1日目 白浜公園
「到着ー!!」
一美が入り口の前で少しだけジャンプをした。
スカートがフワリと舞う。
(キレイな足だな・・・。)
「あー!弘ちゃん!!」
「!?」
まさか心の声を読まれたのか・・・。
見入っていたため一美が近くに来たことに気づかなかった。
「どうしたのー?」
下を向いて目を逸らしていたので、一美が下から覗き込んでくる。
・・・
・・・・・・
上目遣いのためか可愛く見えた・・・。
「なっ・・・なんでもない!!」
取り合えず入り口で立ち尽くすのもなんだか変なので―――
決して言い訳ではないが―――
いやほんとに・・・。
そうしといてください。
ってな訳で中に入っていく。
そんなことに気付かない一美は、不思議そうに首をかしげながら後ろを着いて来る。
『白浜公園』
それがここだ。
昔よく皆で遊んだところだ。
そしてもっとも悲しいところでもある。取り合えずベンチに座った。
その横に一美も座る。
「・・・」
「・・・」
なんだか間が空いた。前の砂場では幼稚園くらいの子供が遊んでいる。
山を作ったり、穴を掘ったりと。
ポケットからタバコを取り出す。
一本引き抜いて、口に咥える。
手をかざし火を生み出してつける。そんな些細な能力がある。
「いいのー?そんな人前で超能力なんか使って」
「ん?たいていの人はそんなもの信じてないさ。こんな科学の発達した時代に・・・」
そう言い煙を吐き出す。
白い煙が空に上がり霞んで消えていく・・・。
消えていく・・・。
それはとても悲しいことだ。
突然いなくなるのだから。
消えていく人々に出来ることそれは―――
覚えておくこと。記憶に留めておくこと。
それしかない。だからこそ消えていくことは、儚くも美しいのだ。
「・・・なんでこっちの戻ってきた?」
残酷な質問。
聞いてはならないものだったかもしれない。
けど一美がどんな思いで帰って来たのか知りたかった。
わざわざこの時期に。
あの日から十年たった。
懐かしい。そう思う。
ただ懐かしい。
そして不安だ。またあの出来事が起きるかもしれない。
「なんでだろうね…このままこっちに帰って来なかったら何も思い出さずにすんだのに。
けどやっぱりけじめかな?逃げてばかりいてもいいことじゃないし」
「そうか・・・」
そう言うしかなかった。
なにか言ってやらなければならないのかもしれない。
けど言葉は出てこなかった。
半端な気休にしかならないから。
それに帰ってくるのにそれなりの覚悟が必要なはず。
ただ風だけが過ぎていく。
ピロリロ~ピロリロ~
沈黙を切り裂くように携帯の着信音が聞こえた。
香織からだ。
『もしもし。もう準備できたから!』
「ああ。わかった今から行く」
そう言って電源をきる。
「かおりん?」
「かおりんッ!?・・・まぁそうだ。取り合えず行くぞ」
「えッ?」
たばこを地面で揉み消し歩いて立ち上がる。
「あー公園でポイ捨てだー!いけないんだー!」
「あぁー!!もういいか着いてこい!」
手を掴んで引っ張る。
早くしないとまた約立たずと怒鳴られてしまう。
まったく俺はいつから召し使いになったのだろうか。
まぁ急ぐしかない。ひたすら急ごう。
俺は風になるのだ!!
「ちょっとー!弘ちゃんー!早いよー!」
「ん?わぁっ!?わりぃ・・・。」
一美が引きずり回された子犬のようにズタボロになっていた。
「うぅ・・・ひどいよー」
「あーなんて言うか・・・すまん・・・」