第17話 友達探し by龍輝
遅れてすみません!
龍輝です、色々駄目っぷりが発揮されているでしょうが、なるべく皆様のキャラが再現、というより自分のキャラをメインにして出した感じが大きい感じです。というかほとんどだせれていない気が……大丈夫かな(汗
それはいつの日かの放課後のことである。
学校のチャイム音が辺りに響き、わいわいガヤガヤと足早に学生が平和的に下校したり青春を謳歌していた。
色々あってこうなってほいっ見た目はこの学校の学生ですっ! な状況に合わされた高梨雅也はひどくげんなりムードで、頭を抱えてベンチにすわっている。
高梨雅也。
今宵もまた誰かを殺して誰かに負けて誰かを貶める、天の邪鬼で殺人鬼で雑魚キャラモブキャラ(自称)である。
そんな、所謂危ない人物特級Aな彼がこんな平和そうな場所にいる理由は単純に、そして明快で『言われた』からである。自発性がないとも言うが。
頭を抱えていた両手をベンチの背もたれに回して、頭を上げて空を見た。
(友達作り……ねぇ……?)
嘘吐きならぬ嘘憑きな彼にとって、それはどれだけ困難なことか。とにかくとってつけた内容を除けば、高梨雅也に課せられた任務(?)はこれである。ちなみに期限は無し。
そも、彼に任務を課せた者の命令を無視したっていいはずなのだ。
まだ一般人側にいる高梨は裏でどんなことが起ころうが知らない。が、法律的に言えばこれは労働基準法で罰せれるはずなのだ。
(そうだ訴えよう)
とは思えない。
高梨にはコネと呼べるものがおらず、いても食っちゃ寝してこんなワケわからない命令を渡すようなペタペタ幼女――
――スレンダー体型でちびっ子属性持ちな上司しかいない。決して脅されたわけではない、はず。
ともあれ、法律は友達さ! と宣言したところで「バカめ、其奴は儂が送った刺客ぞよ」となってあーたらこーたら、最終的に昼ドラな展開に持ってくのが限界だろう。
高梨雅也の人脈は低くそして適応能力が果てしなく、そしてなにより残念な人間なのだ。
そんな自称残念な彼は、重い腰をあげて学校の見取り図で言う中庭に続く道を歩いた。
そこで足を動かしながら某上司様から頂いたありがたいお言葉からでたアドバイスを思い出す。
まずどこかの電波に感化でもされたのか、友達ポイントなるものを脳内生成する。
却下したいところだが、友達と呼べる者は居ても本当に自発的に作ったことがない彼は、一応作ってみた。
が、作ったはいいが恥ずかしいのと一々課すのが面倒なので時々の状況で課すことに。ちなみに一〇ポイントで友達かな?と考えるレベル。
が、そんなアドバイスくそ食らえと言わんばかりに放棄。というか捨てた。
何が悲しくてそんな妄想にいそいそしなくちゃならん、といった溜め息をついて歩みを早める。
決して初心ではない。
そんなシャイボーイな彼は、ふと制服の内側からあるものを取り出した。
彼にとって長年相棒を勤めた、一振りのナイフであった。
高梨はそれの名称は知らないが、とりあえず隠しやすくて扱いやすいナイフという認識だったことに代わりはない。
辺りに殺伐とした空気が広がる。が、当の本人は暢気に補助に使用してるナイフを三本追加して取り出していた。
計四本。
それをこれまた何かを魅せるように、あるいは直球にジャグリングと呼べばいいが一本一本投げて捕らえて投げる。
取り出したナイフは綺麗に円を描きながら正確に高梨の手元に戻っては空に浮かび上がっていた。
浮かんで、浮かんで、浮かんで浮かんで――――飛ぶ。
「おろッ!?」
愛用してるナイフを除いてとある並木の太い枝に向かって投擲。その結果は妙な悲鳴からわかった。
「さっきから見るに耐えないぜ? 僕を監視するならもっと鍛えてから来な」
普段もっと口調に大人しさがある高梨だが、自分が狙われているという状況ではいささか違う。嘗められては負けなのだ。
そして、枝から落ちて綺麗に着地した金髪の青少年? は警戒心を傍目から見ても分かるように滲み出しつつ腰を下げた。
そんな警鐘をガンガン鳴らしている青年を相手に、ペン回しをするようにナイフを弄びながら高梨は問う。
「その格好……なに忍者なの? 最近はそんなやつが多くて困るなぁ。『忍者名乗るなら表舞台に立つな、真っ正面に居座るな、常に潜み忍び隠れ、敵の隙を突け』というのが僕の持論だが、お前は一体なんなんだろう――」
金属と金属がぶつかり合う音が辺りに響いた。もう、彼らには野球部の掛け声も人々の話し声も――平和という名の世界が一切無くなった。
「――なぁ?」
余裕の笑みで、高梨は最後にそう残した。
ギャリンと、ナイフと短刀が響く鈍い音が開始の合図だった。
金髪の青年は短刀を二本取り出し、持ち方を変えては連撃連舞といった数多くの斬撃を繰り出す。ほとんど突きの連続と言っていいその攻撃に、高梨はナイフ一本で受け流し、全てを捌ききる。
突く避ける斬る捌く。簡単に言えばそれの応酬だが、実際は言葉には出来ない。
裏庭にはカカカカカカカッと数えきれない金属音を占めていた。
そして、最後に大きく金属音をかき鳴らすと両者共に下がる。
「……やるでござるな、少々見くびっていたでござるよ」
「そっちこそ、他称自称忍者を言うほどには動きがキレてる……なかなか面白いな」
休憩を挟みつつ、高梨は右手に持つ愛用のナイフとは別に、三本のナイフを左手に出現させた。それに対し、金髪の青年は驚く。
「いつの間に……」
「生憎馬鹿みてーにナイフ翳していた訳じゃないからな」
そう、そのナイフは先ほど投擲されたナイフだったのだ。
地面に落ちているもの、木に刺さっているものを青年に気付かれずに拾い、そして出現させる。道化師と名乗るほうがどれだけいいだろうか。
「…………アルザ」
「ん?」
「拙者の名でござるよ、武士とは名を語って決闘すると教わったでござるからな」
その回答、或いは宣言に高梨はたじろぐ。
その馬鹿みたいな宣言は、高梨が唯一自分で守っているルールに触れているものだった。
あれほど忍者についてあれこれ言っていたが、実を言えばあの言葉は自分をもあて嵌めていた。
自称他称殺人鬼。殺人鬼は人を殺す冷徹で冷酷で残忍な畜生なのだ。断じてヒーローごっこの悪役で収まる役柄なのではない。
彼は、高梨雅也は他人の重みを、奪った命を抱え込んで生きている。それが人を殺すということに対する責任、義務である。
殺したくないか? と問われれば答えはノーだろう。嫌々ではなく好んで人を殺しているのだから。
だが、それでも一七歳の高校生らしく『やっちゃいけないこと』という自覚はある。
やめられない、自分という枠組みが殺人鬼という大元で出来上がっているのだから、
でも、しかし――
「……馬鹿かお前。だぁーくそ、面倒くなってきた」
そう言うと、高梨は四本のナイフを制服の内側にしまってしまった。
その行動に、青年――アルザはキョトンとする。
「降参だ、焼くなり煮るなり好きにしてくれ……したら精一杯の抵抗するけど」
一方、参ったといった態度が全く感じられない空気を醸し出す高梨。
「……拙者以上に面白いでござるよ、えーと……」
「高梨、とでも呼べばいい」
「では失礼して、高梨殿は面白いでござるな」
「言い過ぎだからな? 何につぼったんだよお前」
「アルザでござる」
「ん?」
「アルザでござる!」
ピシリッと固まる高梨。
その強気というより強引っぽい発言の裏には、つまり――
「え、出会って数分戦い合った相手に親密な関係になりたいのかお前?」
かなり回りくどい言い方だが、言うなれば、呼び合うほど仲良くないだろ、と言いたいのだろう。
「これが戦友でござるな!」
「むしろライバルだろ……」
「むっ、じゃあ一緒に忍者になるでござるよ」
「やだよ、何すき好んである意味イタイもんにならないと駄目なんだよ」
にんにん! と息巻くアルザに、高梨は溜め息をつきつつ空を見上げた。
はてさて――――
(これは友達と言えるのだろうか?)
学校の屋上、綺麗なポニーテールを風に流す一人の美少女が物騒なライフル片手に、ある一点を見詰めていた。
剣坂杏子。
暗殺者兼魔族。
彼女が見ていた先には、高梨と如月アルザがなんやかんやと騒いでいた。
「……ふぅ」
なに対しての溜め息なのか、剣坂自身よくわからなかった。が、少なくとも緊張感ある溜め息ではない。
「まあなんにしても何事もなく終わって良かったじゃねーか」
「何がさ?」
「何ってそりゃあ知ってるやつが怪我しなくて――――て、『てめえ』いつの間にいやがった!?」
謎の高校生高梨雅也。
その正体を知るものはほとんどいない。ただ剣坂にはなんとなく、知っているように感じたのは気のせいだったのだろうか――。
一方で、
「――――で、いい加減解放してくれるとありがたいんだけど」
「駄目に決まっとるやろ……何学校に不法侵入しといてとんずらここうとしとんのや!」
生徒会委員と教師に囲まれる一人のバーテンダーがいたとかいないとか。