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第10話 自由(きまま)な明日に

はじめまして!

十波悠真です!

よろしくお願いします!


『やらないか?やらないか?やらないか?やらな──』


ガチャン。


不気味な音声が数秒流れた今現在の時刻は平日午前8時。

平日この時間に目覚ましをセットしている男の名は十波悠真。

目覚ましに手を伸ばして止めたのはいいが、そこからピクリとも動かない。


十波

「……ねむねむ」


動いたと思えば、腕を布団の中へ戻して寝返りを打つ。

学校の教職員である十波の平日はもちろん仕事。

つまり今日も学校へ行き、5歳~8歳年下の生徒に勉学を──


『やらないか?やらないか?やらないか?やらないか?やらな──』


ガチャン。

電池を抜くかしない限り、半永久的かつ強制的にこの目覚まし時計はセットした時間に鳴り響く。

十波は半目状態で渋々電池を抜いた。

これによりもう一度寝ようという意欲はなくなる。

これがホントの目覚まし方法であ──


『やらないか?やらないか?やらないか?やらないか?』


十波

「………」


隣の家から聞こえてくる同声アラーム。


このアパート…、変人は一人じゃない…。









~~~~~通勤道~~~~~







さぁ、今日も頑張ろう。

スーツに着替えて通勤用の鞄を持ち、アパートを出て勤務先へ。

目的地は俺の家から徒歩一分でたどり着ける公立高等学園、鈴音学園。


生徒A

「おはようございます、十波先生」


十波

「チーッス」


生徒B

「十波先生、おはようございます」


十波

「おう、おはよ」


家と学園の距離が近すぎるため、アパートから出ると鈴音学園の生徒を大勢見かける。

俺に気づいた生徒達は挨拶を交わしていった。


清水

「おはようございます、十波先生」


十波

「おう、清水。おはよう」


清水吹雪。

高校生で現役グラビアアイドルをしているマドンナ。

グラビアなだけにナイスバディ&スマイルは抜群。

同学年だけでなく上下級生の多くの男達を虜にしている。


十波

「清水、今日十波バスターズ部で新しいミッションやるんだけど来れるか?」


清水

「あー…すみません放課後はグラビアの撮影あるんですよ」


十波

「マジかよ…」


清水をえさにして男連中を釣ろうと思ったのに…。


清水

「未だに部員は零なんですか?」


十波

「ああ…、去年は女子が一人だったんだが、卒業してしまったしな」


清水

「一緒にラジオしてた人ですよね」


十波

「俺一人じゃラジオも十波バスターズ部も続けても意味ないからなぁ…」


十波バスターズ部。

それは様々な遊び、ミッションを生徒達がこなしていき、“友情”“思い出”といった一生の宝物を作ることを目的とした部活であるが…。


清水

「うちの学校は真面目な人多いもんね。勉学かスポーツに本気な人ばっかりだから、十波バスターズ部に入る人はいないのかもしれないですね。それかもうひとつの理由か」


十波

「もうひとつの理由?」


清水

「自覚あるかどうかは知らないですけど、十波バスターズラジオは生徒から評判は良かったんですよ?でも入部するとなるとラジオで面白いこと言わなきゃとかプレッシャーかかっちゃうんですよ。だから入る人ってよっぽど少ないと思いますよ?」


勉学、スポーツに真面目じゃなくて面白いことを言う自信のあるやつか…。


十波

「そんな奴この学園にいるとは思えないけどな…」


清水

「とりあえず探して体験入部させてみたらどうですか?このままじゃ進まないですし。でも貴重な放課後を使ってまでくる人も少ないかもしれませんが…


十波

「……体験入部……放課後はだめ……」










~~~~~一年A組~~~~~







浅井先生

「え~、このXの値に2を代入して、そのあとにこのYを…」


実月

「……はあ…数学退屈だなぁ…」


ガラッ。


十波

「おい実月!遊ぶぞ!!」


実月

「へ?」


俺は自分の受け持ちであるA組に行き、従妹であり俺の生徒でもある名を呼ぶ。


実月

「お、お兄ちゃん…?」


浅井先生

「ちょっ!?十波先生!?授業中ですよ!?用なら放課後に…!」


浅井先生はチョークを置いて俺のところに駆け寄ってくる。


十波

「放課後じゃだめなんだよ!とりあえず実月を借りる!」


浅井先生

「校長が許可するわけないじゃないですか!授業するので早く出ていってください!」


十波

「授業をする?俺が遊びたいって駄々こねてるのに授業中するってのか?うそだろおい…?冗談だろ…?」


浅井先生

「冗談は先生のほうじゃないですか!授業中に生徒連れ出して遊ぶ先生がどこにいるんですか!?」


十波

「俺が遊びたいのに無視して授業するなんて常識疑うぞ…」


浅井先生

「疑われてもいいですから早く出ていってください!」


浅井先生はぐいぐいと俺の背中を押して廊下に追い出そうとする。


十波

「ち…わかったよ…」


浅井先生

「ほっ…」


諦めのついた俺を見て安心したのか、浅井先生は安堵のため息を漏らした。


十波

「なんてね」


俺はそんな簡単に引き下がるバカではない!

※こんなことをしている時点で馬鹿だよ。


十波

「隙あり~~!」


浅井先生

「え?あ、ちょ…!」


浅井先生の脇をくぐり抜け、お目当ての生徒、桜実月の元へ走り寄る。


十波

「行くぞ!実月!」


実月

「え!?で、でも授業が…!」


十波

「なぁぁにィ!?そんなに俺と遊びたいってか!?しょうがねえなぁ!」


実月

「言ってない言ってない!誰もそんなこと言ってないから!!ってキャーーーーー!!!!」


浅井先生

「誰か十波先生を止めてー!」


「実月!!」


桜実月の彼氏である佐藤涉が席を立ち上がり、俺たちの前に立ちふさがるが、


十波

「ちょうどいいや。お前もこい」


「ぎゃー!!」


涉も一緒に連れ出して、俺は次の現場へ向かう。







こうして俺は計五人を拉致して一箇所の教室に集めた。


一人は俺の従妹である1年A組の佐倉実月。


一人は桜実月の彼氏である同じく1年A組の佐藤涉。


一人は今朝話したグラビアである2年D組の清水吹雪。


一人は2年A組の剣坂杏子。


一人は3年A組の久寿米木夢。







俺はそいつらの前でこう言った。






十波

「ようこそ。十波バスターズ部へ」


拉致された者たち

「………え?」


十波

「というわけで遊ぼう。お前らどうせ暇だろ??」


「いや俺たち授業していたんだが…」


実月

「ていうか何でこの五人なの?」


十波

「わからないか?」


実月

「ふぇ?」


剣坂

「………(まさか…俺が魔族の姫ってバレてる…?)」


ク寿米木

「………(私が吸血鬼ってことは知らないはず…!)」


清水

「………(昨日ツイッターで“おーなーかーすーいーたー”ってつまんないことつぶやいたから?)」


十波

「気分だ」


剣坂

「………(ああ、こいつがバカでよかった)」


久寿米木

「………(びっくりした~…)」


清水

「……(よかった。ツイッターじゃなかった)」


「っていうかこんなことして大丈夫なのか?あとで問題になるぞ?」


涉が心配そうな表情を浮かべながら質問する。


十波

「大丈夫だ。校長も了承している」


「なんでだよ…」


実月

「まあでもいんじゃない?授業つまんないしこのまま遊んじゃおうよ!」


実月は開き直ったのか、サボることを勧める。

美月は成績は良いが、そこまで堅くはない。

だからこういう提案には賛成する派と分かっていて連れてきたのだ。

実月にベタ惚れの涉はこれに逆らえず、


「み、実月がそう言うんならいっか…」


あっさり承諾した。

これも作戦のうち。


剣坂

「俺は元々真面目に受けるタイプじゃないからさ。別にいいよ」


続いて剣坂杏子も長い髪を揺らしながら頷く。

そして現役グラビアの清水も、


清水

「私も遊びたいです♪」


久寿米木

「ええ…!?」


簡単にこっち側につく。

残されたのは生徒の中で唯一3年生である久寿米木だけとなった。


十波

「お前はどうする?」


久寿米木

「……う」


少し迷いを見せるが、


久寿米木

「み、みんながやるならやります…」


参加する気になったようだ。

赤信号、みんなで渡れば恐くないとはよく言ったものだ。


十波

「よし、じゃあ今日限りの十波バスターズ部!初遊びは……“一問一答”だ」


剣坂

「それってラジオでしてたやつ?」


十波

「ああ、そうだ。一年の実月と涉のために説明しておこう。あなたの夢を叶えるコーナーとは一つの質問に面白おかしく答えていく遊びだ」


実月

「???」


美月が頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。


十波

「とりあえずやってみようか。俺が質問のお題を出すからお前らは手を挙げて答えていけよ~」


五人を前の席にそれぞれ座らせて横に並ばせる。

俺は教卓の前に立ち、チョークを手にして黒板にお題を書いた。


十波

「まずはこれだ」






“高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%?”






十波

「さあなにがだ、答えろお前ら!」


清水

「はい!」


清水がしょっぱなから元気よく手を上げる。


十波

「よし清水!高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%?」


清水

「パンをくわえた美少女に出逢うまで曲がり角を何度も曲がる!」


十波

「夢見てるんだね~。ブパンくわえたブサイクじゃきっと納得しないからノーカウントするんだろうね~そいつは遅刻してもいいからもうずっと夢見させてあげよう?」


剣坂

「はい」


「よし剣坂!高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%」


剣坂

「フ〇ーザの戦闘力を覚えている」


十波

「たまにね!たまにいるよねそんなやつ!お前そんな細かいこと覚えてんの!?みたいなね!」


「はい!」


十波

「高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%?」


「深夜アニメを見逃したら次の日学校を休む」


十波

「わかるわー!それ俺もやってたわー!え?いつのまにか寝てた?やべアニメ見てねーよ萎えるわー!よし、今日は仮病で休もう。みたいなねー!」


実月

「はい!」


十波

「よし、実月!高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%」


実月

「実は吸血鬼!!」


「ぎくっ!」


十波

「1%でもいてたまるか」


「………(ほっ…危なかった…)」


剣坂

「はい!」


十波

「剣坂!高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%?」


剣坂

「“ああああ”」


十波

「ゲームでな!めんどくさいんだよな!わかるよその気持ち!」


久寿米木

「はい」


十波

「よし久寿米木!高校生にとったアンケートで8%の枠がある。なにが8%?」


久寿米木

「アンケートを拒否した人」


十波

「マジかぁ。てかお前ら全員順応性高いな。この調子で次のお題いくぞ」









“授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?”








「じゃあ俺から…」


十波

「授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?」


「全員で殺しあいをしてもらいます」


十波

「あの漫画!?いわゆるバトロワ!?そりゃ凍りつくわ!」


実月

「はいはい!お兄ちゃんはーい!」


十波

「じゃ次実月。授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?」


実月

「先生の後頭部にスナイパーが狙う赤い点がある」


十波

「ん?虫かなって思ったら先生あたまあたま~!狙われてる狙われてるから的な!?」


清水

「次私!」


十波

「授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?」


清水

「今日は休日だと気づく!」


十波

「バカだなぁ」


剣坂

「はい」


十波

「授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?」


剣坂

「先生の後ろにキングボンビー」


十波

「お~!?借金100億じゃすまされねえよ!?」


久寿米木

「はい」


十波

「授業中、突然生徒全員が凍りついた。何があった?」


久寿米木

「飼っているうさぎが実はモノマネ上手の猫だった」


十波

「嘘だろおい!?そんなばかなことがあっていいのか!?」


久寿米木

「スズメもできるヨ?」


十波

「外見的に無理だろ!?」


剣坂

「次は俺のば……」


教頭

「コラー!お前ら授業サボってなにしてる!!」


剣坂がお題に答えようとしたそのとき、教頭先生がドアを勢いよく開けて怒声を発した。


十波

「げっ!教頭!逃げるぞお前ら!」


久寿米木

「え!?で、でも校長の許可は取ってるってさっき十波先生が言って…!」


十波

「ああすまん、あれ嘘だ」


久寿米木

「ええー!?」


実月

「みんな逃げろー!!」


「あ、待ってよ実月!!」


剣坂

「さすがに説教はごめんだ!」


清水

「きゃー!!」


久寿米木

「も~!!!」


こうやってバカやって…


教頭

「十波~!!今日という今日は許さんぞ~!!お前らも覚悟しろよ~!!」


清水

「説教は勘弁してください~!」


みんなで笑いあって…


剣坂

「ちっ!やっぱりあの先生は信用ならねえな!」


久寿米木

「なんでこんなことに~!?」


真面目じゃないかもしれないけど…


実月

「しょうちゃん、お兄ちゃん早く~!!」


「だから待ってって!」


十波

「こっちくんな~!」










こういう生き方も…楽しくていいんじゃないかなぁ…













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