1日目 休み時間
チャイムがなって一時間目が終わり、香織によく踏み込んだブローを喰らい目が覚めた。
「・・・ぐぇ!?」
檻がお留守だぜ!
と言わんばかりのブローに俺はその内死ぬかもしれない、とホントに思った。
やはり、一瞬でも死んだ婆ちゃんが見えたからだろう。
「懐かしい婆ちゃんが、手招きしてたぞ・・・」
「えっ?気を付けないと危ないわよ?」
「お前のせいだ!!それに・・・そのブローは三発目が立ちガードできないんだぞ!」
ったく、なんでこいつは自分の馬鹿力を分かっているのだろうか。
いや分かっているはずがない。死ななければなんでもいいと思ってるに違いない。
「てなわけで、貴重な休み時間を使うわけに行かないんで寝るぞ?」
「待ちなさい!」
「何だよ?こっちはさっきの攻撃で死にかけたんだ。もう寝るしかないだろうが?」
「まぁまぁ。ここは私に免じて起きてよ。弘ちゃん?」
香織の後ろに誰かいる。
寝伏せていたので気付かなかった。仕方なく起きるとそこには、朝みた一美の姿があった。
「誰だっ!?」
「えっ!?」
「長き因縁に終止符を打とうではないか・・・」
「わ・・・わが生涯に一片の悔い無し!?」
少し恥ずかしそうだが、拳を突き上げる一美。
「巨星落つ・・・か・・・」
などとお約束のボケをしてみたりする。
「久しぶりだな。十年ぶりか?」
「うん。そうだね・・・」
「で、どうして引っ越してきたんだ?」
「ちょっとね…。まぁ家の都合かな。そうそう、家はまたあそこなんだ」
なんだか十年たったなんて嘘みたいに感じた。でもどこか一美が哀しそうに見えた。
それは気のせいかもしれないが、少し引っ掛かっていた。
「家は昔のまんまなのか?」
「うん、もともと買った土地だしね。だから昔のところだよ」
「ねぇ一美?」
チャイムが鳴ると、それぞれは席に戻っていく。
一美が小さな声で、昼休みに屋上に来てと言っているのを聞いて、やはり蝉の声にまぎれて意識も消えていった。