問題点
冒険者ギルド内の飲食店にてアレグラさんと合流した。普段着姿のアレグラさんはとても美しい女性だった。俺と同じ黒髪なのが好印象だ。セミロングがとても似合っている。
「お待たせしました。ウィルさんここだと少し話しずらいので外のお店に行きませんか?」
「おまかせしますよ。あと全くこの街の事がわかりません」
「それでよく女性を食事に誘えましたね……」
全くだ。女性に対して失礼な事をしてしまった。反省……。
彼女がおススメしてくれたのは冒険者御用達の食堂だった。栄養満点でヘルシー志向の女性にも人気があるとのことだ。そんなアレグラはサラダとフルーツの盛り合わせを、俺はパスタを注文した。
パスタってあるんだな……。
「美味い!!」
「ふふふ~そうでしょう? 量もあって美味しくてリーズナブルの三拍子なのよ」
そう言って微笑む彼女の顔にどこか懐かしさを感じた。
あいつもこうやって笑っていた気がする。大分昔で記憶がかなり薄らいでるけど。
「ん? どうかしました?」
「いやなんでも。それよりアドバイスでしたっけ?」
「そうそう! ちょっと大きな声では言えないんですが聞いてください」
「はい」
真剣な表情に切り替わった彼女を察して頷く。
「まずステータスの件なんですが、異常の一言に尽きます。ほんとに異常なので実はまだギルド登録していません」
「え!? そうなの?」
「はい。あのステータス情報を登録すると大騒ぎになります」
「それはどうしてですか?」
「ステータスランク表示でS表示がいくつもありましたよね。Sなんて私のような受付でも数年に一回見るかどうかです。しかも複数のステータス表示がSなんて初めて見ました」
なるほど。筋力だとか色んな項目がSだったな。魔法とか知識はあれだったけど。
「次にHPです。五万は異常です」
「どのくらい異常なんでしょうか……」
「あまり個人情報は言えないのですがA級の平均HPは七千です」
まじか。トップランカー平均の七倍か……。あまり公表されたくないな。
「三つ目はこの街の最高ランカーはC扱です。B級すらいないのにA級冒険者が登録されたとなればスクープになるでしょう」
「あ~……」
そうなると依頼を選ぶのも一苦労しそうだし色々めんどくさそうだなぁ。
「まだまだありますよ。ダンジョンにもぐったことはありますか?」
「ありません」
「やっぱり……ステータスに対して冒険家としての知識が疎いようだったので……」
「知識Dですからね……」
「それも異常なんですよね……ウィルさんの年齢なら最低でも知識はBに到達してるはずなんです。日常生活や友達付き合いしてるだけでもBには行くんです」
これはアウトだな。転生してきたばかりだし。常識的な事はインストールされてるみたいだけど魔法の知識だとか冒険家の心得みたいなものは全くわからない。地理は大丈夫のようだからそれでEじゃなくD判定だったのかもしれない。
「話を少し戻しますがダンジョンに潜るには色々と準備が必要でPTを組む必要もあるんです。誰かお仲間の方などはいるんですか?」
「完全にソロです」
はいボッチです。
「ダンジョンにも難易度が設定されてるんです。A級冒険者になってしまうとダンジョンも高難易度の場所しか潜れなくなるんですよ」
「うぅ……」
色々問題が積み重なってきた……。
少し整理してみた。
A級登録した場合に発生する問題
大騒ぎになる。
最初から難しいダンジョンしか潜れない。
依頼を選り好みできなくなる。
PTを結成しないと活動しずらい。
「ステータスはギルドの人間しか見れませんが本部に伝わるとどうなるかわかりません。なので一度ギルド登録をお考えいただければと思ったのです。なのでまだ手続きは完了していません」
「アレグラさん……色々と気に掛けてくださってありがとうございます」
「いえいえ~これもお仕事の一つですから!」
イエイってピースするアレグラさんかわいい。
「このあとお酒でも買ってウィルさんのお家に突撃しちゃいましょっか! なんちゃって」
「あ……」
「ど、どうかしました?」
「寝るとこ確保していませんでした」
「へ?」
「宿まだとっていませんでした……」
こうしておすすめの宿まで案内してもらう俺でした。情けない……。