2日目 ソラノホシ1
「こんにちわー」
「おじゃまします」
ソラノホシに着くと結花里さんが席へ案内してくれた。
中は繁盛しているようだったが席を取っておいてくれたようである。
「で、どうしたんだ?話って」
そう俺が切り出すと、結花里さんは深刻な顔をして話し出す。
「まず、何から話したらいいのか。あっ、一美ちゃんは私の力『予知夢』については知らないんだよね?」
「えっ・・・少しだけさっき聞いたんだ」
「一応少しだけだが、説明しておいた」
「簡単に言うと、場面、つまりは未来の姿が断片的に見えるの」
それはさっき説明したとおりであった。
「なんか私たちって変な力持っている人多いよね」
香織が呟く。確かにそうだったが、それは何かあの日に関係あるのだろうか。
「その夢の内容ですよね。大事なのは・・・」
美咲が話を戻す。
「うん。一美ちゃんには少し辛いかもしれないけど。10年前にも見たの。あの場面を。
その時はまだ力についてよくわからなかったんだけどね。最近見たのがまたあの時の夢なの。一つ違うのはこの一週間のうちに起こるってこと」
「え・・・それって・・・!?」
香織が驚く。一美は下を向いていて表情がわからない。
ーーーなぜなんだろう
ーーーそんなことがおこるのだろうか
「なんで!こんな時なんだよ!!」
つい叫んでしまていた。
「弘ちゃん・・・」
「落ちつてください兄さん」
「美・・・咲・・・?」
「何か助かる方法は、無いんですか?」
そうだ。
あの時は何もできなかったが、今なら。
来ることがわかっている。
それに対策を立てることは可能ではないか。
そして、あの日から予想してなかったわけではない。
ただ考えたくなかった。また誰か消えることに。
「そう!なんとかするしかないのよ!少しは冷静になりなさい!弘樹!!」
バン!
「いってぇー!!」
香織に背中を叩かれる。ジンジンとする。
(こいつは!)
だが頭は少し落ち着く。
俺は助けられてばかりだな。
「・・・助かる方法はわかりません。予知夢なので」
沈黙。
皆が言葉をなくしてしまう。
しかたないことであるが、気だけは持たなければ。
「じゃんじゃじゃーん」
と志保さんが現れる。雰囲気ぶち壊しである。
まったく空気を読んでいないのだろうか。
「母さん。どうしたの?」
いつもの結花里さんに戻る。笑顔で対応する姿は先ほどまでの暗い雰囲気すら感じさせないでいた。
「おねえさんからのプレゼントよ」
「いや、やっぱりそれには無理が・・・」
ドゴッ!!
見事なげんこつが頭に降ってきた。
そして机にファイルが置かれている。
結構な分厚さがある。
「母さん・・・これは・・・?」
「う〜ん。私なりに色々調べておいたものよ。あのことについてね」
「あんた一体何者だよ・・・」
「まぁ苦労はしたけど、それなりに手がかりになるはずだから」
そういってカウンターへ戻っていった。
「取り敢えずこれを読んでみよう!」
香織が、ファイルに手を伸ばす。
『ブラックボックスについて』
そう書かれていた。
「そうだな。取り敢えず何も手がかりないんだからやってくかないか」
一美の表情はまだ固い。転校してすぐまた、あの日のような出来事が起こるとは。
気持ちに折り合いをつけたからこそ戻ってきたのだろう。
「大丈夫か?あれなら俺たちだけででも」
「ううん・・・。大丈夫だよ。でもありがとう。この街に戻ったら光矢の面影がちらつくのわかってたし。それに私抜きでなんて仲間はずれやめてよね。大丈夫。大丈夫だから」
「では、少しずつこのファイルを読んで内容を確認していきましょうか」
手分けしてこのファイルの解読にあたった。