1日目 放課後
放課後になり、部活に入っている人は夏の全国大会に向けて部活に勤しむ。
所詮帰宅部な俺は、早く家に帰るべくかばんを持っていく。
今日は早めに帰り、いそいそと惰眠を貪りたい。
「こらっ!待ちなさい!!」
香織が立ちふさがる。いつもなら、ばらばらに帰るはずなのだが。
「ん?どうしたんだ?」
「今日はパーティよ!!」
そう叫ぶ香織。
「パーティ??・・・あっ!そうか・・・」
そう、多分―――いや絶対的に一美の歓迎会なんかをしようとしているのだろう。
「そうよ。だから、あんたも帰りに『ソラノホシ』に行くのよ。一美には少し遅めに時間を教えておいたから・・・・」
「その間に、準備か・・・」
「そう、だから作戦を聞きなさい!」
とことん騒がしい奴だった。まあ仕方ないが。
『ソラノホシ』
っていうのは、喫茶店の名前だ。そして結花里さんの家だったりもする。
三島結花里。
1つ年上の仲間の中でもお姉さん的ポジションである。
あそこは案外・・・いや・・・以外・・・まあ繁盛している。
よく、なにかあるとソラノホシに集まり勉強会などもした。
昔からの溜まり場みたいなものだ。最近はちゃんと代金を払っているが、昔はただで飲み物を貰ったりしていた。出世払いということになっている。
ちなみに、結花里さんの母親が経営しているが、昔からのツケをちゃんと計算しているという。
俺は、15万というリアルな数字になっているらしい・・・・。
踏み倒してこそだ!!と大人になっても払う気はない。
一美は職員室で少し話があるらしい。それは香織に聞いためだ。
作戦内容は『ソラノホシ』に準備完了するまで連れ回し、一美を連れていく。と言うことのことだ。
俺が役にたたずさらには、暇だからというわけらしい。
まあ主に料理は三咲と結花理さんがするだろう。
香織は……ありえないだろう。あいつの料理はマズイのだがそのマズさは…例えられない。
破壊力ならかなりものだろう。
あれはまだ寒い日だった…
「あれ?弘ちゃんなにしてるの?」
「わっ!?・・・一美か。た・・・助かった・・・。」
もうすぐで嫌な過去を思い出す所だった。あいつの料理の厄介なところは思い出しただけでも、味がこみあげてくる長期にわたり苦しめる。
呪いだから。
一美はよくわからずに首をかしげている。
「まぁ、気にするな。それより帰るぞ」
「え?それで待ってたの?」
「まぁ・・・なんて言うか・・・取り合えず付き合え!」
時間さえ稼げればいいのだから。時間が来れば携帯に連絡がある。
学校の校門を抜ける。
軽い並木道になっている。夏らしく緑の木々に囲まれている。
日差しは暑く夏に入り始めたのを実感させる。
「そういやさー?」
「ん?」
咥えたタバコに火をつけようとしていた時だった。
もちろん能力で。
「公園の木あるよね?大きな」
「それがどうしたんだ?」
「あの標の―――名前の彫った木の下に花束あったよね。いったい誰なのかなー?って」
「あぁ・・・」
軽くタバコの煙を吸い込み一息つく。
公園にある木。
一番大きな木には―――
『ひろき、みさき、かおり、かずみ、ゆかねえ、』
そして最後に―――
『こうや』
と彫ってある。あの日に彫ったのだ。
記憶にとどめておくために。
記録したのだ。
そしてあの木下に1週間ごとに花を置く。
そんな習慣をもってるのは―――
「結花里さんだ」
もう一度タバコを吸い込む。
「え・・・!?」
「あの人は、あれから一週間置きくらいにいつも花を置いている。なんでかはわからないがみんなには言っていない。まぁ美咲も香織も気付いているだろうがな」
「そうなんだ・・・」
「まぁそれなりに皆光矢を想っている。それは記憶が風化していくからかもな」
俺もあの日から人の群れに入ることを止めた。
また大切な人が消えてしまうと嫌だから。
それをわかってても香織もなにも言ってこないし、普通に接してくれる。
なんだか、悲しいことだ。
―――美咲も。
「言っておく事がある」
「なに?」
短くなったタバコを地面に落とし踏みつける。
「香織はあんな風だが、美咲は変わった。俺でさえ距離を置くようになった」
「・・・。変わったって事かな・・・」
「まあそれだけだ。あとはみんなお前の帰りを祝っているからな」
「ねえ・・・弘ちゃん。公園に行かない?」
「え?」
突然一美が言い出した。そして早足で公園へと向かう。
それを少し追いながら俺は一美のあとを追った。
まあまだ、歓迎会の準備が出来てないから大丈夫だろう。
携帯にはなんの反応も無い。