第3話
▽主人公・【地上・魔王の抱擁・外周部】▽
ドラゴンを殺した後、急いでおねーさんの下に駆け寄った。
「大丈夫ですかっ!?」
ぱっと見た感じでは呼吸は出来ているように見えるものの、時折妙な呼吸音がするし、顔色も悪い。
さっきまで大量の蔓に締め付けられていたからもしかしたら内臓の方にもダメージがいっているのかもしれない。
しかし、残念なことにオレに医療の知識は無い。
「クッソ、どうすりゃ良いんだよっ!?」
いや、まてよ?
「そういや、異世界ファンタジーで光魔法って言ったら回復支援系だよな…? 全属性最高位魔法を使えばいける…か?」
迷ってる暇は無えな。
「そうと決まれば早速やってみるか」
おねーさんを包み込むようにダメージを完全に回復する神聖な光のドームをイメージする。
そして、詠唱によってそのイメージを具現化する!
「完全なる癒しの光!」
すると、イメージ通りの光のドームがおねーさんを包み込み、悪かった顔色が元に戻っていく。
「良かった…」
どうやら上手くいったようだ。
しかし、そうなるとまた別の問題が浮上してくる。
おねーさんは気絶したままなので急いでどこか安全な場所に寝かせてあげたい。
だが、オレが知ってる場所はあの薄暗く陰鬱な雰囲気の漂う玉座の間くらいなものであるが、流石にあんな所に病み上がりのおねーさんを寝かすのはマズイだろう。
かと言って、オレは他に安全な場所を知っているわけでも無いのだが...
さて、どうしたものか…
「ん? というか無いなら作れば良くね?」
せっかく創造魔法なんてデタラメな魔法が使えるのだから、それをフル活用して究極のセーフハウスをこの森に作って仕舞えば良いのでは?
あんなドラゴンがいるような森にわざわざ立ち退き要請してくるような酔狂な奴もいないだろうし。
勝手に居座っても問題ないだろう。
「そうと決まればサクサク作っていくか。 おねーさんも早く寝かせてやりたいし。」
場所は人まずここでいいだろう。
ドラゴンが暴れ回ったおかげでいい感じに開けているし、日当たりもいいからロフトとかつけるのもいいかもしれない。
「とりあえず、今は豆腐建築でいいか。」
快適で機能的な家を作るのはまた今度時間があるときにして、イメージしやすくてすぐに作れる建物をサクッと建てて行こうか。
まあ、建てるというよりかは生み出すの方が近い感じなんだが。
〜〜〜〜〜主人公建築中〜〜〜〜〜
なんという事でしょう!
巨大爬虫類に荒らされ、ボロボロになっていた土地が平坦に均され、その上にまるで豆腐のような継ぎ目一つない純白の箱が鎮座しているではありませんか!
匠は一体、何を作ったのでしょうか?
「いやほんとなんでこうなった?」
あれか? 特に材質について考えていなかったから、豆腐のイメージに引っ張られたのか?
でも豆腐って見た目ではあるが、触った感じは豆腐じゃないんだよな。
じゃあなんだって聞かれると困る新感覚の触り心地だ。
吸い付くような反発するような、堅いような柔らかいような、そんななんとも言えない感じだ。
「ひとまず、中におねーさんを運んで寝かしとくか」
ベッドは家と違ってちゃんと材質をイメージしとくか。
▽謎の女性【地上・魔王の抱擁・?】▽
「や.........柔ら...............あ。 .........んかい............たし。」
.......................なんだ?
「にしても大丈夫...............。 一応怪我は...............はずなんだけど。」
............................誰かの声.......?
「あのクソドラゴンもっと痛めつけるべきだったか? でも慢心して反撃食らってたらかっこ悪いしなぁ。」
ドラゴン...?
......................................ッ!?
そうだ! あの深緑龍はどうなった!? あの青年は逃げられたのか!?
微睡んでいた頭に血が駆け上がり、一気に意識が覚醒していく。
どうやら、私は寝台に寝かされていたようだ。
見たこともない材質の寝台だが寝心地は良く、まだ起きたくないと頭の隅が言っているが、それを無視して閉じていた目を開け、横になっていた体を起こしてあたりを見渡す。
「あ、目が覚めましたか。 一応傷は治したんですけど、目が覚めなくて心配していたんです」
寝台の横に、あの時の青年が立っていた。
ざっと見たところ、着ている衣服が見慣れないものである以外おかしなところも無く、体のどこかを痛めているというわけでも無さそうだ。
立ち姿や、見えている腕を見たところ、体を鍛えているというわけでもなさそうだが、どうやら深緑龍に拘束され、気絶した私を救出し、この場所で傷を癒してくれていたようだ。
あの場にいたところを見るに、かなり強力な魔法使いだったのだろうか?
いや、今はそんなことよりも先にいうべきことがあるな。
「ああ、ありがとう。 どうやら、貴方が私を助けてくれたようだな 」
あたりには彼以外に誰もおらず、周囲に人の気配もないため少なくとも近くには誰もいないことが分かる。
そうなると、あの場にもいた彼が深緑龍をどうにかし、私を助けてくれたのだろうと考えられる。
後ろから迫ってきていたドラゴンに焦り、私は彼を一般人だと思い込んでしまっていたが、そもそも魔王の抱擁の中に彼はいたのだから、一般人な訳がないか。
相手にとって有利な地形とはいえ、私を甚振ることに集中していた理性無き【蛮龍】など、力のある魔法使いにとってみれば、カカシも同然か。
「え? ...いや、まぁ、確かに、結果的には助けられましたけど、こっちこそすいません」
青年は、どんよりとした雰囲気で申し訳なさそうな顔をしている。
「あの時は色々と気が動転していて、貴女が気絶してしまうまでろくに動くことができなかったので、余計な怪我を負わせてしまいました」
彼は見たところかなり若く、実戦経験に乏しいような気配なので、もしかしたらあれが初めての実戦だった可能性まである。
だが、そうなると深緑龍をどうにかできるほどの魔法使いと思われる人物が、実戦経験に乏しいということになるが、そのようなことがありうるのだろうか?
私は剣士であり、魔術の類はどれほどの修練を積めば【蛮龍】に効果のある魔術を扱えるようになるかは分からないが、少なくとも、実践を知らない剣士であれば余程の天才や神童でもない限り不可能だと断言できる。
だが、まぁ、命の恩人に要らぬ詮索をするものでもないか...。
少なくとも、目の前の彼は悪意もなく、嘘も言っているようには思えないからな。
「気にする必要はないさ。 いま君が言っていたように、結果的に、私は君に助けられたのだから、礼を言わせて欲しい」
私は、改めて彼の方を向き、感謝の気持ちを伝える。
「 ありがとう、君のおかげで私の命は助かったようだ」
頭を下げ、今の気持ちを彼に伝える。
顔を上げると、彼は何やら顔を赤くしながら目をキョロキョロさせている。
一体どうしたのだろう?
▽主人公・【地上・魔王の抱擁・仮拠点】▽
「 ありがとう、君のおかげで私の命は助かったようだ」
ッ!?
美女の!微笑み!!感謝!!!
ヤ、ヤベェぜぇこれは。
顔面に血が集まりすぎて照れ死しちゃいそうだぜ...。
「それで......すまないんだが、ここはどこだろうか? 見たこともない場所だが」
まぁ、おねーさん的には、あのクソドラゴンに締め落とされた後、気がついたらこんな真っ白でよく分からん場所にいたわけだから、そりゃ気になるわな。
むしろ最初にオレに感謝を伝えてきたあたりだいぶいい人だなおねーさん。
ドラゴン相手に斬りあえるほど強くて、エキゾチックな褐色美人で、見知らぬ相手でもちゃんと頭を下げて感謝を伝えるほど優しくて、完璧美人か?
そんな風にボケッとしていたから、つい口がスベッてしまったんだろう。
後から思い返して、「あんな漫画みたいな展開を、まさかオレがすることになるとは」と呟く程度には記憶に焼きついている。
「ああ、この場所ですか。 気絶していた貴女を連れて移動するのは危ないと思って、あのドラゴンを仕留めた場所に建てた豆腐ハウスの中です」
「え? 建てた?」
「あ」
建てたあたりのことについて聞かれるに決まってんじゃんオレェェェ!?
この小説は、不定期更新で遅筆で駄文で作者が気まぐれに更新します。気長にお待ちください。
それでも「見たい!」と、言って下さる方には、感謝を申し上げます。