NO.1 七川冷 『波』
「先日、糸電話で隣の人と会話しあった事を覚えているだろう。何の為にやったか分かるか?」
と、昼休みが終わり少し腹も満たされ眠たくなってきた 4時間目の理科の時間に先生は僕を含める1年4組の生徒達に尋ねた。
先生の考えを知らない生徒はしーんと黙り込んでいる。
「僕達生徒が先生に好印象を芽生えつけるためですよね?」 クラス一のお調子者である関山君が迷解答を言ってみると、名門高校に通う為にすでに塾へ行っている子やそのお調子者の友人達を中心に大笑いしだした。
「関山君、評価に-を付けさせてもらうよ。真剣に考えて出た答えとは全然思えないから」
その一言を言った時に、チャイムが授業終了を告げた。
どうしても、答えを聞き出そうにも先生が何部かは忘れたけど顧問を務めているので 部活している場所まで行って質問してくるのは どうも恥ずかしくて、面倒くさいので諦めて帰宅する事にした。
別に中間試験や期末でもないので、ちょっとテレビ見たりゲームしたりして夜更かししてみると ・・・変わった子が現れた。夜更かしが原因で幻覚だろうと信じたい・・・っていうか信じさせてくれ・・・ ちょっとここ最近こんな生活が続いているからかな?僕は疲れているのかもしれない・・・ 何故か、目の前にあるそれは僕のささやかな願いを破壊するかのように体育館で立って・・・いや、浮いている。
「呼ばれてやってきました~、お伝え屋の美沙で~す。」
僕は、そんな物を生まれてから1度も呼んだ覚えがないけど・・・ 身長は132cmぐらいで秋らしく(?) 赤いワンピースを身に纏った少女のような子が目の前にいる。
「う、うん・・・っで、出来れば帰ってそして二度とこないで下さい。」
会ってそうそう酷いとは思うが、正直怪しすぎる子と夢であろうが現実であろうが関わりたくないので追い出そうとすると・・・
「ちょ、ちょっと~会ってそうそうそれはないでしょう~。話はちゃんと最後まで聞きなさいよ。」
「・・・内容によっては本当に追い出すから」 出来るだけ冷静に彼女の話を聞いてあげる事にした。身が持たせるために 彼女の話し方は語尾を無駄に伸ばすクセがあってイライラさせると思われるので簡潔にまとめると、
「僕の質問したい気持ちをたまたま学校の近くでうろうろ浮遊している時に聞いていたらしく無料で教えてあげようと思ったので・・」 ・・・で、今に至るそうだ。まぁ、予習してきたという事で先生に答えればもしかしたら成績が上がるかもしれないから まぁいっかと思った。 お金も取らないようだし、てか、今 無一文だから要求されても困るし・・・
「音の正体は、波なの。」
「波?」
「そうよ。なら今から私が床を思い切って踏んづけて音を出すから床に耳を当ててみて」 僕は彼女の言う通りにしてみると、床がふるえていた。 ふと、彼女は時計を見ると慌てだした。
「お、音は空気の振動が次々と伝わり、鼓膜まで響くから聞こえるの。じゃ、そろそろ仕事の時間になりそうから帰るね。」
目覚ましの音で目を覚ました。 どうやら、寝てしまっていたらしい・・・ だから、彼女との交流は夢だったという訳だろう。
彼女のおかげで音の正体が分かったけど、寝坊による遅刻が原因で先生に注意されてしまった。成績アップどころかダウンされそうだ。どうしてもっと早く目覚めさせてくれなかったのだろうか?僕の心の叫びを波として・・・彼女に伝わってくれるといいが。
<完>




