昨日はこっちも悪かったな、こりずに今度は泊まってってくれや、な、な。そ、そうだ、今度は特定食にしてやるし、おし!エールの一杯もつけてやる!な、どうだ、な?」
親父は噛み噛み噛みだ!
おにぎりは悟った、親父の弱点はこの給仕の人だ!
親父は拳を握った!
しかし、手が震えて狙いが定まらない
おにぎりは、ニヤリとほくそ笑んだ!
親父は汗をかいている
まぁ、特段ウラミがある訳でもないので、れっどさんの調査の結果次第(勿論本当の事だし、昨日も聞いている)で、今日は泊まりますと言って別れた。
い、いや、カレー教には関わりたくないのも、正直あるんだけどな。
さて、脱線ばかりだった昨日、今日こそは前に進めないとなー
こうして、おれはギルドの入口をくぐった。
ギルドの中は、さながら戦場のようだった。
ハンター(冒険者)やら商人やら、人でごった返している。
そら当たり前か、今は朝早くから仕事の受領、依頼から馬車の手配等熱気ムンムン。
早い者勝ちだしな~、とぼーっと考える。
やっぱり、オレは甘いなと認識する。
現世、決して景気いいとは言えなかったけどここまでではないしな~
余程の問題を抱えているならともかく、バイト位の求人は少なくともあった。
やる気さえあれば、働く先はある。
つまりは、食えないことはないんだな。
何より現世は
死ぬ危険がない
これに尽きる。
そう考えると宿屋の親父も、無事なうちに荒事から引退したのかって合点もいくなー。
ここは小説でもゲームでもない。
現世のぬるま湯でもない。
一歩間違うと、死ぬ。
ハンターの依頼取り合いも、生きるために安全且つ儲けのいいものを誰しも欲しがる。
当たり前だわな。
オレは現世に戻りたい。
しかし、それは甘えなのかもしれない。
独りごちていると2時間近く経過した。
そうやら休憩になったらしく、昨日いた受付嬢さん(ケットシーの方)が待合室の椅子に腰かけた。
お礼がてら、挨拶と情報収集にいってこよう、実はそれが目的だったんだけど皆の熱気にあてられて、ひるんでいたんだよな~。
まぁ、邪魔しちゃ悪いかなってのもあったけど。
本当だぞ、おにぎりは空気の読める人なんだ。
たとえ1年生とはいえ。サラリーマンだしな。
「こんにちは、カシミールさんのお宿は如何でした?」
まずはお礼を言った、当然だ!
オレはそのあたりは常識人なんだ!
じいちゃんがナニワの出身でツッコミのスキルはあるけど、あくまで一般ぴーぽーなんだぁ!!!
って、力説しなきゃならんあたり、現世も大したことない世界かもしれんね・・。
閑話休題
確かに久々のカレーは旨かった。
部屋も悪くなかった。
なのでそう答えた。
「それは良かったです、まだ新規開店したばかりだったので少し不安だったんですよ」
不安で正解だよ!!!
カレー教とかカレー教とかカレー教とか!!!!
「それで今日は?あぁ、れっどさんの件ですね?」
すかさず、用意しておいた飲み物(果物ジュースらしい、飲んでないから味は知らない)を差し出した。
「あ、ありがとうございます。
お役に立てることがあれば、すぐにでもお声をかけてくださいね」
名前はともかく、爽やかな笑顔と対応、そしてさっき見てた仕事っぷり。
この町で初めて清々しい気持ちになったと言っても差し支えはあるか?いやないだろう!(反語)
まぁ、ジュースの代わりといってはアレだけど色々教えてもらった。
・ケットシー種族は、猫と人間の両方の特徴を持つ種族である。
・実はケイトさんの猫耳は付け耳で、人間と同じ様な耳がある。
・手足には人間の様な爪はなく小さな穴があり、そこから爪を出し入れできる。
・舌はザラザラ(未確認)
・・etc
色々尋ねたけど、失礼は無かったのだろうか?
「この国は、まだ若い国ですから。
建国の際に様々な種族が平等に暮らせる国を!って作られた国なんですよ。
当然文化も種族も異なりますから、タブーも判りませんよね。
だから、質問をすることはかえって前向きなコトなんですよ。
勿論、何がタブーなのか知っていて、尋ねるのはそれこそタブーなんですけどね」
といって彼女は微笑んだ、眩しい。
「この国の名前がまさに物語ってますよ?」
しまった!!国名なんだったっけ?確かフザけた名前だったはず・・・。
「キングダム共和国、ですよ」
おーそうそうって、なんでやねん!!!王国の共和国ってぇのは!!!!
「共和国制度を提案したのはキングダムの王様、デューク・サーライエー13世です。」
讃美歌をリクエストするべきか、健康のために歩くべきか悩むところだ、それ。
「陛下の慧眼に敬意を表し、キングダムの名前は残してこの名前になったんですね」
今更この世界のネーミングについてはもうツッコまないけど、ちゃんと理由があるものにはあるんだな。
段取りチキンも、まぁ確かに段取りはいるからな。
”狂える波濤”はさすがに理解できないけど。
「あ、ごめんなさい、れっどさんのお話でしたね。
申し訳ないですけど、昨日のジムさんの義理の弟さんが鍛冶屋さんなので、その方を訪ねる位しか思いつきません、ごめんなさい」
いえいえ、とんでもない!!
って、あのクソドワーフも、そんなこといってたな~
そういや、あいつは65536ポイントのダメージ受けてからはどうなったんだろう?
「大丈夫ですよ、ほらそこ」
そこには、真っ白になったクソドワーフが転がっていた。
誰も気にしてないところをみると、こんな事態は頻繁にあるらしい。
あ、掃除のおばちゃんがモップでつついて転がし始めた。
あぁ、邪魔だからどかせたのか。
すげえ、つつく方もつつく方だが、おっさんもピクリともしやがらねぇ。
「大丈夫ですよ、ああ見えてもジムさんは凄腕の傭兵なんですから。だって、数多くの戦に出て、腕どころか指1本さえ失わず、いまだに元気なんですから。
それこそジムさんの腕の証ですよ」
そうだった、れっどもそうだしクソドワーフもそう、歴戦の傭兵なんだよな~
オレみたいな甘ちゃんではないんだよ。
「おにぎりさん、そう深刻な顔にならないでください。
人間でもどんな種族でも、できないことは色々ありますから。
だからできることから一つずつやっていきましょう」
あかん、惚れてまうやろ~~~~~~~~~
おかげで気分も高揚し、クソドワーフの義理の兄弟の店に向かうことにしたんだよ。
な、ここまではよかったんだけどな、ここまでは。
人生、甘くはねぇーなー。




