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永遠の誓い  作者: はいり
3/4

3.街

オーディアナは用意した服を着、金色の綺麗な髪を邪魔にならないようポニーテールにしていた。

よしっ!

と言って部屋を見回した。

先程椅子にかけた、今日着る予定だったドレスをわすれていた。

オーディアナはそのドレスを手にとり、それをクローゼットではなくベットに丸めていれた。

―近づかれたらばれるけど、遠くからなら寝てるみたいに見えるかな?―


そしてオーディアナはバルコニーへと向かった。グリーディオは城門の前に立っていた。

街も城内も賑やかになってきた。

腕時計をみると、針はもうすぐで6時を指そうとしている。


―さすがにこないよな…

わかってんのになんで待ってんだ、俺―


グリーディオはため息を一つつき、それでもその場を動かずにいた。



―やっぱり邪魔だな〜―


オーディアナはワンピースの裾を鬱陶しそうに睨んだ。

王城に持ってきたのはドレスばかり、唯一街に着て行けそうなのは、王城に来るときに着てきた移動用のドレス。


―でもこれ着て来なかったら、街行けなかった。まだましかな…―


と考えながらバルコニーの手摺りに足をかけた。

そして、思いっ切りそれを飛び越え、隣室のバルコニーに飛び移った。

オーディアナがいるのは2階。

落ちれば、怪我じゃ済まない高さだ。

しかしそれをものともせず、オーディアナは飛んだ。

そして、バルコニーの端まで行って、

昼間見つけた大きな木に飛びついた。

そのまま少しづつ、慎重に下へ下りた。

下に着いたはいいが、もちろん堂々と門を通って外には出られない。

オーディアナは、庭の柵まで走った。

柵を見上げてそれに手をかける。


―少し高いけど…こんくらいなら!―


そして、柵をよじ登り、見事外に出た。



グリーディオは時計を仕切に見ていた。

6時を過ぎたばかりだが、帰ろうかと思い初めていた。


―許可が下りるわけねーよな。ってか諦めさせるための条件だったわけだし…―


グリーディオがそんなことを考えていると、向こうから城の塀に沿って誰かが歩いてくる。


―まさか…まじかよ…―


グリーディオはじっとそっちを見つめた。



オーディアナはじっとこっちを見る人の元に向かった。


そして、自分を待っていた人を見上げて言った。


「遅くなってごめんなさい。」

グリーディオは驚きのあまり黙ったままだ。


「怒ってるの?それともわたしは来ないと思ってた?」


オーディアナはクスクス笑いながら言う。

グリーディオはやっと口を開き、


「いや、まさか本当に来るとは。」


と言い、


「ちゃんと許可をもらったのか?父上は心配したんじゃないか?」


と尋ねた。

オーディアナはグリーディオをじっと見て、


「大丈夫。私もう17よ?こんなんで一々心配されたらたまんないわ。」


と言った。



二人は街の中心街を歩いていた。


オーディアナは小物を熱心に眺めている。

その後ろ姿を見ながら、

グリーディオは思った。


―貴族の令嬢つっても普通の女の子なんだな。と言うより、令嬢っぽくない。格好をみるかぎりじゃ位も高くは見えないし。それにしても綺麗な金髪だな…―


するといきなりグリーディオの視界にオーディアナが現れ、


「ねぇどうしたの?」


と不思議そうに言われた。

グリーディオは

いや、

と言って


「もういいのか?」


と聞いた。

するとオーディアナは元気よく


「あっちのに行きたい!」


と言った。



二人はいろいろな店をみた。

オーディアナは初めてみるものや、食べるものに興奮していた。

グリーディオが少し前を行き、歩いていると、

剣が売っている屋台を見つけた。

グリーディオは立ち止まり、

店に並ぶ一つを手にとり


「いいな。」


と言った。

するといかにも力のありそうな店主が、


「若いのにいい目をしてるな!」


と声をかけてきた。

グリーディオが謙遜すると、

店主は、


「その若さで王宮に勤めてんだから、相当の腕なんだろう?

そいつぁ―俺が打った剣だ!」

と言って、人の良さそうな笑顔を浮かべた。


「バランスが良いわね。」


グリーディオはいきなり横から声がして、

自分が令嬢を連れていると思い出した。


「あっと、わる…すいません。」


オーディアナはそんなグリーディオを見てクスリと笑い、


「別に、確かにその剣は素敵だわ。それに、敬語…使わなくてもいいわ。」


最後のほうを、店主に聞こえないようにそっと囁く。

すると、店主はオーディアナを見て、


「おっ!お嬢ちゃんもこの剣の良さが解るのか!」


と言い、オーディアナを褒めた。

グリーディオは


「剣をもつのか?」


と聞いた。

オーディアナは、


「自分の身を守るくらいには」

と答えた。

グリーディオが剣を置いたのを見てオーディアナは、


「ゆっくり見ていいわよ。私も好きだし」


と慌てて言った。


グリーディオがとても楽しそうに店主と話しているのを見て、


―もっと堅い人かと思ってた…昨日は月明かりしかなかったから全然わかんなかったケド、

私より少し年上なだけなのね。なんか意外とやんちゃなのね。焦げ茶色の髪に綺麗な茶色の目…アルコートなんかよりずっと素敵だ―


と考えていた。


店主と話し終わり、グリーディオは

行こうか、

とオーディアナに言った。


二人は広場に来た。

広場にはマジックや大道芸をしている人たちがいた。

それらを一通りみると、

グリーディオは時計をみて、


「もぅ9時半か…そろそろ帰ろうか?」


とオーディアナにいった。

オーディアナはグリーディオを見上げて、


「…もう?まだここにいたい」


と言う。

しかしグリーディオも令嬢を夜遅くまで連れ歩くわけには行かない。

それに、グリーディオは分かっていた。

オーディアナが父親の許可を貰ってないことを。

グリーディオだって馬鹿ではない。

オーディアナの様子を見ていれば、大胆想像がついた。

だからなおさら早く帰さなければならないと思っていた。

しかしその反面、もっと一緒にいたいという思いも強かった。


オーディアナはグリーディオを見つめ続けた。

今まで、基本的にこうすれば回りの人たちは…特に父は、自分の多少のわがままを聞いてくれたから。

しかしグリーディオは折れなかった。


「だめだ。これ以上遅くなったらご両親も心配するだろう。」


オーディアナは今までやってきた方法が通用しないのに驚き、そして、自分の回りの人とは確実に違うと喜びを覚えたが、

今しがた言われたグリーディオの言葉に胸が締め付けられた。

―両親…―


オーディアナは黙ったまま俯いた。

グリーディオは、オーディアナが急に俯き、黙ってしまい、心配になり、


「あっ…えっとさ、ゆっくり、店見ながら帰ろう。」


と言った。


「…両親は…」


オーディアナは呟いた。

しかしその声は小さ過ぎて、グリーディオの耳には届かなかった。



二人は結局ゆっくり、道草しながら城へむかった。

時々屋台を覗くが、なにも買わずにすぐに歩き始める。

っといった感じだった。


もう城門ももうすぐというところまで来ると、

またオーディアナは足を止め、小物をじっと見つめていたが、すぐに歩き始めた。

しかしオーディアナはちらちらと後ろを振り向く。

グリーディオはそんなオーディアナをじっと見つめていた。

すると、ちょっとも歩かないうちに、目の前に人だかりがあった。

見てみると、マジックショーだった。

オーディアナは目を輝かせながらマジシャンとグリーディオを交互に見つめた。


「ちょっと見てくか。」


と言うと、

オーディアナは万遍の笑みを浮かべて、人だかりのほうへ歩いていった。

グリーディオはオーディアナの後ろに立っていたが、

オーディアナに


「すぐに帰ってくるから、ここにいてくれ。絶対ここから動いちゃだめだぞ。」


と言った。

オーディアナはキョトンとし、すぐに笑って、


「父様みたいなこと言うのね。大丈夫、ここにいるわね。」


と可笑しそうに返事をした。

グリーディオはオーディアナの頭を、ぽんぽん、として人混みに消えて行った。

オーディアナは、頭をおさえて、グリーディオが消えて行ったほうを不安そうに見つめていた。


―大丈夫、すぐに来る―


オーディアナは、グリーディオが行ってしまってすぐ、とてつもない不安に襲われていた。

最初はマジックをみて、気を紛らわしていたが、

だんだんとマジックなど見ていられなくなっていた。

オーディアナはじっと、グリーディオが歩いて行ったほうを見つめた。

後ろから拍手や歓喜する声が聞こえる。

しかしオーディアナにはもはや、回りの音など聞こえていなかった。



グリーディオは、人混みの中を歩いていた。

そしてやっと目的の店についた。

そこは先程オーディアナが何かに魅入っていた店だった。


―確かここらへんの何かを…―

グリーディオは先程のことを思い出し、

オーディアナが何を見つめていたのかを思い出す。

そこにはネックレスがあった。

―ネックレス見てたのか。―


と思い、ざっと見たがたくさんありすぎて、グリーディオは頭を抱えたい気分になった。


―ありすぎて、なにがなんだかわかんねぇ!

大胆なんで俺こんなことしてんだ…

別にあいつはこれを欲しいなんて言ってないし、令嬢なんだからもっと高くて良いやついっぱいもってるだろ…―


と思っていると店員の女の人が声をかけてきた。


「いらっしゃいませ!ネックレスをお探しですか?」


グリーディオはぐいぐい近づいてくる店員に、


「あ、いや…」


とたじろいだ。

すると、ふと一つのネックレスが見えた。


「あっ!」


と声をだして、

店員を押しのけ、

それを手に取った。

それはその店にある、派手なごてごてしたネックレスとは違い、

深緑の綺麗な石がついた質素なネックレスだった。


「あら、もしかして彼女さんにプレゼントとかですかぁ―?

だったら今はこっちの飾りがおっきい派手なのが人気ですよ―!」


と、いつの間にか隣にきていた店員に言われた。

グリーディオは深緑の石を見つめ、


―目の色とおんなじだ。―


と無意識にオーディアナの瞳を思い出していた。



グリーディオは小さな包みを手に持って、来た道を引き返していた。

店員は今人気の形の、高いほうをを売ろうと必死に、流行りものを勧めてきたが、

グリーディオはそれを無視した。


―結局かっちまった…プレゼントなんて柄じゃねぇよな。

満足させてあげたい、なんて。こんなん俺の自己満か…―



グリーディオは先程のマジシャンがいたところに戻ってきた。しかしショーは終わってしまったのか、人だかりはなくなり、マジシャンが片付けをしていた。

そこにオーディアナの姿はない。

グリーディオは焦って、片付けの最中のマジシャンに


「あの!金髪の女の子探してるんですケド、見ませんでしたか!?」


と詰め寄った。

マジシャンはグリーディオがあまりに勢いよく聞くので、

体をのけ反らせて、


「いや、私はしらないですケド。」


と答えた。

グリーディオは焦りすぎて、


「そんな!さっきまであんたのマジック見てたはずなんだ!」

と言った。

マジシャンは困って、


「そんなこと言われましても…ショーが終わったのはいまさっきですから、まだそこらへんにいるのでは?

とにかくあなたが落ち着かないと。」


と言った。

グリーディオは我に返って


「そうだよな。悪い、ありがとうございました。」


と言い、走り出した。



オーディアナは道の端にしゃがみ込んでいた。

その目には涙をいっぱいに浮かべていた。


―あぁ馬鹿だ。動かないって言ったのに。最近は大丈夫だったのにな…―


オーディアナは少し落ち着くと、今度は自分がやってしまったことに気がつき、うなだれていた。



「はぁ、はぁ、はぁ…」


グリーディオは人混みを走っていた。

と言っても、人が多過ぎて、とても全力で走れる状態じゃない。それでもグリーディオは出来る限りのスピードで走った。

走っていないと最悪なことばかり浮かんでくる。


―誰かに連れ去られてたら…

格好からじゃ令嬢には見えないけど、

それでも、あの服は俺くらいのやつが見てもとても良いものだろうってことくらい検討がついた。どこにいるんだ!―



オーディアナがしゃがんだまま、俯いていると、どこからか自分の名前が聞こえたきがした。

オーディアナは立ち上がり、声が聞こえて来たほうをみると、必死に自分を探し回ってくれている、グリーディオの姿が見えた。

オーディアナは涙を浮かべながら


「グリーディオ?」


と呟く。

すると、


「オーディアナ!」


と言って、グリーディオはオーディアナのそばに駆け寄ってきた。

オーディアナは安心し、思わずグリーディオに抱き着いた。

グリーディオは突然のことに驚き、叱るのを一瞬忘れてしまった。


「ごめんなさい。」


オーディアナが呟く。

グリーディオは、

はぁ…

とため息をつき、


「オーディアナ…無事で良かった。誰かに連れてかれたのかと思った。」


と言った。

そして、優しく背中をたたいてあげた。



二人は城門の警備員から見えない場所にいた。


「遅くなったから、君の父上のとこまで送って行こう。」


とグリーディオは言い、

城門に向かい歩き始めた。

オーディアナはその場に固まり、グリーディオの腕を慌てて掴んだ。


「いい!平気よ!大丈夫だから!」


グリーディオは慌てるオーディアナを見て、意地悪な笑みを浮かべて言った。


「俺がいくとなにかマズイことでも?父上の許可は出てるんだろ?だったら…」


オーディアナはグリーディオが気がついていることをすぐに理解し、


「馬鹿!ひどい!意地悪!」


と叩いた。

グリーディオは笑って、


「許可もらえっていっただろ。全く、とんだお嬢様だな」


と言った。

オーディアナは目を細めて、


「体調悪いフリをしたら休んでいいっていったもの。あたしにとって、街にいくのは立派な休息なの!」


と言った。

グリーディオは


「なんつ―無茶苦茶な…

一体どこからでてきたんだ?

城門からじゃないだろ。」


と苦笑しながら言った。

オーディアナはしごく真面目に、外にでるまでのことを話した。そして部屋へは、外へ出たのと逆の道順をたどると説明した。


グリーディオは反対したかったが、城門から令嬢を連れて入るわけにも行かないので、賛成せざるおえなかった。

グリーディオは、

気をつけろ、

と言い、オーディアナを見ていたが、

オーディアナは一向に帰ろうとはしない。

グリーディオは疑問に思い、


「帰らないのか?」


と聞くと、

オーディアナは少し黙ってから、


「今日は…ありがとう。

わがまま聞いてくれて。

それと助けてくれて…。」


と言った。

グリーディオは頭をかきながら、


「いや、俺も楽しかったよ。

…一人にして悪かった。」


と言った。

オーディアナはグリーディオに微笑み、


「あなたは、王宮騎士団員なのよね?」


グリーディオが、

ああ、

と答えるとオーディアナは、


「もし私が城に来たら、会えるかしら?」


と聞いた。

グリーディオは少し困った。

今は王国祭だから、普段王宮に出入りできないような貴族もこの敷地に入れるが、

普通は、たとえ貴族だろうと国王から許可されていない限り王宮には入れない。

彼女が王宮にそんな簡単に入れるはずがないと考えたのだ。


しかしグリーディオは、


「あぁ…城内に入れたらな。」

と答えた。

オーディアナは、

良かった、

と言い、


「そろそろお部屋に戻るわ。」

と言った。

グリーディオは軽く頷き、自分も帰ろうと思ったが、

大切なことを思い出し、

オーディアナの方を振り向いた。

オーディアナは城壁の柵に手をかけているところだった。

グリーディオは


「忘れてた!」


と言った。

オーディアナはグリーディオの声に振り返り、

首を傾げた。


「えっ?」


不思議そうなオーディアナに近づいて、

小さな包みを手渡した。

そして、


「これを買いに行ってたんだ…別に高いものじゃないけど、瞳の色と同じで…似合うと思ったから」


と照れ臭そうに言った。

オーディアナは包みの中を手にだしてみる。

すると、綺麗な深緑の石の飾りがついたネックレスが出てきた。

オーディアナはびっくりしてをネックレスを見つめていたが、グリーディオを見上げ、

とびきりの笑顔を浮かべ、


「ありがとう!大切にするわ!」


といった。

そして、


「今度あなたに会いに来るときにつけてくるわ。」


と微笑んだ。


そして、二人はそれぞれの場所へと帰って行った。




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