NO.1 七川 冷 著 『クリスマスの労働者』
Merry Christmas,
儂は、サンタクロース271号じゃ。
隣にいるトナカイのブランと共にケーキの上に乗っている。
何故、ケーキの上にサンタクロースやトナカイの人形になりきっているかというと、
子供達が何人いてよい子で居たか、
また欲しい物やクリスマスツリーの位置が分かり、
音も無くクリスマスツリーの下にプレゼントが置けるからじゃ。
厳重な警備に悪戦苦闘しなくて済むのもよい。
例え、危険手当がもらえなくなってしまっても。
さて、誰もリビングにいないか確認したら
本物のサンタに戻り、クリスマスツリーの下に
プレゼントを置こうとしたら…
ない、三男のプレゼントがない…
このままでは、良い子にする事の喜びを感じなくなってしまう。
そんな事は絶対に避けたい。
そこで、ブランに命令して携帯電話を持ってきてもらい
それで、同僚の261号に連絡して協力してもらう事にした。
「まったく、何しているのじゃ、271号~。主任に怒られるぞ。」
と、261号は言いながらもクリスマスツリーに飾られている星から現れて
プレゼントを持ってきてくれたので事なきを得たかと思ったが、
突然、主任から儂の携帯電話にかけてきた。
「Hellow,This is SantClous No,1.Is this No,271?」
(もしもし、私はサンタクロース1号だ。こちらは271号で合っているな?)
「Yes,it is.」
(はい、そうです。)
英語しかうまく話せない主任は、相手が儂であると確認してから本題に入った。
「By the way,Aren`t you fogetting something? 」
(ところで、何か忘れていないか?)
その一言から、主任は儂の失敗を知っておられるとわかった。
英語で「戻ってきたら儂の部屋にあるプレゼントを取りに来い」と言って電話をお切りになった。
主任の事だから、絶対に減給は言い渡すだろうな。そのプレゼントをもらう前に…
けれど、例え元々雀の涙ぐらいの給料から減給されたとしても
儂等サンタを待ってくれる純粋な子供達がプレゼントに喜ぶ顔で
不満などいとも簡単に吹き飛ばしてくれるから仕事を辞められん。
子供達よ、来年も良い子でいるのじゃぞ。




