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第21話 チョココロネは穴の方から舐めていく派です。(別に深い意味はないよ!)

 どうも。十波バスターズ一員(というか現在はリーダー行方不明ですが)のふゆいです。知っている方がいればそのまま名前を覚えておいてください。何年か後に自慢できるでしょうから(笑)

 まぁくだらない夢物語は置いておいて。

 僕で一応一週目が終了です。二週目に誰が来るかはまだ未定ですが、皆さん魅力的で素晴らしい方ばかりですので、期待を胸いっぱいに膨らませて楽しみにしておいてください。おそらく面白すぎて学校や会社を休んでしまうでしょう。休む理由は八月病ですがね!

 それでは締めの第二十一話、お楽しみください。





 高校生活開始から約一週間。

 昼休みになり、俺はここ一週間で割と仲良くなったクラスメイト達と共に弁当をつつき合っていた。(数名は購買のパンであるが)


「おー、知識の弁当、なんかうまそうだな! プロが作ったみたいだ」

「そ、そうかな? 一応僕が自分で作ったんだけど……」

「マジで!? 料理できるのか、すごいな!」

「う、うん。和・洋・中、一通りはね」


 まだまだ未熟だけど、と言って頭の後ろをかく知識。いいな、料理。俺も始めてみようか。……以前挑戦した時に錦糸卵が油揚げになってしまったが。


「冬威殿は料理できるのでござるか?」


 と、持ち主不在の隣の席でおにぎりをもぐもぐと頬張りながら、金髪似非忍者の如月アルザが質問してくる。出席番号の関係上近くの席となったコイツだが、意外と気のいいやつで結構仲良くさせてもらっている。口調がなぜか忍者言葉なのは理解できないが……てか、なんで金髪なのに忍者なんだよ、アル。

 俺は苦笑いしながら明るく否定した。


「あはは、俺は料理できねぇよ。お袋が手伝ってくれればある程度は作れるんだけど……一人で作るとなると、食材が化学反応起こして未知の物体が完成しちまうんだ」

「なんと……すでにそのような妖術すらも体得しているのでござるか……流石は冬威殿。油断できぬお方でござる」

「……あー、もうそれでいいわ」


 アル、やっぱりお前は世間一般から激しくずれた思考の持ち主だと思うよ。

 とりあえず、隣で俺に謎の羨望を抱いている似非忍者は放っておこう。これ以上何か言うと逆効果だろうし。


「ふふっ……如月君と那家乃君って、面白いですね」


 と、俺とアルが漫才しているところに、柔和で清らかな笑い声が届いてきた。茶色のショートカットの美少女。儚く、そして脆そうな雰囲気をしたその少女は口元に手を当てて上品に微笑んでいる。うぉ……なんかすっげぇ似合ってる……お嬢様みたいだ。

 俺はその所作にテレを覚えながらも、なんとか体裁を保ち続ける。


「いやいや、それほどでもねぇって。俺はあくまでも一般人。こいつは西洋かぶれの忍びだぜ? 面白いのはアルの方。俺はそれにツッコミいれているだけさ」


 俺のその言葉に少女――――村野時雨は更に深く笑う。入学当初は他人と距離を置いていた彼女だが、ここ一週間で随分と心を開いてくれたようだ。俺としても、こんな美少女と知り合いになれるのは嬉しいし。まぁ良かった良かった。

 二人して笑う俺と村野。しかし、一人取り残されたアルが頬を膨らませながら先ほどの台詞に食いかかってきた。


「む。その台詞は聞き捨てならんでござるよ、冬威殿。拙者はれっきとした甲賀流忍者の末裔。たとえ髪の毛が金髪であろうが、一流の忍者でござる。それゆえに、拙者はなぁんの取り柄もない冬威殿を少しでも面白くしてあげようと精進しているのでござるよ」

「(カチン)誰がなんの取り柄もない地味草食系男子だってぇ……?」

「おっとこれは失礼。その二つ名の前に【ヘタレ弱虫】と付けてくださるか? 先ほど付け忘れてしまったのでござる」


 …………。

 ……ほほぉ。こいつぁ……おもしれぇ。


「ちょ、ちょっとやめようよ二人とも。ここは教室だし……なにより、僕は友人たちが喧嘩するところなんて見たくないよ」


 緊迫する雰囲気をなんとか諫めようと、一年B組の良心である知識があたふたと説得を始める。いつのまにか村野も知識側についているようだが……まだまだ甘いな、二人とも。

 ニィッと口の端を歪める。


「心配すんな二人とも。これは喧嘩なんかじゃねぇ。……なぁ? アル」

「そうでござる。これはそんな低俗な遊戯じゃない。そもそも、拙者と冬威殿の仲でござるぞ? 喧嘩なんてするはずもないでござる」

「そ、そうだよね。那家乃君と如月君が喧嘩なんてするはず――――」


「「これは喧嘩じゃない。お互いのプライドをかけた、命を賭した決闘だ!!」」


「なお悪いよ! どうして決闘!? 違うよね!? 僕が言いたかったことはこんなことじゃないんだよ! 友人同士で争うことが、そもそもおかしいんだって!」


 知識がなにやら涙目で叫んでいる。おかしなことを言うなぁ、知識は。

 どうやらアルも同じことを思ったようで、俺の方に頷きを返してきている。


「知識、お前みたいな平和ボケ野郎は知らないだろうがな」

「え? なんで僕このタイミングで罵倒されてるの? おかしいよね? 僕、なにもしてないよね?」

「遥か昔の戦国時代。日本中に散らばっている武将たちは、己が日本国を支配せんが為に争いを繰り返していたんだ」

「うん、それは知ってるよ。でも、今の話に関係ないよね。君たちが決闘することに、戦国武将は微塵も関わってないよね」

「彼らはお互いに殺し合い、讃え合い、そして、意地を分かち合った。戦いの先に手に入れることができるなにかを夢見て、男達は戦い続けたんだ」

「……そうでござる。つまり、そこから導き出される結論は、一つ」

「なんかもう僕の言葉聞いてる? ねぇ、二人ともお願いだから聞いてくれないかな?」

「もう無理だと思いますよ、零崎君。なんかヒートアップしてるみたいですし」


 精神的な疲労を見せる知識。傍らでは村野が「まぁまぁ」と慰めている。B組の清涼剤である二人が仲良くしている光景は、それはそれで心温まる光景ではあるが……今は、そんな場合じゃない。

 俺とアルはお互いを見据え、それぞれの思いを瞳に宿し、確固たる意志を持って、言い放った。


「「俺|(拙者)達は、戦ってこそ分かり合えるのだと言うことだ(でござる)!!」」


「……うん、もうなんかいいや。勝手にしなよ、二人とも」

「よっしゃ! 知識の許可を貰ったぞアル!」

「ナイスでござる冬威殿! 早速拙者は立会人をお願いすべく、この手のエキスパートである剣坂杏子先輩のところに行ってくるでござるよ!」

「おーけー! そんじゃ俺は十波先生のところに行って会場を調達してくるぜ!!」


「「…………はぁ」」


 全力ダッシュで教室を出ていく俺達の耳に、二人の本気のため息が届いてきたのは言うまでもない。






                 ☆






 十分後。

 会場と立会人、その他諸々を準備し終えた俺達は満足げな表情で相対していた。その周囲では数百人の観客達が思い思いの歓声を上げている。


「ってか……なんで俺がこんなことしなくちゃいけねぇんだ? 面倒くさい」

「まぁまぁ、そんなこと言わないでくださいよ剣坂先輩。こういう荒事、好きでしょう?」

「そういう問題じゃねぇんだが……ま、いいや。お望み通り審判してやるよ」


 うん、相変わらず優しい先輩で何よりだ。

 

『冬威ぃ~、頑張ってー!』

「おー、七瀬じゃないか。応援に来てくれたんだな」


 準備体操をする俺に、白と赤のグラデーションという珍しい髪色をした少女が激励の声を送ってくる。先日、廊下でぶつかるというなんとも古風な出会い方をし、会ったその日の放課後に告白してきたという超行き当たりばったり少女、七瀬菜奈だ。背は百五十センチと小さいものの、身体の真ん中で存在を主張する双球は人並み以上だ。ていうか、マジパネェ。

 

『頑張ってね、アル。あんな草食系に負けたら駄目よ?』

『分かってるのでござるよ、流奈。コテンパンにしてくるでござる!!』


 俺の反対側では、我が宿敵のアルが美少女の許嫁、宮院流奈とラブラブな雰囲気を醸し出しつつ戦闘前のインターバルに入っている。心なしか、背後の男性陣から殺気が出ているように感じるが……気のせいではあるまい。


『オラァッ! てめぇ負けたら承知しねぇぞ那家乃ぉ!!』

『独り身の意地見せてやれや!』

『リア充を殺せっ! 滅殺じゃー!!』

「……うん、なんか俺って最早あっち側なんだな。独り身は認めるし、モテないのも重々承知だけどさぁ……」


 ……なんか自分で言ってて悲しくなってきた。い、いいもんね! 告白されたから勝ち組だもんね! まだ返事はしてないけど、もっと仲良くなったらしっかりと返事するんだから、負け組なんかじゃないやい!

 そんな風に気合を入れる俺。しかし、件の七瀬は、その無邪気さゆえか無意識のうちに俺を地獄へ叩き落とす言葉を吐き始めた。


『大丈夫! 私の心から大好きな冬威なら、絶対に勝てるから‼ 仮に負けても抱き締めてあげるよ‼』

『おい、聞いたか野郎ども』

『あぁ、この試合が終わったら死刑だな。あの野郎非リアの誓いを破りやがった』

『雄二、どうする? 武器と十字架の用意ならできてるよ?』

『よし、それなら試合終了まで待機。終了したら即であのクソッタレを捕獲しろ。俺達【異端審問会】の恐ろしさをあの一年坊主に思い知らせてやるんだ』

『『『ヒャッハア! レッツ・パーリー!!』』』


 マズい。一瞬で俺の命がピンチだ。


「よし、じゃあお互い並べー。試合開始すんぞ」

「待ってください剣坂先輩! このままじゃ多分試合で勝っても生命活動的に敗北です!」

「何を今更。それに、俺だってお前を殺る組だからな?」

「畜生全員敵か!」


 絶望した! 鈴音学園生徒の腐った根性に絶望した!


「それでは、参る!」

「くっそぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 こうなりゃヤケだ! やってやるよぉおおおお!!

 

「それじゃ、試合開始!」


 剣坂先輩の掛け声に応じてアルが木製のクナイを構え突進してくる。いくら似非でもあいつは忍者。どんなトリッキーな戦いをしてくるかわかったもんじゃない。

 俺は武器棚に何故か並んでいるデッキブラシを取ると、なんのためらいもなく一気に引き抜いた。


《おぉーっとー! 冬威選手箒の柄を構えたー! まさか棒術で戦う気か? ちなみに申し遅れましたが、私実況の十波悠真です!》

《解説の仲島智香なかじまともかよ。三年B組に所属しているわ。さて、彼は一般人にしてはやけに落ち着いてるわね。武術の経験でもあるのかしら?》

《生徒名簿のプロフィールを見る限りだと、どうやら空手とキックボクシングをやってたようだぞ。でも、そんな習い事程度でアルちゃんに勝てるのかはわからないな》

「拙者はアル『君』でござるぅうううううう!!」


 十波先生! なに余計なことを!

 若干涙目になったアルは、クナイを操り四方八方から俺を攻めてくる。さすがに忍者を自称しているからか、クナイの扱いはピカイチだ。太刀筋が全く見えない。やばいっ……このままじゃ、負ける……!


「こうなったら……アル! お前には特別に我が奥義を見せてやる!」

「むっ! お、奥義でござるか!?」


 俺の叫びに、案の定目を輝かせながら攻撃の手を止めるアル。ふっ、他愛もない。

 

《奥義? なんと冬威選手は奥義を持っているようだ! とても一般人とは思えないが、そこがここ鈴音学園の怖いとこでもあります!》

《まー殺し屋やら死刑囚やらがいる学校だからね。奥義の一つ二つ持ってても不思議じゃないわ》

《さぁ、果たしてどんな奥義が披露されるのでしょうか!》


 まあまあ、そう焦らないでくださいよ十波先生。

 期待の面持ちで俺を見守る観客達に手を振りながらも、俺は棒を脇へと投げ捨て、両手を地面へと着かせ、そして盛大に頭を下げた!


「この勝負、俺の負けです!!」

『『『…………』』』

《……えーと……アルザ君の勝ち……ということで、いいのかしら?》


 一騎打ちで土下座という前代未聞の行動を起こしたことで、客席が水を打ったように静まり返る。

 そんな中、冷静にもアナウンスを続ける仲島智香先輩の声だけが、俺の脳裏に深く刻み込まれた。






                   ☆






「冬威……いくらなんでもあそこであの返しはないと思うよ?」

「スマン、七瀬。いくらなんでもあの戦力差は圧倒的過ぎたんだ」


 鈴音学園の保健室。現在俺は七瀬に連れられてそこで手当てを受けていた。これといった外傷はないのだが、念のためにというやつらしい。

 俺の右腕に湿布を貼りながら、七瀬が溜息をつく。


「まったく……ま、まぁ、冬威に怪我がなかっただけでもいいとするわっ」

「? あ、ありがとう?」


 なんでコイツは顔を赤くしてそっぽをむいてしまうのだろうか? 風邪か?


「…………なんでもないよ、この鈍感男め」

「え、なんで急にキレてんだよ」


 なぜ俺は告白してきた美少女に理不尽な怒られ方をしているのだろうか、甚だ疑問な所だ。

 ま、いっか。


「そんじゃ、さんきゅーな。七瀬」

「…………菜奈でいいよ」

「はぃ?」

「名前呼びで良いって言ってるの! もう、女の子にここまで言ってもらってるんだから、大人しく従いなさいよ!!」

「ちょ、わかった! わかったから胸ぐらを掴むな‼ ……菜奈。これでいいか?」

「ッ! ……えぇ、合格よ♪」


 お次は機嫌が良くなりやがった。いったいなんだってんだよ。

 ま、とりあえず手当も終わったことだし、生徒会の仕事に行くとでもしますかね。






                 ☆







「遅くなりました……」

「あら、やっと来たのね。那家乃くん。随分と遅かったじゃない」

「久寿米木副会長……さっきの試合、見てたんでしょ? それなら察してくださいよ」

「あら、だからこそではなくて? あんなイレギュラーな事件を起こしたのなら、なおさら早く来て仕事を手伝うとか雑務に取り掛かるとか――――」

「ごめんなさい。明日からは全力で急ぎます。副会長」

「よろしい」


 そう言うと腰に手を当てて俺を見下ろしてくる副会長。美人という肩書がぴったりなこの先輩の名前は【久寿米木くすめぎゆめ】さんだ。基本的には優等生で、先生からも生徒からも好印象を持たれている。ま、だから副会長とかやってるんだろうけど。

 ちなみに生徒会会計なんぞをやっているのは、たまたま入学式の日に久寿米木先輩とエンカウントし、いろいろあって推薦させられてしまったというなんとも身勝手極まりない事情のおかげだ。……俺の選択権って、どうなってんだろ。

 鞄を置きつつも、生徒会室を見渡して一人呟く。


「それにしても、いつも集まりが悪いですよね。この生徒会」

「まぁ、会長からして自由な人だし。他の役員も基本的には校内を駆けずり回っているからね。デスクワークで済むような役職なのは私や那家乃君しかいないのよ」

「トラブルの数だけは他校の比じゃありませんからね……」


 超能力者とか魔法少女とか、人外の物が集結しているためか、他所に比べて騒動が多い気がする。ツンツン頭がビリビリ娘に追いかけまわされている光景なんて日常茶飯事だし。


「ま、そんなわけで生徒会室には私達しかいないってわけ」

「会議が成り立たないですけどね。このままだと」

「別にいいんじゃないかしら? 私は自由な気持ちで過ごす放課後っていうのも結構好きよ。何事にも縛られない感覚っていうのがね。……ま、世の中には望んでもないのに他人に縛られてしまう可哀想なショタっ子もいるのだけれど」

「なにか言いましたか? 副会長」

「なんでもないわ。コッチの話よ」


 そう言うと手元のパソコンに意識を向ける副会長。普段と変わらない様子だが、どこか寂しそうに笑っているような気がした。

 まぁ、俺みたいな部外者がわざわざ踏み込む意味もないだろう。この学園には俺が思っているより複雑な事情を抱えた奴らが多いみたいだし。一般人の仕事は面倒事に介入することじゃなく、彼らが平穏な日常に戻ってくるのを笑顔で待ち続けることなんだからな。

 そんなことを思っていると、不思議と口元が綻んできた。なんだよ、やっぱり俺は傍観者向きなんじゃないか。


「なにを笑っているの? 那家乃君」

「いえ、なんでもありませんよ」

「そう? 変な子ね」


 「そんなことより、ちゃんと仕事しなさいよ?」と、副会長はなんでもないような表情で、俺を注意した。


 私立鈴音学園。

 平凡な一般人から人外生物まで集まるそこでは、いつも愉快な人間たちが楽しい日常を繰り広げている。




 次回からは二週目です。

 お楽しみに♪

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