1日目 昼休み
「で、どうして呼び出したんだ?」
昼休み。一美が教室を出たのを見計らって俺も教室を出た。
なんとなく一緒に行くのはマズイ気がした。
特に信吾に見つかると、次の日にはあることないこと噂が一人で歩き
・・・いや走り回っている。
そのため時間差を利用した。
暑い日ざしが、直に照りつける。地面も暑い。
扉を開けるとそこには一美がいた。
いつもなら、給水塔の裏にある日陰に行くのだが、まだ一美はそこら辺は分からないんだろう。
あそこは俺のオススメスポットだ。
一美は背を向けたまま。
「どうしても、聞きたいことがあって・・・」
一美は、思いを口にした。
パッと見は告白のシーンに見えるかもしれなが、そんなにいいものではない。
今から聞かれる質問。
分かっている。何を聞かれるかも・・・。
幼き日々のこと。それしかない。
それを確かめに一美は帰ってきたのだ。
「生きてるんだよね・・・私たち」
「あぁ」
精一杯の返事。
「光矢は死んだんだよね・・・」
「ああ」
それは、事実だ。
「光矢は・・・居たんだよね・・・ここに」
「当たり前だろ」
忘れるわけのない過去だ。みんな知っていること。
いや正確には、あの時に居たみんなだけの記憶だ。
隠している訳でもない。ただ誰も知らないし誰も気付いていない。
変な言い方をするならば、世界が違っていた。
黒い 白い モノクロの。
そして振り向く。
「ごめんねー。こんなこと聞いて!」
手を合わせて、あやまる。まあ一番聞きたかったことだろう。
顔が少し涙目なのは、聞かないことにしよう。
「いや、いいさ」
どうしても会話が続かない。休み時間話したときとは違う。
やはり、変わっている。それは身にしみて分かった。
もう昔ではないんだ。進みだしている。
皆が、変わっている。
十年経ったのが嘘みたいに感じたのは、やはり嘘だ。
どこかでそう思いたいだけなのかもしれない。
一美を見ているとそう思ってしまう。
「そういえば・・・まだアレできるの?」
と何か興味のある顔で近づいてくる。
「ああ、まあな」
ポケットからタバコを取り出し咥える。
「うわー弘ちゃんが不良になったー」
「うるせー。見るのか見ないのかどっちだ?」
「見るよ!!見る!」
俺は一指し指を立てる。すると、ボウッっと音がでて火が生まれる。
その火でタバコに火を着ける。
「うわーやっぱりすごいな・・・」
「そうか?やっぱり・・・」
「うん。でも弘ちゃんも変わったね」
「?」
やはり自分なんて分からないだと思った。
吐き出す煙が、中に舞って消える。
「そうだ、この事は香織や美咲には黙っててくれ。見せてやったんだからな」
念を押しておく。見つかった時は凄まじいもんだ。
二回ほど見つかったが、やはり散々なものだった。それはもう・・・。
「はは・・・わかった、わかった!!」
本当に大丈夫かと本気で思ってしまった。
「やっぱり、暑いなー」
吸い終えたタバコを踏み捨てて一美と教室に戻っていった。