混浴
「はぁ~きぃもちぃ~」
「…………」
どうしてこうなった。俺は今アレグラさんとなぜか温泉のような混浴風呂に入浴している。まぁ混浴風呂付きの宿を紹介してもらったわけなのだが……。
くそっ! 目のやり場に困る!
「ふっふ~んふっふふ~ん」
ご機嫌だなぁ。風呂はどこの世界でも共通して癒しの一時なんだろうが。
「だって風呂なんて滅多に浸かれるものじゃないんだよ? 宿代見たでしょ?」
普通の宿は一泊銀貨二枚ってところだったのだがこの宿に至っては金貨一枚である。湯船付きの風呂は贅沢なのだそうだ。
「さぁてこれからどうしようかな~。お部屋のベッドダブルだったしな~」
泊まるつもりか!? やばいよやばいよ……。今のアレグラのあられもない姿を見ながらこんなセリフを言われたらやばいよぉ。後ろで結った髪でうなじが見える! エロい! 胸も結構あるし肌白いし……。
「って冗談ですよ~冗談! そんなにジロジロ視ないでくださいよ~」
ほんとかよ……。ならタオル巻けよ。向こうの世界じゃマナー違反なんだろうがこっちでは知らんがな。着やせするタイプだってのがわかっちまったよ。
「それにしてもウィルさんの身体すごいですね」
「そうか?」
てか俺もまだちゃんと確認してなかった。どれどれ……。
「うわ!? 筋肉すげぇ!? 引き締まってやがる……逆三角になってる……」
「え?」
「あ、いや。なんでもないよ?」
すげぇ。太すぎず細すぎず。腹筋は八つにバキバキ。腕や足も筋肉のラインがすごい。髪は黒髪のままか。顔は……設定では十七だったよな? なんかちょい悪おやじっぽい。ちょっと老けてるけどなかなかかっこいい。イケメンとはまた違うタイプのいい顔をしてる。
「あっちも……すごい……」
俺も隠してなかった。てへぺろ。
風呂をあがった後彼女を自宅へと送り届けた俺はまた宿に帰ってきた。ふぅ危ない危ない。どこかで選択を誤っていたらきっとベッドインしていただろう。
アレグラが帰り際に置いていってくれた本がある。
『冒険家の心得』
表紙にそう書かれた本をぱらぱらめくりながらベッドで横になっていた。その途中で気になるページを見つけた。
“仲間を増やす方法”
一通りよんでみた。一般的にはギルドでPT募集してるPTにはいるか自分で募集するか、友人を作って一緒に活動するかなのだ。人見知りな俺には到底無理だ。という事にして次の項目。奴隷をPTに加えるという方法だ。
そうか。この世界には奴隷の人身売買があるのか。しかも合法だ。ご丁寧に奴隷商会や奴隷市場の位置まで記載されている。金額も平均したら金貨五十枚ってところか。最悪どうしても仲間ができなければここを頼ろう。
“長所を伸ばすか、短所を克服するか”
これも気になるな。俺の場合物理攻撃が長所で魔法攻撃と回復手段が短所だな。正直あれ以上の剣撃ができるとも思えないし魔法をなんとかしたいところだ。そもそも俺って魔法使えるのか?
今アレグラがいたならこの辺も色々聞きたいところだったな。だが帰してしまったものはしょうがない。後の祭りである。
そんな事を考えていると扉からノックが聞こえた。扉を開けるとそこには……。
「……忘れものしました」
おそらく寝巻きが入っているであろう鞄をひっさげていた。
「今日はもう遅いし泊まっていけよ」
「……うん」
いろいろ聞きたい事が増えていたしな。
俺も覚悟を決めよう。