キャラ設定&プロローグ by荒神丸
どうも荒神丸です。
この度はリレー小説に参加することになりました。
初めてのリレー小説ですのでわからない事ばかりですがよろしくお願いします!
■名前:江波 信彦
■年齢:29
■性別:男
■容姿:黒髪短髪、ガタイの良い体つきで筋肉質。身体のあちこちに傷痕がある(主に深い切り傷)
■身長:175
■体重:81
■趣味:石集め
■好きな物:おにぎり
■嫌いな物:妙に静か過ぎる小部屋。
■特技:逃亡していた頃に鍛え上げたサバイバル技術。
■職業:学校用務員、主に清掃業務あるいは設備や備品の整備業務に従事する。前科持ち。
■罪状:殺人罪・既に刑期を終え出所。
■性格:極めて温厚。他人を避けようとする傾向あり。
■一人称:俺
■二人称:アンタ
■設定:かつて15歳の時に両親と隣人の子供である幼児を刺し殺す事件(きっかけは両親による虐待。虐待で命の危険を感じた際に両親を刺殺し、それによるパニック状態の時に偶然鳴き声が聞こえてきた隣部屋の幼児を黙らせる為殺害)を起こし8年間逃亡生活を続けていたが、23の時に拘束され服役していた。
その後6年後に「新更生プログラム」の一環として模範囚に選定され名目上の出所。新更生プログラムの規定に則り用務員事務に従事する事になる。
だが、あまりに短すぎる刑期(普通無期懲役なら20年以上の服役を経ても尚仮釈放は有り得ないとされる。少年法が適用されたとしても10年は必要)に不審な噂が流され、元殺人犯という肩書きも相まって世間から非常に冷遇されてきた。
そんな経歴もあり数ある職場からたらい回しにされ今回の学校に流れ着く。色々とキャラの濃い学校のメンツに面食らっている状態。
また、両腕両足そして心臓には再犯防止用の装置が取り付けられ、特定のストレスを感知するか監視員の指図により手足の神経を断裂させ電流により強制的に心停止させられる様になっている。
■名前:熱海 康弘
■年齢:35
■性別:男
■容姿:オールバックの短髪、基本的にスーツ姿に冬場はコートといういかにもエリート刑事といった風貌(ただし刑事じゃなくて刑務官)
■身長:170
■体重:79
■趣味:ドライブ
■好きな物:ココア
■嫌いな物:人混み
■特技:射的と柔術
■職業:刑務官(ただしこれは肩書きのみで実際は行政機関の所属)
■性格:一見紳士的で温和な性格だが割と上から目線や皮肉などの発言が目立つ。
■一人称:俺、私
■二人称:貴方、お前
■設定:新法案として提案された「更生可能な囚人に対する社会復帰プログラムの見直し」を目的とした「新更生プログラム」の提唱者かつその実行指揮者。
新更生プログラムの本懐は囚人の社会復帰にその要点があるのでは無く、刑務所内の収容許容範囲を超えつつある囚人数に対する対策法案であり、要は「即座に死刑執行処分が不能な囚人」を体よく刑務所から可能な限り安全な者を厳選し追い出し、刑務所の空きを作る事が最もな目的。その為、対象となる囚人に問題行動が確認されれば刑期の如何を問わず市民の安全確保の為に即殺処分出来る様にされる。
彼はそのプログラムの立案者であると同時にその実行機関の責任者でもある。「江波 信彦」はその三人目の被験者であり、以後彼の動向を観察している。
基本的に囚人に対し感情移入はせずあくまでも規則に則った行動を行うが、規則の範疇を超えぬ範囲であれば極力人道的な処置に務める一面もある。
■プロローグ
一体どれだけの時間をここで過ごしただろうか。
暗い。酷く暗い。
ごく僅かに注ぐ一条の光を頼りに辺りを見渡す。
しかしそこにあるのは真っ暗な闇だけ。
時折、小さな、否、手のひら大はあるのではと錯覚するような害虫が這いずり回るのが音と限られた光の下に見える。
今では見慣れたものだが、虫独特のギチギチとした音を立てながら顔や身体の周りを何十匹というゴキブリや百足が這い回るのは、両手両足を拘束され身動きの出来ない自分には不快だった。
暗闇の中、江波はまるで芋虫の様な状態の身体で少し蠢くとやがていつも通りの騒々しい静寂を確認すると、直ぐに動くのを止めた。
ふと、江波の正面に位置する場所からまるで金属の擦れる様な音ともに光が注ぐ。
それが暗闇の中どこにあったかさえわからなかった独房の扉であると気付くのに江波は数秒を要した。
「うわ、ひっでぇ臭いだな」
扉に立つ二人の男のうちの一人があからさまに不快を顔に出しながら顔の前を手で扇ぐ。
刑務官の服装の男は独房の外の通路から続く青いビニールホースを手に持つと、勢い良く水を流しながらまるでそれに江波自身も含まれるかの様な体裁で独房の汚物を流す。
ホースから放たれる水に打たれ、江波はむせながら顔をしかめる。
男はそれを気にする事は無く、ある程度流し終えるとホースの水を止めホースを持っている男とは別の男が食事の載せられたプレートを江波の目の前に放ると、そのまま独房から出て扉を閉めていった。
この独房に入ってもう何年になるのだろうか。
ここに来て、もう一度も外の空気を吸っていない。半年に一度剃るか剃らない程度の髭は伸びきり髪も肩に届いてしまっていた。
このまま自分はここで一生を終えるのだろうか。
ある日の事だった。
突然、独房の扉が開かれる。
「おい、出ろ」
刑務官の男が数名、江波の手足を拘束していた拘束具を外すと早く独房から出るよう促された。
独房の外も相変わらず薄暗い刑務所の廊下を歩きながら、突然の事に動揺する江波。
表情に出して狼狽えようものなら刑務官からの折檻が待っているのは明白である為終始表情は崩さなかったが、それでも久しぶりの独房の外であるという事、そしていきなり独房の外に連れ出された事にすっかり内心では落ち着きを失っていた江波は、刑務官に悟られぬ様辺りをキョロキョロしていた。
外に連れ出されたという事は何かしら“処置”が自分にされるのだろうが、それが何であるかは想像がつかなかった。
単なる房変えか、或いは何かの手続きか。
一瞬だけ釈放という言葉が頭を過ぎったが、それは単なる希望的観測に過ぎないだろうと頭を振る。むやみやたらに希望を持つと、それが潰えた時に後悔するからだ。
まさか処刑ではとも考えたが、考えたくも無かったので流す。
結局のところ何も考えない方が気楽だと思い、久しぶりの刑務所の廊下を観察しながら進むと、連れて来られたのは浴場の脱衣所だった。
「服を脱げ」
刑務官からそう言われ、服を脱ぐと、今度は浴場の中に連れられ身体を洗えと言われた。
言われた通り身体を洗うと次は髭を剃れと言われ、髭を剃った次は適当な椅子に座らされ髪を切られた。
何故今更小綺麗にする必要があるのかと考えたが、希望と不安が過ぎるばかりでそれ以上はわからなかった。
すっかり綺麗にされた江波は同じく綺麗に洗濯された服を手渡され服を着た後、手錠で後ろ手に拘束された後ある部屋の前まで連れてこられた。
重い鉄でできた扉の向こうで待っていたのは、部屋の真ん中に置かれたデスクと、その反対側で無表情でこちらを観察する背広姿の男達だった。
「江波 信彦、29歳。罪状、両親である男女二名と隣住人である3歳児に対する殺人罪」
背広の一人がどこか形式めいた口調で書類を読み上げる。
江波は何も答えぬままじっとしていると、男は続ける。
「被告15歳当時、両親からの虐待に生命の危険を感じ同両名を刺殺、パニックに陥った被告は隣近所に済む家族の子供である3歳児をベランダから家に乗り込み同じく刺殺。その後被告は8年逃亡の末、潜伏先付近の住人の通報により逮捕。以上に相違は?」
「ありません」
江波の返事に僅かに頷くと、先程まで書類を読み上げていた男は下がり男達は江波を見据えた。
その中でも特に目立って感じたのが、椅子に座りデスクに肘をつき両手を顔の前で組んだオールバックの男。
男はゆっくりと立ち上がると書類に目を落としながら口を開いた。
「私はある実験を任されている熱海という者だ。早速本題に入らせてもらうが……」
熱海と名乗った男は、書類を一つ手に取ると言葉を続ける。
「江波信彦、君は“刑務所”から出てみたいかね?」
“新更生プログラム”
熱海はそう言った。
近年増え続けている犯罪者数に伴い、受刑者の収容数が限界訪れつつある刑務所の空きを作る為、受刑者を刑務所外で更生尚且つ社会復帰を旨とした新しい更生プログラム。
要は手早く受刑者を刑務所の外へと吐き出し、刑務所の収容数を空けようというもの。
刑務所外での更生という謳い文句は、世の政治家やマスコミに“社会に対する犯罪者の不法投棄”とすら比喩される程反対意見の目白押しであったがそれでも尚このプログラムの実行が通ったというのはそれだけ近年の諸問題に余裕が無いという現れであった。
現に、今回の件に関しても実験と銘打つにも関わらず一度房から出た検体を刑務所に戻せないが為に既に本稼働の状態であるといっていい状況だった。
かくして、江波は再び表社会へと足を踏み入れる様になったのだが……。
「また配属先の変更……?」
怪訝な表情をする江波に、熱海はやれやれと首を振る。
「ああ、また近隣住民からのストップが掛かったよ」
住民からのクレームによる江波の配属先の変更、否、左遷と言ってもいいかもしれない。
江波の職務内容は実に単純。配属先の施設の清掃員をやるだけだ。
だが、その施設の従業員やその周辺の地域住民から見れば、例え首輪があったとしても殺人犯が隣で作業しているというのはどうしても不安を煽られざるを得ない。
その上、“刑務所の塀の外に居る殺人犯”という大層な宣伝文句も相まって、野次馬や感情論に突き動かされた徒らが集まって来るのも周囲にとって迷惑この上ないもの。
結果として、江波は労働の場を追われざるを得なくなった。
「こうも行くところに野次馬が来るんじゃ、堂々巡りもいいとこだな」
江波は、半ば諦観をも滲ませた様子で外を見る。
外には殺人犯に対する罵倒や暴言が飛び交っていた。そのどれもが耳を覆いたくなるようなものばかりで、「早くその殺人犯を殺せ」等は当然として、全く無関係の者が聞いても不愉快になるような言葉も混じっていた。
人に後ろ指を指されるのには慣れてしまっていたが、周りの人間が迷惑を被るのはどうにも心苦しいものがあった。
「そうは言ってもな……。今更元の場所に戻そうにも、前の房にはもう別の受刑者で満員だし、君もまた刑務所に戻りたくはないだろう?」
「それは……」
江波は少し複雑な心境で唸る。
確かに、ようやく外に出られたというのに再び刑務所に戻りたくは無い。だが、このまま配属先を転々としていても周囲に迷惑を掛けるだけだ。
過去に人を殺した殺人犯である彼だが、それでも彼にはささやかではあるが人を気遣う事のできる感情があった。
それがこの更生プログラムに選ばれた理由であり、今日まで実験を中止されなかった所以でもあった。
だが、そうはあってもいつまでも中止を免れられる訳では無い。熱海が一つの資料を取り出すと、それを江波に見せた。
「とりあえず、次の配属先は決まったよ。ここが次の君の職場だ」
「次はいつまで保つのやら」
江波が皮肉混じりに資料を手に取ると、熱海は極めて真剣な表情をする。
「今度ばかりは今までのようにまたたらい回しには出来ない。もう既に何件ものクレームや抗議が来ているからね」
「何?」
片眉を上げ熱海の方を見る江波。
熱海は表情をぴくりとも変えずに言う。
「次で最後という事だ。次、そこでの実験が中止になれば即、君は刑務所へと逆戻りとなる」
鈴音学園と書かれた資料を見ていた江波は突然の宣告に、激しい焦りと不安を露わに熱海を見た。
熱海はそれ以上は何も言わない。
江波にはそれがまるで死刑宣告の様に聞こえていた。