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6.ギルドの場合

~ギルドの場合~



吾輩はおにぎりである、海苔はまだない。



宿を追い出されたオレは、とぼとぼと夕暮れの道を歩いていた。

いや、正確にはいまだに酔っ払いクソドワーフと喧嘩をしながら、だ。

「おっさんどーしてくれんだよ!寝るとこが無くなったじゃねぇか!」

「オマエこそ、ワシの晩酌を台無しにしおって!」

「テメエ、ロハで飲もうとしたヤツのセリフか!」

「ガキは老人を労われ!!」

「ドワーフが老人扱い希望すんな!!」

「オマエ、異種族差別するのか!?この町ではご法度だぞ!」

「それ以前に、旅のガキからたかるのは犯罪じゃねーのかよ!」

「甘い顔をしてりゃ、付けあがりおって!」

「それこそ、現役の傭兵がガキにたかるんじゃねぇ!」


不毛だ。

なんで、こんな色気の欠片もない言い争いしなきゃならねーんだよ。

しかも道を歩きながらだぞ、色気どころか恰好悪いにも程がある。

くっそー、ドワーフ許すまじ!!!!


でも、そうぐちぐちとも言ってられんのだよ。

この町は結構暖かい(初夏くらいかな?)とはいえ、オレは現世では只のサラリーマン1年生。

野宿なんてのは、ハードルが高すぎる。

体力は勿論のこと、不用心極まりない。

え?だからさー

現世のEASYモードで生きてきたオレがさー

この世界、ひたすらハードモードの世界で野宿なんか出来るかってーの。

武道の心得は当然ないし、何処で夜を明かせるのか知識もありゃしない。

あっさり野宿が出来る位なら、現世に戻りたいなんて思うはずも・・・・いや、あるかな・・?

特にエロ関係は・・・いや、ローズさんのパターンも・・・・・・げふんげふん。

ぽまいらな、アウトドアとか簡単に良く言うじゃん?

アウトドアってのは、単に屋外で行動するだけだ。

メシ食うにしても調理器具持っていったり、寝るのもテントとか用意すんだろ?

違うんだよ、大きく違う。

オレがやってきた(又しなきゃならん可能性が大だけど)のはな、

サバイバル、だ。

水や食料を手に入れるとこから初めて、

手に入れたとしても、火を起こして

食材に火を通す。

最初に書いた通り、衛生面が信用できない以上火を通すのは必要不可欠なんだ。

大体、医療技術のレベルも判んねーのによ。

大事なことだからもう一同言う。

アウトドアなんて甘えたもんではなく、サバイバルなんだYO!


不毛な言い合いもそこそこ、つらつらと馬鹿な事を考えながら向かった先は

ギルド、俗に言う冒険者ギルドってやつだ。

よくある冒険者ギルド、なんだテンプレかー。

いや実はオレも最初の頃、ギルドの存在を聞いてそう思った。

が、当たり前といえば当たり前なんだな、ギルドの存在ってのは。


現世みたいにサラリーマンなんぞ当然無い訳で、

それこそお約束のハンター(冒険者)から、日雇い、お使い、護衛等

ありとあらゆる仕事、需要と供給がある。

ま、システム化されてはいるが現世でも同じだわなー。

そう考えると便利だぜ?現世は。

食料はスーパーいけば、大概のものは売ってるし、

ネットでお取り寄せもある。

食品以外では、大河さんの通販利用すれば家まで持ってきてくれるしな。


しかし、この世界はそんなものは当然無い。

なのでこれらの役割を全部こなしているのが、ここギルドになる訳なんだな。

主な業務をあげてみると・・・

 ・仕事の斡旋つまり周旋屋(討伐や護衛等みんなが知ってるクエストになる部分だな)

 ・料金の受け取り、支払い

 ・税金の回収(これは業務料金から天引きだそうだ)

 ・依頼品の保管、管理

 ・情報の取り扱い(無償・有償双方あり)

などなど・・・


そういったギルドの機能こそが、町の経済の中心ともいえる。

だから、ギルドが町の経済を司ってるといっても過言ではないんだな、マジに。

実際、こうゆう組織が存在しないと、町の機能はぐちゃぐちゃに麻痺する。

それは現世でも同じこと、現世日本では役所がこれに近いん機能を持つ。

持つんだが、役所自体がまともな仕事をしないから無茶苦茶になるんだなー。

仕組みを考える人間の知恵は素晴らしいが、携わる人間の民度が大切なのはどこも同じかー。

因みに、ギルド職員になれるのは優秀の証みたいだそうで、高給取りでもある。

ギルド自身も非常に影響力が強く、国でも頭ごなしに指示を飛ばしたりは出来ないんだと。


かくゆうオレも、これまでよく利用している。

え?剣なんかの武器を使えるのかって?

ハンター稼業?厨二じゃんって?

あのなー、だからなー

何回も言うけどなー、武道の心得なんでねーんだよ、

使える訳がねーだろーが!!

第一、ハンターなんぞ怖くて出来るか!!

獣相手に戦うんだぞ?

場合によっては、人間相手(強盗や盗賊)だぞ?

学生に始まり、リーマン生活に至るまで

人の殺し方なんか、習った事ある訳が無いだろーが。

仮に技量があっても、実行できるメンタルなんか持ち合わせちゃいねーよ、ホント・・・。


その技量もだけどな、それもでっかい壁があんだよ。

マジメに考えてみろ、現世でも大変なんだぞ。

スーパーや肉屋の肉、最近は既にカットしてあるものばかりだろ。

大きな肉の塊を切った経験のあるヤツ、なかなかいないと思う

わざわざ、料理をしやすい様にカットまでしてあるのが現世。

この世界、そんな肉なんてあるはずもない。

そうすると肉は自分でカットしなきゃならない。

そこで、いやそこなんだよ。

この世界、日本刀や包丁みたいな切れ味のいい片刃の刃物は少なく、すべて両刀。

料理に使うのも、ナイフほぼ一択。

薄いものや柔らかいものはいいけど、大きなものや肉とかは切るではなく絶つ。

宿屋の親父の肉切り包丁、包丁とは名ばかりでは重量を利用しての圧し切りなんだな。

戦闘でも同じ。

この世界の剣と言うか刃物全体は、あーそれこそお約束な西洋風の武器ばかりだ。

ロングソードとかハンドアックスとか。

これらはほぼ全て、切るのではなく武器そのものの重量で撲殺に近い使いかたをする。

なので、重量が重いのはデフォとして、インパクトの瞬間に手首をしっかり固定しないと手首がいかれるんだよ!

あぁ、そうだよ!!こっちきてすぐ挑戦して手首思いっ切り痛めたんだよ!!


あ~えへん。

力一杯話が逸れてしまった、すまねー。

オレが利用するってのは、情報屋の機能の方だ。

今朝も早速利用したところだ。

実は最初の宿屋も、ここのギルドで紹介してもらったんだよなー(無償)。

それがさ、もう一つの有償の情報がなー。

そうだよ、それがくそドワーフだったんだよ!!

この有様だよ!!

新しい宿の紹介もさりながら、文句の一つでも言いたくなるってもんだよ。

この酔っ払いクソドワーフのせいで!!

この酔っ払いクソドワーフのせいで!!

ムカついたから、2回言いました。

現世のクレーム、舐めんなよ!


「聞いてくださいよ受付さん、あの酔っ払いクソドワーフがー」


と現在、カウンターで絶賛泣き言なう。

恰好悪い?

そんなもん気にしてられるか!!

現代人の若もんは、ヘタレなんだぞ!!!

野宿する位なら、見栄もプライドもあるか!!


あ、受付さん(20代半ば、結構かわいらしい猫耳の人。

ケットシーって種族らしいが詳しくはシラネ)

の視線が痛くなってきたんで、かくかくしかじかと説明する。

ちなみに、問題のクソドワーフは真横に居たりする。

まぁ、ギルドの特性上、ヤツもここへ来るしかねえんだろうけど。


「お話はわかりました。

でもおにぎりさん、よくそれで済みましたねぇ~。

あそこの親父さんって、”狂える波濤”って言われて恐れられてるんですよ」


なんだ、その古き神々が降臨しそうな二つ名は、訳わかんねえよ。

大体この町の周辺には海どころか、川も湖もねえし。

何が波濤なんだよ。


「それに引き換え、ジムさん!!!

あなたは何回、こんなことを繰り返せば!!」

「い、いや、待て、待ってくれ・・・」

「待ちません!」


受付嬢の攻撃

 受付嬢は追い打ち!

 ジムは防御する

 しかし、受付嬢は防御を無効化!

 ジムは65536ポイントのダメージを受けた。

 受付嬢は勝った!


フ、悪(?)は滅びるのだ。

思い知ったか!現世のクレームを!!!


でもなんか、他にも一杯やらかしてるみたいだな、このおっさんは・・・。


「酒場の方への支払いは、ギルドの方から行います!

ジムさん、報奨金から天引きですからね!!」


うぉぉ、怖い、怖いわ・・・・。



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