表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作小説倶楽部 第3冊/2011年下半期(第13-18集)  作者: 自作小説倶楽部
第18集(2011年12月)/テーマ「クリスマス」&「刀」
38/42

NO.2 シェル 著 クリスマス 『贈』

あるところに小さな村がありました。

この村の娘たちは皆 小鳥の化身で、

小さな翼を持っていました。

 

その村に お雪ちゃんという綺麗な娘がいました。

お雪ちゃんは機織はたおりの名人で、

村の娘たちは お雪ちゃんの作った綺麗な反物が大好きでした。

 

「陽にかざすとキラキラ光るのよ」

「さわるとツヤツヤとしているの」

「柔らかくてとっても温かいわ」

 

お雪ちゃんの反物の噂は あっという間に村の外にも広まりました。

 

「この反物は きっとお日様とお月様の光の糸を紡いで作ったものに違いない」

遠くの村の人も反物を欲しがりました。

 

「いいですとも。作りますから待ってて下さいね」

お雪ちゃんは朝も昼も夜も ギッタンバッタン機を織りました。

 

 

ある日、反物のお礼にと

村の娘がお雪ちゃんの元へ訪れました。

 

ギッタンバッタン ギッタンバッタン

機を織る音が聞こえてきます。

 

「おゆ~きちゃん・・・」

そーっと戸を開けた娘はびっくりして

持ってきたツバキのお菓子を落としてしまいました。

 

「お雪ちゃん!」

 

なんとお雪ちゃんの背中の羽根が沢山取れて、

翼の付け根が赤くなっているではありませんか。

 

実はお雪ちゃんは自分の羽根を取って

糸と一緒に織り込んでいたのです。

 

「機を織るのが大好きなの。反物を作るのが大好きなの。

 お願いだから続けさせて。皆には言わないで」

 

でも 何も言わなくても村の娘たちは分かっていました。

皆 お雪ちゃんの事が心配でした。

 

「そうだ・・・私の翼をあげよう」

一人の娘が言いました。

 

「私もあげる」 「私も」

 

「待って。そんな事をしたら皆飛べなくなるじゃないの。

 あんたのおっかさんの薬草は誰が採りに行くの?

 お雪ちゃん、きっと悲しむわ」

 

どうしたらいいのか分からず 皆黙って空を見つめました。

 

 

ギッタンバッタン ギッタンバッタン

 

「お雪ちゃん・・・・今いい?」

満月の夜、機を織るお雪ちゃんの元に娘たちがやってきました。

 

「これ・・・皆の羽根を少しずつ集めたの。

 お雪ちゃんのような羽根じゃないけれど・・・・

 これを紡いで機織りに使って」

 

お雪ちゃんは嬉しくて、 そーっとそーっと受け取りました。

 

その時、雲の間からお月様の光が 受け取った羽根に降りてきました。

 

するとどうでしょう。

光に包まれた小さな羽根たちが お雪ちゃんの赤くなった背中に飛んで行き

真っ白な翼になったではありませんか。

 

「みんなみんな ありがとう。これでまた反物が作れます」

 

お雪ちゃんも娘たちも嬉しくて 

月の光の中で花のような笑顔になりました。

 


ギッタンバッタン ギッタンバッタン

 

今日も村には お雪ちゃんの機織りの音が鳴っています。

 

 

おしまい。

  




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ