1日目 HR
「最新情報だ!!」
学校に着くなり、煩い奴が現れた。
香織はというと、友達のところに言っているみたいだ。
なら俺一人で、こいつと話せと?
冗談だろ。
「朝から叫ぶな」
こいつは武宮信吾という、まあ友達みたいな奴だ。
なかなか煩いやつだ。事あるごとに何か情報を知りたがるのは新聞部の性みたいだ。
本人はジャーナリズム魂と言っているが、ただ単に知りたがりなのだろう。
野次馬根性が強いだけとも言える。
だが、こいつの仕入れてくる―――どこからかわからないが―――情報は信憑性が高いことで有名だ。みなそれなりに信じている。
しかも金を払えばどんな情報も調べてくれるらしい・・・。
「それよりもだ。転校生が来るって話しだぜ」
「はぁ?なんでまたこんな時期に・・・。もうじき夏休みだろうが」
もうあと三日で夏休みだ。しかも、土日を挟み、ほぼ授業が無い。
しかも今日は土曜。明日は休みだ。
「まあそれよりもだ。その転校生は女でしかも可愛いときた!!まさに恋の始まりだ!」
「へー?そうかよかったな」
簡単に流す。興味がないと言ったら嘘だが、そこまで興味があるわけでもない。
大体、転校生が恋の始まりとはどういうことだ。
まるで漫画などの世界である。
そんな白けた態度をとっていると信吾が
「まぁ、お前の回りには何故か美人が多いからなー気にもならんよな」
などとほざくのでほっておく。
確かに美少女とまで行くのか分からないが、なかなかいい線までいく連中だな。
あのメンバーで何処かにいくと周りの視線が痛いのは、よくわかる。
だが一つ言おう!!
俺は妹萌えではない!!決してそうではない!
とだけは言っておこう。
ロリコンじゃないのだ。
「席につけよー」
心で良く分からない宣言を掲げていると先生がやって来た。
その横には、信吾の言っていた転校生らしき人がいる。その顔はどこか見覚えがある。
どこかで・・・会っている。
そんなことが頭に浮かぶ。
カリカリ
黒板に先生がその転校生の名前を書く。
『仁科一美』
「にしな・・・かずみ・・・?」
それは知ってるというよりも、忘れるわけが無い名前だ。
なぜこの時期に・・・。
よりにもよってこの時期・・・・。
香織を見てみると、なんだかうれしそうにこちらを見て何か言っている。
そしてもう一度前を見る。
ふと目があう。
笑いかけられる。覚えているのだろうか?
なんだか不思議な気分だ。あの一美が、この街に・・・。
十年たった。
それでなにがどうなったわけでもないが、鼓動が早くなる。
懐かしいから・・・?
それとも、悲しいから・・・?
わからない。なぜだろう。
そんな気持ちになった。
「よろしくお願いします」
お辞儀をして、席に着く。
そして、一時間目の授業が始まる。
空を見ると、青い空が果てしなく続いていてキレイだった。
やかましい蝉の声も、なんだか夏が近づいたんだと感じさせる。
温かい陽射し。窓際の席の温もりを感じながら、睡眠学習に励むことにした。
決して言い訳ではない・・・。
立派な学習方法だ。睡眠学習万歳!!
そうして、意識が蝉の声にまぎれて消えていった。