一日目 家
香織を家まで送ってから帰宅する。
美咲はすでに酔いから覚めているようであった。
すぐに寝たかったがシャワーを浴びることにした。
「お先です。兄さん」
「おう」
美咲はそう言って、脱衣所へ向かう。
俺は部屋に戻ることにした。
窓を開けるとひんやりと気持ち風が入ってくる。
そして、タバコに火をつける。
考えることが色々ある。一美のこと、光矢のこと。
それを含めたこれからのこと。
特に何かできるわけでもない。しかし触れずにいることは難しい。
携帯灰皿で火を消して、ぼんやりと外を眺める。
思い出すのはあの日のこと。
深い闇のような存在に追われたこと。
記憶はある。誰も信じてくれない。
けれど、俺たちは・・・。
明日ソラノホシに結花里さんに呼ばれたことはそれに関係しているのだろう。
コンコン
ノックが聞こえ扉が開く。
「兄さんお先でした」
「おう、じゃあ入るわ」
着替えを手に部屋を出ようとする。
「お兄ちゃん・・・ん」
唇に柔らかい感触と、熱が感じられる。
そして、シャンプーの甘い香り。
「また吸いましたね。ほどほどにしてくださいよ。おやすみなさい」
「ああおやすみ」
そう言って部屋に戻っていく。
いつからか、兄さんとしか呼ばなくなたったがたまにお兄ちゃんと甘えてくる。
これが甘えなのかわからないが、その距離の取り方を俺はまだうまくつかめていない。
口づけは儀式のようであり、美咲の中で何か溢れ出そうな気持ちを抑えているだけなのかもしれない。
シャワーを浴びて、考えることが億劫になり眠りについた。
感触はまだ残ったままである。