NO.1 七川冷 著 『薔薇の嫉妬』
赤い姉さんは、「愛」や「恋」や「情熱」で・・・
妹のピンクは、「感銘」や「上品」や「しとやか」で・・・
弟の白は、「尊敬」や「私はあなたに相応しい」・・・
っで、何で僕は「嫉妬」や「不貞」と花言葉があるんだ!!
「高貴」とか「優美」とか「誇り」とか言われて嬉しくなるような言葉を花言葉に付けて欲しいものだ!
*「・・そうやって姉と妹と弟に嫉妬しているから付けられたのも理由の1つかもね。」
僕がぼやいているのを聞いてそう言ったのはよく密を吸いに来る黒アゲハ蝶さん。
動けない僕を含める花達に色んな事を教えてくれる優しい近所のオバ・・いやお姉さん。
僕「だってさ、僕だけなんだよ。こんな否定的な言葉を持っているのは」
黒アゲハ蝶さんに悩みを打ち明けると黒アゲハ蝶さんは小首を傾げて考えながらこう言った。
蝶「確かにそうね~。でも高貴は無理じゃないかしら。」
僕「どうして?」
蝶「ほら、菊って知っているでしょ?」
僕は頷いた。
蝶「あの子は高貴と花言葉を持っているけど何故か必ずお葬式という悲しい行事に出ているからあの子が言っていたわ。」
僕「何て?」
蝶「花言葉が高貴と言うだけの理由なら高貴って花言葉なんていらない。喪主があくせくと泣きたいのを我慢して動くのを見るのはつらいし、お坊さんのお経が涙を誘っているように聞こえて我慢できそうにないからって言っていたわ。あんたはそんなの平気?」
僕は、自分が高貴と花言葉を持っている菊に嫉妬していた事を思い出して自分を責めたと同時に菊に謝りたくもなった。
蝶「それに弟切草という花はね、昔、鷹の傷を治す秘薬として弟切草を使っていた鷹匠がいた。けれど弟切草のことを誰にも秘密にしていたの。けれどある日、鷹匠の弟が草の事を他人に話してしまってそれを知った兄が弟を殺してしまったの。その時に弟の血潮を飛び散って付いてしまったと言うお話が名前の由来でもあって、迷信や恨み、そして敵意と花言葉付いた訳よ。」
僕の知らない花に同情した。そして、まさか自分の花言葉の由来もそんな怖い事が由来しているのではないかと思って黒アゲハ蝶さんにおそるおそる尋ねた。
僕「・・・じゃあ、・・・僕のは?」
蝶「あなたのはね・・確か、ローマ帝国時代・・・じゃわからないわね。大昔に皇帝という偉い人の色なの、黄色は。だから、弾圧時代を連想するあなたの色に否定的な言葉を付けたの、人間が嫉妬や不貞と。それがあなたなのよ。」
僕は、どう反応すれば分からなかった。
すると、黒アゲハ蝶さんは言葉を続けた。
蝶「あなたは、花言葉が否定的な言葉で嫌だとか言っているけどほとんどは調べないと分からないから大丈夫よ。誰にも負けないように強くて美しく咲いていればいいのよ。」
その言葉に感動してありがとうと涙を溢れそうになるのをグッと堪えてお礼を言った。
黒アゲハ蝶さんはどういたしましてと言ってから次の花の蜜を吸いに行った。




