2.ジム・スミスの場合 その2
~ドワーフ ジム・スミスの場合 その2~
「おう!お代わり!!」
このおっさん、人が追憶に浸ってる間にまた酒のお代わり注文しやがった!
ととと、最初の日記だってことでオレの境遇については書いたが、今回は少しはこの世界のことも書いておこう。
ファンタジーの世界だ、以上。
うるせー、メンドくせーんだYO!
大体、どの国とか大陸がナニとか、覚えてるワケねーだろ!!現代人舐めんなよ!!!
この町つか、この店の名前も覚えてねーのに。
そーいや聞いたかな?ま、どーでもいいや、どうせ覚えとらんだろうし。
まぁ、言い訳するとだな、当然この世界にも地図や書物等はある。
高価なモンらしく、おいそれとは入手できない、ってのもあるが、なにより
この世界の字が読めねぇ
文字も1種類とは限らんしな。
ファンタジーの定番世界なら、複数あっても当然・・・・つか、現世でも複数あるんだしな。
従って、それらこの世界の説明なんぞ、一回聞いても覚えられるハズもない。
(リアルでもそうやろ?旅行いって、行先の内容をガイドブック一読だけで覚える。
そんなヤツなんぞ見たことあるか?)
それらを補完する字が読めない以上、覚えてるハズもない。
看板も読めんしな。
まぁ酒場だから、パンとエールの絵がか描いてあったんで判ったけど。
と文句は山ほどあるが、記録としてつけ始めたからにゃ、保存される可能性もある。
ひょっとしたらオレの後にも、この世界に来る不幸なヤツが読む可能性もある。
先達として、記録くらいは残しておいてもバチはあたらん。
多分な。
だから、判ることから書いていくことにする。
さて、この世界はファンタジーの大家、トー●キンさんの作品の世界に近いわ、あの陰気なヤツな。
缶ジュースの名前が主人公のやつ、あれだあれ。
前回も書いたが亜人間がいて、魔法がある。
設定はほぼそのまま、のような気がする。
多分。
きっと。
そうだといいなー。
とりあえず、オレが見た範囲では人間は勿論、ドワーフ、エルフ、ホビット。
ドワーフは大酒呑み。(現に目の前でかっくらってやがる)
エルフは美形だが乳小せぇし、あ、ホビットは以外と可愛い、こう愛玩動物チックな感じでね。
モフモフしたいですね、アニキ~うぇへへへへへ。
ホビットでモフカフェやったら流行るんじゃ・・・・いやいや、げふんげふん。
他の種族も住んでるみたいだけど、見たことねー。
とまぁ、都度都度書いてくことにする。
そうしないと、キリがなさそうだしな。
んで続きをと、おっさんに話をするように促す。
酒代の元は取ってやるからな!!
「あやつはな、最初みたときから変わったヤツだと思っておった。
外観からも見たことない剣と鎧、なにより目の色と髪の毛のが真っ黒よ。
黒い色ってのはここらじゃ珍しくてな、印象に残っとるわい」
ほー、ならば東洋系かも・・・・
「お、オマエもそうか、黒いな、真っ黒じゃねぇか、同類かもな、うははははは。
何、見たことない剣?わしは戦斧一本じゃ、それこそ見たことない剣のことなんぞ知るかい!!」
真っ黒ってなんだよ!漆黒とかカッコよく言えよ!
いや、剣についても確かにそうだけどさー、なんか他に言い様ってもんが・・・・
「さぁ、呑ませろ!!あいつと同じようにワシに酒奢るんじゃ、そうそう、酒を奢るヤツは悪人ではなさそうだ!お代わり!!!」
この酔っぱら・・・あ、真面目なツラになったぞ?
「一番変わっとるのは、戦い方そのものだな。
誰も真似はせんし、出来るもんではないがな。」
なんと、チートか何かなのか?
「本来戦ってのは集団でやるもんだろ?しかしあやつは気づくと味方の陣から居なくなっとる。
逃げたわけではなく、ワシらに気づかせず敵陣にたった一人、
たった一人であっとゆう間に切り込んどるのよ」
バケモンじゃねーかYO!
「敵陣に悲鳴と血飛沫があがり、混乱し総崩れになるころ、あやつは一人戻ってきおる。
それこそ、全身返り血で真っ赤に染めてな。
音もなく敵陣に行き、殺して血を浴び、音もなく戻る。
ダレが名付けたかは知らんが、だから”赤影”なのよ」
殺人鬼かよ!!
ちなみに、赤影と字では当てたが”レッドシャドウ”と呼ぶそうだ。
おっさん曰くは、当人自身がこの呼ばれ方を酷く嫌がってて
「おれはチュウニじゃね~~~~」
と謎(?)の言葉を発してたんだと。
チートで、バケモンで、殺人鬼!? 凄え、リアルに凄え怖えよ。
「あとはワシとエールの飲み比べやってて、ウエィトレスのリリーちゃん(仮名)の胸にブチ捲けて、一晩中店の外の木に縛り付けられて泣いておったの、うははははは」
馬鹿じゃねーの!!
「こうリリーちゃんはな、褐色の肌のをしたムチムチのボンキュッボンでな。
ダークエルフの血が入ってるらしく、こう、蕩けるような流し目がタマランのよ」
・・・おい、ドワーフってダークエルフと仲良かったのかよ・・・、しかもボンキュッボンってなんだよ、異世界にそんな言葉あんのかよ・・・。
「今か?さて、どうしとるんかの?リリーちゃんのケツ追いかけてたのが5年程前だったかの?戦場でも見てはおらんしな。」
ダメだ、このおっさん、全く役にたたねー。
トー●キンのおっさん、ドワーフについてもっとマシな設定はなかったのかよ!
呑み代払い損じゃねーかよ・・・・
「ワシの話せるのはこれくらいかの。
おぉそうじゃ!わしの義兄弟が鍛冶屋をやっとるから、装備について聞けば何かわかるかもな。
なんせあやつは特種な装備だったし。
一度義兄弟の店に連れて行った事があるんで、何やら覚えとるかもしれん。
まぁワシは鍛冶は門外漢なんでな、ぐはははは」
テメエ、スミス一族名乗るくせに鍛冶ができねーのかよ!!!!
スミスの名前返上しやがれ!!!!!!
とりあえず、その鍛冶屋の場所を聞き出す。
この酒場の近くだった。
後で行こう、このおっさんにはもう期待はせん。
「そうそう、ここの町の北のはずれにヤツが通っていた店がある。
ん?いやリリーちゃん(仮名)のとこではないぞ。
ええ店だ、この町の名物だしな。
店の名前は”ヘブン”だ、一回尋ねてみるとええ、オマエも若いしな。
うははは、お代わり!!!」
おい!もう奢らねーぞぉ!!!ここからはテメーで払いやがれ!!!!!
ヘブン、ねぇ・・・なんか、その、あれだあれ。
ま、いけば判るか・・。
あ~、えへん今回初の聞き取り調査にて判明したこと。
・チート(?)
・殺人鬼(?)
・馬鹿(?)
・特殊な装備
・・・ロクなネタがねぇ・・・。
でもまぁ、無いよりマシと思うか。
そう思わないと、おっさんの胃袋に消えた酒が哀れすぎる。
あ~あ、こんな時アニメとかだと可愛い美少女とかがパートナーになるもんだがなー。
酔っ払いのドワーフにたかられて散財しただけかよ。
現実は甘くはねーよなー(棒読み)
そのヘブンって店で、素敵な出会いでもあればなぁ(切実)