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夏の軌跡  作者: Ej@world claim
1日目
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1日目 朝

僕たちは幼い頃何かと戦った。

それは本当に夢のような悲しい思い出だった。

―――忘れかけた思い出と

―――忘却された過去。

僕たちはあの日を繰り返す。


「兄さん。朝ですよ。起きてください」

朝の憂鬱な時。そんな時にいつもの声がする。

「無視だ・・・」


そう俺は―――秋吉弘樹は夢に生きる男!


そのまま毛布にくるまり睡眠を磯しむことにした。

朝の貴重な時間をギリギリまで睡眠に当てることが俺のポリシーだ。

それをわかってか、ドアを開く音が聞こえる。

「起きてください。学校に遅刻しますよ」


ユサユサ


軽く揺さぶられる。がここで負けるわけにいかない。

諦めるまで待つ作戦を選んだ。


ユサユサ


それにこの軽い揺れがまた、眠気の体にはちょうどいいくらいで、また眠りにつく。


ユサユサ


なんかちょうど心地いい。


「ぐぅー・・・」


「ちょっと、兄さん!起きてください」

気持ちよくなる意識の中、バタバタと階段を物凄い勢いで駆け上がる音が聞こえる。

「どいて美咲ちゃん!!そんな生易しい起こし方じゃだめよ!!」

「え…でも、それは…」

何かを躊躇う美咲の声が――地を蹴る音に変わる。

「でやあああああ」

「ぐうっ!?」

腹の上に何かが落ちる。うまいことみぞおちに入った。

声にならない声を上げて悶絶する。

「やっと起きたわね。駄目よ美咲ちゃん。そんなに生易しい起こし方じゃ」

ならジャンピングエルボーならいいのだろうか。

一歩間違えば永遠に眠りにつくことになる。とんでもない事を、美咲に教えている。

しかも美咲も何故か、うなずいている。

仕方なく起きることにした。

「お前は、俺に何か恨みでもあるのか?」

「あんたが起きないから悪いんでしょ」

そう言って幼馴染みの岩崎香織はため息をついた。

美咲は先に下に行ったみたいだ。

「いつまでいる気だ?着替えられないだろうが」

「えっ?!あっ…そうね!じゃあ早く来なさいよ!」

そう言って来た時と同じようにやかましく階段を降りていった。

全く騒がしい奴だ。



着替えて一階のリビングに行くと、美咲が朝飯を並べて待っていた。

ちなみに和食だ。

「やっと降りて来ましたね。兄さんはにもう少し早く起きてもらわないと困ります」

などと朝から美咲は愚痴を溢す。

いただきますと合掌してから食べ始める。

「そういえば香織の奴は?」

てっきりリビングにいるものだと思ったが。

「香織さんなら忘れ物があると行って一旦家に帰られましたよ」

味噌汁が熱い。少し猫舌な俺にはそう感じられた。


美咲との二人暮らしにもなれた。

親は俺が高校に入った時海外に仕事に出かけた。

もう一年がたつ。今では俺は坂下高校2年で、美咲は同じ学校の1年だ。

香織は俺と同じクラスにいる。腐れ縁なんてあるものだ。

毎回香織とは同じクラスになる。

家の食事当番はほぼ美咲に任せている。

親が出て行った時に二人で交代制にしていたが、どうしても俺より美咲の方がうまいし早いこともあり、食事は美咲に任せることにしてる。

俺は掃除とか、洗濯位かもしれない。

しかも洗濯でさえ、美咲がやるときの方が多い。やはり年頃らしいのだ。

が、俺はそんなことお構い無しにすべてを洗濯したら、その日からご飯が見て分かるほど粗末な物になった。

・・・しかも俺の分だけ。

しかたなく俺は、土下座までしてなんとか洗濯は美咲の分はしないという方針で決まり食べることには苦労しなくなった。


「ごちそうさま」

食べ終えて食器を台所へ持って行き洗った。食器洗いは主に俺の仕事になっている。

そうしないと、なんか兄としての威厳ってものがない気がするし、そもそも美咲にばかりやらせるのは悪い。

水が少し冷たく感じた。



「兄さん、早くしてください」

「急かすな。今行くから」

ドアを閉めて鍵をかける。教科書などを積めていると時間がかかった。

やはり前もって準備をしていた方がいい。そこら辺はいつものことだが。


外に出ると香織が待っていた。

「よお。なに忘れたんだ?」

「英語の宿題のプリントよ」

「なぬ!?英語に宿題なんかあったか…」

すっかり忘れていた。知っていたら多少はしていたはずだ。


本当に少しだけだ・・・。


まさか俺がまともに机に向かうはずも無いからだ。

「しっかりしてください。だから寝る前に言ったじゃないですか」

「そうか?忘れてた…」

ため息をついて諦める。

いや香織に見せてもらうしかない。

勉強はそこそこ、っても俺よりは出来る。

「しかたないから見せてもらってもいいぞ?」

「はぁー?あんた教えてもらう人の態度それは?」

「俺は教えてもらうんだぞ」


学校まで香織は怒って、美咲にまで愚痴を言われた。

兄さんがやらないのが悪いんだと。

もっとまじめに勉強しろと。なんだかやるせない気分になった。

母親の様に言われる。いやまあ美咲は、まともにやってるからなんにも言えないんだが。


あれから十年が経った。一美は転校してしまい、結花理さんもあれ以来なんか変わった。

そうあの頃とは皆違うんだ。俺も、美咲も香織も。

大人になったというか、良く分からないが。

そして、アノ奇妙な出来事もすべては現実なんだ。

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