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第6話 暗殺者≠女子高生(普通)暗殺者=女子高生(杏子)

 オルさんに続きまして登場いたしますringです。


 つたない文ではありますが、頑張って書いたので楽しんでいただけたら幸いです。ではどうぞ。

 さっきから居心地が悪い。……不愉快の原因は分かってる。俺の後ろに座っている奴……僕だ。こいつのせい。



 俺の髪はロングヘアーなのだが、仕事の時や邪魔な時はポニーテールに結える。髪型に興味は無いから、実用的にするだけだ。



 で、だ。なんで脈絡も無く俺の髪型の話をするのか。そこで、冒頭の不愉快に戻る。



 授業中はやはり長い髪は邪魔になる。つまり今はポニーテールにしている訳なのだが……その先を、僕がいじっている。



 ……はっきり言って、拳銃を乱射したい衝動にかられている。俺はあんまり気の長い方じゃないとの自覚がある。……そんな自覚あってもしょーがないよな。実際。人間の……俺は魔族だが……衝動ってのは理性で抑えきれるモンじゃないよな。



 幸い、あと5分でこの苦行も終わりだ。そしたら思う存分こいつにぶちまけてやるとしよう……くっくっく。



 そして待つこと5分。



「よーし、今日はここまで」



 終了の声が上げられ、礼をする。そしてそのままの流れで俺は後ろを振り向き--



「僕!! てめぇは他人の「杏子ちゃん、パンツ見せてくれないかな?」



 --機先を制された。



「……て・め・え・は・よ……少しは節度ってのを知らねーのか!?」



 他人にいきなり下着見せろだの、普通の奴が聞いたら正気を疑われる。……まぁこのクラスの奴らだと、『まぁ、僕だしね』で解決する事柄ではある……つまり、日常茶飯事という訳だ。



「なぜ額に青筋を浮かべてるのかな? そこに女の子がいて、僕がいる。ならばパンツの色を聞くことは当然--」



「普通じゃねーよこのすっとこどっこいが!!」



 とりあえずハリセンでバシッと殴っておく。どこから出したか? 乙女の秘密だ。



「いたーい。全く相変わらずだなあ、杏子ちゃんは」



「棒読みだなコノヤロウ」



「悪いの? 痛かったー」



「悪くもねーし、心配するな。手加減はしたからな。お前が痛いの嫌いだって事ぐらい知ってるからよ」



 ……こいつは痛みを嫌ってる。気づいたのはささいな事だ。こいつの体の異常性--長くなるから詳しい事は割愛する。こいつ曰わく、『打たれた鉄は固くなる』そうだ……理由は聞きたくもねーな。だから極力痛みを与えるのは嫌なんだが……。



「そうかい。相変わらず優しいね。というわけでパンツがダメならブラを--」



「見せるかアホが!!」



 またもやハリセン……セクハラにはしょうがないよな。うん。ごめんよ僕。







 --昼休み--



 かったるい授業も終わり、今は昼休み。ん? 僕のポニテいじりはどうしたのかって? あぁ、あれからの授業は全部寝てたから、髪はロングのままだった。僕はちょくちょく触っていたが飽きてきたみたいだ。



 購買--やけに強そうな女だったな、あのパン屋--でパンを3つ買い、弁当を持って1人で屋上に向かう……食べ過ぎだと? は、知るか。



 屋上は立ち入りはこれといって禁止されていないが、あまり近づく奴はいない。まぁわざわざ教室から出る奴も珍しいからな。



 ……だから、俺と『奴』はよくここに来る。



「今朝方ぶりです、杏子」



「あぁ。今朝方ぶりだなリング」



 リング。俺が全幅の信頼を置いている珍しい奴だ。裏の仕事の時の情報収集や仕事の依頼などは、こいつから入ってくることが多い。



「マリー様からのご招待ですよ。2日後にお茶会を催すらしく……」



「俺にも参加しろってか? 魔族の姫とは言え、勘当された俺に何の興味があるのやら」



 マリーとは俺の古い知り合いの魔女だ。本名『ブラッディ・マリー』。たまに同じ魔女の『テネシー・クーラー』、『ラスティ・ネイル』等と共にお茶会にお呼ばれしている。……勘当された俺を呼ぶ理由が分からんが。



「杏子は魔族の中でもはぐれものですから、マリー様も興味がおありのようで。『ディアブロ卿を連れてきてくれないかな?』と……」



「……懐かしい名前だな」



 ディアブロとは、俺の魔族としての名前だ。あたしの魔族名は『エル・ディアブロ』。特に意味はない。



「……わかった。マリーに行かせてもらうと伝えといてくれ」



「は。では……」



 リングはどこへともなく消える。……いつも思うが、どうやって消えてんのかね。



 そう思っていた時、屋上の扉が軋みをあげて開いた。



「……おや、剣坂さんではないですか」



「ん? あぁ、オル先生か」



 入ってきたのは図書館の主、オル=トロス・クラフト先生。名前が長いので俺はオル先生と呼んでいる。



「先生が図書館を出てくるたぁ珍しいな。何かあったのか?」



「煙草を吸いにきただけですよ。今日は何故か屋上に出たい気分でしてね」



「は、なるほどね。付き合っていいかい?」



 煙草を取り出す先生に合わせて、俺も煙草を取り出す。……裏で働く内に、何故か成り行きで吸い始めて止まらなくなってる。学校では自重はしてんだけど、たまに屋上で吸ってるのだ。……典型的なチェーンスモーカーってやつ。



「ダメ、と言いたいのですがまぁあなたならしょうがないでしょう。構いません」



「へ、相変わらず話がわかるな。ま、俺には有害物質なんざ効かねーしな」



 オル先生は俺が魔族だと知ってる数少ない人物だ。1度偶然出会った魔族と話してる現場を見られたのが理由だ。まぁ別に誰にバレてもいいのだけれど。



 ジッポーライターを取り出し、煙草をくわえて火を付ける。火を付けた時に息を吸うのが火を大きくするコツだ。



「ふぅ~……」



 濃い紫煙が屋上を流れていく。隣ではオル先生も煙草に火をつけていた。相変わらずマルボロのメンソール、略して『マルメン』だ。



 俺が好んでる銘柄は『ピース』。鳩のパッケージで有名なヤツだ。日本の煙草の中ではかなりキツい部類に入る。フィルターのない両切り煙草で、下手に吸ったら慣れてるヤツでもむせる。



 焦らず、ゆっくりと味わい、ゆっくりと煙を吐き出す。あぁ美味い。この美味さを知らない奴は人生を損してるとまで思える。



「剣坂さんは本当に美味そうに吸いますね」



「まぁな。ピースに慣れちまったら他の煙草が弱く感じちまうんだよ。アメちゃんだぜ、アメちゃん」



「それはマルボロを吸ってる私へのあてつけですか?」



「んなわけじゃねーけど」



 苦笑しながら煙草を味わう。マルボロだって悪くはない。ピースが切れた時は、よく図書館に行って先生からマルボロをがめている。メンソールの味がたまに味わいたくなるのだ。



 煙草をふかし、パンをかじる。至福、その一言だ。美味い煙草に美味いパン。酒でもあれば最高なのだが--テネシーの奴にまたワインでも頼むか。



 オル先生は1本吸いきり、煙草を携帯灰皿に入れた。



「では私は図書館に戻ります。授業には遅れないようにしてくださいよ?」



「へいへい」



 オル先生が出て行くと同時に、俺もピースを吸いきった。携帯灰皿に吸い殻ごと入れて、また屋上の手すりに体を預け、何の気なしにぼへ~っとグランドを眺める。……全く、平和だな……。



「……んあ?」



 と、視界の隅で何かが動いた。グランドの隅。強化してない視力では見るには限界があったが……。



「……素早い動きだな。同業者(殺し屋)か?」



 なかなかに素早く、いい動きをしている。少し粗い所はあるが、気にならない程度だ。グランドにはあまりにも不自然な動き。となれば同業者(殺し屋)の可能性がある。



 流石に真っ昼間から殺しはしないだろうが、夜になったら分からない。それにこの学園には、色んな所から狙われている奴がかなりいるのを俺は知っている。……可能性は、排除すべきだ。



 眼を閉じ、魔眼を発動させる。愛用の狙撃銃を取り出す。



「……恨んでくれても、構わんぜ」



 聞こえる訳もないが、一応つぶやく。そして狙いを定め、引き金を--。



「……ありゃ?」



 引こうとしたが、魔眼がとらえた人物を見て俺は指を止めた。……おいおい、ありゃよく知った顔だ。



 首後ろで束ねられた色素の薄い金髪。雪のように白い肌に碧眼。童顔であり中性的な顔。そして何とも容姿にミスマッチな忍者コスチューム。そんな奴はここ鈴音学園でもこいつだけ。



 ……なるほど、あの不自然な動きは忍者の修行か。合点がいった。



 ……にしても、わざわざ銃を構えたんだ。どうしよ……。



「……よし」



 狙撃銃に込められた弾丸の種類を変える。……いや、人体に害はないから心配はいらない。



 もう一度銃を構え、魔眼で狙いをつける。……驚く様が目に浮かぶぜ。くっくっく。



 奴は動きを終えて一息ついている。……いまだな。



「Rock'n Roll!!」



 一声叫んで引き金を引く。普通は観測手がいるもんだが、俺の魔眼の前には不要ッ!! もちろん、サイレンサー付きだから銃声もなし。



 放たれた弾丸は狙い過たず奴の眉間を……いやいや違う。狙い過たず奴の足元に着弾。そして白煙をあげた。お手製の煙玉だ。くだらん真似だが、意外と有効だったりする。



「おお、驚いてる驚いてる」



 わははと笑う俺。奴が「な、なんでござるか!? 敵襲でござるか!?」とか叫んでるのが目に浮かぶ。



 と、思っていたら煙の中から凄いスピードで奴が飛び出してきた。恐らく角度などから発射地点を割り出したのだろう。グランドを横切り、俺がいる校舎まで駆けてくる。……おお、オリンピック選手もかくやというスピードだな、素晴らしい。オリンピックに出るようにすすめてみるか。ボ〇トぐらいにはなるかもしれんぞ。



 とか思っていたら、屋上の扉が荒々しく開かれた。煙から飛び出してからジャスト10秒。本気でオリンピックを目指したらどうだろうか。ボル〇も真っ青だ。



「なぁにをするのでござるかぁぁぁぁぁぁぁ!? 杏子殿ぉぉぉぉぉ!!」



 そのままの勢いで跳び蹴りをかましてくる。煙玉着弾地点から階段とかをくわえておよそ500mを10秒のスピードに、かなりのパワーがくわわった常人なら何が起こったかも分からず昏倒もののその一撃も、俺の魔眼による動体視力の前には無意味だ。その動体視力についていけるだけの身体能力も当然ある。



 体を半身にして難なくかわす。そのまま飛んで屋上から落ちそうだったので、首根っこをつかんで止めてやる。「グェッ!!」とか言ったが気にしない。



「よーアル。俺からのサプライズ☆プレゼントはどうだったい?」



「で、出来れば首は止めて欲しかったでござるよ……死ぬかと思ったでござる」



 格好は忍者だが、容姿からして忍者らしくないコイツは如月アルザ。一年後輩。元々は滋賀、つまり近江の出身で、自称「サムラーイ」であるという父親の意向で、許嫁と共にこの学園にやってきたそうだ。



 ……侍だの、忍者だの、許嫁だの……ったく、興味をそそられる所だ。そしてその許嫁の娘……宮院(みやこいん)流菜(るな)というのだが、これがまたかわいい娘だ。……ったく、リア充共め……うらやましくなんかねーがなっ!! ほんとだぞ!? ……なんだその生暖かい目つきはーっ!!



「どうしたのでござるか、杏子殿?」



「あーいや、なんでもねーよ。ちょっとな。にしてもアル、お前いい動きしてたな。忍者なんつーのは眉唾かと思ってたが、そうでもねーらしいな?」



「いやー、杏子殿ほどの人に言われると照れるでござるな。されど、拙者などまだまだでござるよ。しかし杏子殿も相変わらず素晴らしい腕でござるな。この距離で過たず拙者の足元に着弾させるとは……」



 ここから着弾地点までは恐らく地上距離が400mほどで、高さは20mほどだから、三平方の定理を用いれば極めて簡単に計算が出来る。400の2乗+20の2乗=直線距離の2乗。となれば160400が直線距離の2乗となり、だいたい401mほどが直線距離だ。



 その程度ならただの普通のスナイパーだが、俺が普通じゃないのは数km先までなら余裕で打ち抜けるからだ。アルはそれは知らないが、射撃の腕があるのはよく知っている。



「まぁこの程度なら片目つぶってもアリの眉間に撃ち込む自信があるな」



「全く、末恐ろしいでござるな……敵には回したくないでござる」



 アルがそう言った所で予鈴が鳴った。アルが慌てておいとまするでござると言い、屋上から出て行く。俺も行こうかと思ったが、かったるいので5限は屋上でサボることにした。オル先生ごめんよ。



 またポケットからピースを取り出し、くわえて火をつけた。フェンスにもたれ、空に向けて煙を吐き出す。……ふと、アルが先ほど言ったことが反芻された。



"敵には回したくないでござる"



 ……この学園にいる奴の敵に俺が進んでなることは無い。だが……俺は雇われの暗殺者だ。この学園にいる奴の敵に俺が雇われるという可能性が0だと本当に言えるか……?



 さらに言えば、俺は魔族だ。いくら勘当されたとはいえ、必然として人間とは相容れない種族だ。魔族に被害を受けた人もいる。オル先生みたいに受け入れてくれる人間ばかりじゃない……。



 ……俺はこの学園がなんだかんだで好きだ。この学園にいる奴らを殺したくない。……なら、みんなを殺す可能性がある俺は、出てった方がいいのか? ここにいてもいいのか?



「……ちっ、バカバカしいぜ。俺は暗殺者だ。何人も人を殺してきた。この学園の奴らを殺してくれなんて依頼、受けずに依頼人を殺してやればいいんだ」



 俺は考えを強引に打ち切り、屋上に寝転がった。もう授業に出る気など、これっぽっちも起こらなかった。5、6限サボってとっとと帰ろう。今日は仕事あったっけ……。



 携帯を開けて確認し、舌打ちを打つ。裏の仕事が一件、今メールが来ていた。……今の精神状態で行ったら失敗しかねん。しょうがない。



 携帯で短縮を押す。相手はこの学校の先生の零崎(ぜろさき)龍賀(りゅうが)先生。表は先生だが、実は俺と同じ裏の世界の人間。……この人は俺と違って家系が殺しらしいが。ひょんな事で知り合い、仕事を回したり回されたりの間柄になった。



 ワンコールで龍賀さんが出る。



「……剣坂か?」



「ええ。お久しぶりです龍賀さん」



「お前からかけてくるって事は、仕事だな? ……言え」



 相変わらず話が早い。面倒くさがりな人だが、意外といい人だと思う。



 手短に仕事の内容を説明する。ちなみに内容はとあるヤク売りの暗殺。そんな有名じゃない奴だし、はっきり言ってチョロい仕事。説明が終わると、いつも通り龍賀さんは言う。



「……報酬は?」



「200万。人1人ならいい方だと思いますよ?」



「わかった。受けさせてもらおう……今度また、仕事をお前に回す」



「ええ、わかりましたよ……んじゃ、ご武運を」



 通話が切れる。そんな難しい仕事じゃないし、あの人なら楽にやるだろう……今日はゆっくり、休ませてもらおう。



 6限が終わるチャイムが鳴った。俺は煙草の吸い殻を携帯灰皿に入れ、帰るために歩き出した。



 『ブラッディ・マリー』、『テネシー・クーラー』、『ラスティ・ネイル』。


 みんなオリキャラです。名前は知っているかもしれませんが、カクテルの名前から。杏子の魔族名『エル・ディアブロ』もカクテルからです。


 これから魔族がちょいちょい出てきますが、多分カクテルで全部名前つけます。

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