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7.カシミール・チャツネの場合

~カシミール・チャツネの場合~



「今日のとこは仕方ないですから、別の宿屋を紹介しますよ」


そうなんだ、それが本来の目的なんだよ。

このサービスが目的でギルドに戻ってきたんだよ。

でなきゃ、オレはたった三日で、死亡後の隠密同心になる自信がある。

消して、クソドワの悪行を告げ口しにきた訳ではない。

ないったらない。


「まだ開店したての宿屋なので、サービスでゴハンついてますから一緒にどうぞ。

このあたりでは初めての料理らしいですよ。

今なら、簡単ですけど紹介状付けますから割引効きますよ」


受付さんに心からのお礼を言い、早速宿屋へ向かった。

ふと振り返ると、65536ポイントのダメージを受けたクソドワーフは、カウンター前でぶっ倒れてた。

オレの知ったことか。

そんな事より、今日のねぐらだ!

もう、色々ありすぎて真剣に眠りたいんだよ!

勿論、簡単な紹介状を貰っておいた。

オレは、人の好意は素直に受けるタイプなのだ。

あさましいなどと言うんじゃねぇ!!

生きてくのは大変なんだよ、いやホントにな。


地図を片手に5分ほど歩くと、あっさり見つかった、と思う。

だって、店の看板読めねーし。

前にも書いたが、字が読めん。

だから、地図が見れないのだYO!!

まぁ、そうもいってられんから、ちょくちょく勉強(イヤな言葉だ)してるんだけどなー。

あぁ、ホント、小説やゲームの様にご都合主義ってのはねーのかよ・・・。

と、思い出した、一つだけあるわ。

それは言語、なんだな。

何故か、公用語が日本語なんだよな~

なのに文字は全くの謎、サッパリ判らん。

ひょっとしたら、実は言語も日本語ではなくこの世界の独自言語かもしれない。

魔法的な何かが働いてて、日本語の様に聞こえるのかもしれん。

現状、確認する方法はないんだけどなー。

まぁ、いいや、悩むのは夏休み最後の三日間でいいか。


店の看板(読めねぇ)には、カシミールと書いてあるハズ。

これがセバスチャンとかだったらチョー受ける~とか馬鹿な事を思いつつ、中に入った。

もう、現実逃避しかかってんだよぉ。

とにかく、1部屋頼んでみると幸運にも最後の一つが残っていた。

ほっと落ち着くと、紹介状を思い出した。

そういや、ゴハン付いてるって言ってたなー。

おし、もう一度夕食を食うか。

せめて、晩飯くらいはゆっくり食いたんじゃん、人として。

ともかくクソドワーフのせいで用心深くなったおれは、

紹介状をつかいつつ、宿代は先払いで払った。


酒場スペースは、まだまだ綺麗だった。

新規開店だって言ってたしな。

清潔感あふれる店内に気を良くして、店主のオススメを注文。

カシミールならカレーなんだけどな~と、前世のことをぼんやり考えてると、料理がきた。


どどん!!

カレーじゃねぇか!!!!!!

残念ながらカレーライスではなく、カレーシチューとパンだった。

そういや、こっちきて米はまだ見たことが無い。

おにぎりの名前の通り、米食いたいなぁ。

いや、それはさておき、何故カレーなのか!?

亭主をフン捕まえ(あ、こいつもドワーフ、いやいや、偏見はよくない)

詳しく話を聞いてみた。


亭主の名前はカシミール・チャツネ。

なんだ、そのインド人もビックリな名前は!!!


ただ、ここで恐るべき情報を一つ入手できたんだよ、いやマジで。


カシミールのおっさんの創作料理、ではなく人から教えてもらったのがこの料理カレーなんだと。

それを教えた人物こそ、れっど、その人なんだそうだ。


ここまで書かなかったけど、一つハッキリとした。

れっどは日本人、もしくは日本を異様に知ってる人間でほぼ間違いないと思う。

らっきょが出てきた瞬間、やり場のない怒りが込み上げてきたのは内緒なんだがな。

チャツネじゃねーのかよ!


「お客さん、カレーは旨いでしょう」


いや、旨いよ、こちとら国民食だしな。


「このカレーの素晴らしさを伝えて、且つれっどさんの功績を称える。

その意味も込めて、わしは今活動を始めたんだ」


このドワーフもなんか少し、いや、かなりおかしいぞ・・・?

特に目つきがががが。

ともかく、好きにしてくれや、先に言っておくが巻き込むな、こっちを見るな!!


しかし、オレの様子もガン無視でおっさんは熱く語り続けやがった。


「そしてこれを教えとして、カレー教を設立したのだァ!」



もうやだよ、訳わかんねぇよ・・・

れっどを奉るのはいいとしても、カレーなんだよ!

カレー教なんだよ!!


おっさんの恍惚とした語りは右耳から左耳へ軽くスルーパスし、

ひたすらカレーを満喫する。

カレーそのものは旨かった。

が、なんか悔しい、負けた感がある。

ともかく食べ終わると

「ご馳走様、寝る」

半眼のまま席を立ち上がったオレに、カシミールのおっさんはこう言い放った。


「兄弟!カレーは飲み物だぜ!!!」


サムズアップしながら、凄くいい笑顔だった。


この店、長くはもたねーかもな・・



朝は意外と早く目が覚めた。

昨日のドタバタで疲れて果ててたのもあるが、ぐっすりと眠れた。

カシミールのおっさんの宿屋、料理以外はマトモだった。

あくまで、料理以外は、である、うむ。


手早く荷物を纏め、1階へ降りる。

朝飯を食ったら、そのまま出発の予定だ。

店に流れてる”世の中をターメリック色に染めよう!”との呪文には一切耳は入れない。

入れないったら入れない。


席に着くと、カシミールのおっさんが、すぐ料理を持ってきた。

どうやらモーニングセットらしい。


なんか、平べったいパンつうかピザみたいなやつと、香辛料で真っ赤に色づいた肉の塊。

・・・あーもーツッコまないからな、体力のムダだ。

パン(みたいなの)を齧る、予想にたがわず前世の記憶と同じ味だ。

続いて肉、あ、これ鶏肉だ、間違いないわ。


「お客人、当店の自慢のモーニングはいかがですか?

これもれっどさんに教わった、秘伝の鳥肉料理なんですよ」


早速、カシミールのおっさんが給仕の名を借りた勧誘にきた。

あ、鳥料理の味で確信に至ったが、でもツッコミはせんからな、絶対に!!


「これぞ、秘伝”段取りチキン”ですぜ!」


そこまでいくなら、タンドリーチキンでもいいじゃねえか!!!!!


添えられてたドリンク(ラッシーのようなもの)が、以外とソックリで美味しかったことは記しておく。


最後に、店を出る瞬間に、カシミールのおっさんはまたサムズアップしてきやがったが全開で無視してやった。


以上。



後記付けたし

カレーと段取りチキンの店カシミール

おススメ度:★★★☆☆

いわずと知れた、カレー教の聖地。

1日3回カレーを食すことで、カレー教の位階が上昇すると言われている。

これは3カレーの教えとされ、カレー教において基本かつ重要な教えであるとのことだ。

尚、常人はカレーの暗黒面に捕らわれないよう、注意が必要である。



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