NO.2 シェル 著 クリスマス 『贈』
あるところに小さな村がありました。
この村の娘たちは皆 小鳥の化身で、
小さな翼を持っていました。
その村に お雪ちゃんという綺麗な娘がいました。
お雪ちゃんは機織りの名人で、
村の娘たちは お雪ちゃんの作った綺麗な反物が大好きでした。
「陽にかざすとキラキラ光るのよ」
「さわるとツヤツヤとしているの」
「柔らかくてとっても温かいわ」
お雪ちゃんの反物の噂は あっという間に村の外にも広まりました。
「この反物は きっとお日様とお月様の光の糸を紡いで作ったものに違いない」
遠くの村の人も反物を欲しがりました。
「いいですとも。作りますから待ってて下さいね」
お雪ちゃんは朝も昼も夜も ギッタンバッタン機を織りました。
◇
ある日、反物のお礼にと
村の娘がお雪ちゃんの元へ訪れました。
ギッタンバッタン ギッタンバッタン
機を織る音が聞こえてきます。
「おゆ~きちゃん・・・」
そーっと戸を開けた娘はびっくりして
持ってきたツバキのお菓子を落としてしまいました。
「お雪ちゃん!」
なんとお雪ちゃんの背中の羽根が沢山取れて、
翼の付け根が赤くなっているではありませんか。
実はお雪ちゃんは自分の羽根を取って
糸と一緒に織り込んでいたのです。
「機を織るのが大好きなの。反物を作るのが大好きなの。
お願いだから続けさせて。皆には言わないで」
でも 何も言わなくても村の娘たちは分かっていました。
皆 お雪ちゃんの事が心配でした。
「そうだ・・・私の翼をあげよう」
一人の娘が言いました。
「私もあげる」 「私も」
「待って。そんな事をしたら皆飛べなくなるじゃないの。
あんたのおっかさんの薬草は誰が採りに行くの?
お雪ちゃん、きっと悲しむわ」
どうしたらいいのか分からず 皆黙って空を見つめました。
◇
ギッタンバッタン ギッタンバッタン
「お雪ちゃん・・・・今いい?」
満月の夜、機を織るお雪ちゃんの元に娘たちがやってきました。
「これ・・・皆の羽根を少しずつ集めたの。
お雪ちゃんのような羽根じゃないけれど・・・・
これを紡いで機織りに使って」
お雪ちゃんは嬉しくて、 そーっとそーっと受け取りました。
その時、雲の間からお月様の光が 受け取った羽根に降りてきました。
するとどうでしょう。
光に包まれた小さな羽根たちが お雪ちゃんの赤くなった背中に飛んで行き
真っ白な翼になったではありませんか。
「みんなみんな ありがとう。これでまた反物が作れます」
お雪ちゃんも娘たちも嬉しくて
月の光の中で花のような笑顔になりました。
◇
ギッタンバッタン ギッタンバッタン
今日も村には お雪ちゃんの機織りの音が鳴っています。
おしまい。




