ハイビスカスの匂い
―――南国の潮風が、わたしの髪を揺らす。
沖縄に来るのは、これで何度目になるだろう。なんだか毎年のように来ている気がする。
海は青くて、空も青くて、さっき見たジンベイザメの色はちょっとだけ水色っぽかった。
海を背にベンチに座りながら、しゃくっと涼し気な音を立てて、かき氷を口に運ぶ。
キーンと、頭が痛くなった。アイスクリーム頭痛だ。
いけないいけない。もっとゆっくり食べるべきだった。
確か、こういうときは舌を口の上に当てるといいんだったっけ?
試しにやってみる。
……うん。まったく効果がない。
そんなことをやっていると、遠くから小さな人影がこちらに向かって走って来るのが見えた。なんだか嬉しそう。
「おかーさん!」
小さなその子は、そのままわたしに飛びついてきた。わたしはハグをするようにその子を受け止める。
何度もやられているから、自然と受け止め方も上手くなっていた。
「みてみて! わたしのかみ! いいでしょ!」
髪には、先ほどまではなかった花飾りが着けられていた。わたしたちが一番好きな、ハイビスカスの花飾り。といっても、これは作り物なんだけど。
「ふふっ。かわいい髪飾りだね。似合ってるよ。お父さんに買ってもらったの?」
「うん! おかーさんのもあるよ! おとーさんがもってる!」
「じゃあ、そのお父さんはどこに行ったのかな?」
「あっち! いまきてるよ!」
その子が指差す先を見ると、見慣れた人影が、ゆっくりとこちらに歩いてきていた。
「ごめん。待った?」
「ううん。ぜーんぜん待ってた」
そんなことで、わたしたちはふふふと笑える。小さいこの子には、まだよくわからないみたいだけど。
「ねぇ。わたしにも髪、つけてよ」
わたしが頭を差し出すと、君は優しくその花飾りをつけてくれる。
「――はい。着けたよ」
「ありがと。どう? 似合ってる?」
「うん。似合ってるよ」
きっともういちいち照れてはくれないけど、わたしは相変わらずこういうときが一番好きなんだよ。
「ずるーい! おとーさん! わたしにも! もっかいやって!」
「はいはい。わかったわかったから」
「やったぁ!」
わたしの髪に着けてくれたそれは、その子と同じピンク色の、南国らしい髪飾り。
多分もう家にはこれと同じものが三つくらいあるのに、また買ってくれるんだね。
それとも、買ったことを忘れているのかな。
わたしはどっちでもいいけどね。
結局、君はわたしとその子で合計四回も髪飾りを付け直してくれた。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「そうだね。次はどこに行くんだっけ?」
「おとーさん! おかーさん! わたし、うみいきたい! うみ!」
そっか。なら、次は海に行かなくちゃね。
そう示し合わせるように、わたしたちは微笑んだ。
そのとき、また、潮風が吹いた。
「わぁ……いいにおい! おかーさん! このいいにおい、なんのにおい?」
「―――これはね、潮風の匂い。その髪飾りの匂いと、おんなじ匂いなんだよ」
「そうなの? でも、おはなからは、そんなにおいしないよ?」
「それでもそうなの。いつか、なつばにも分かるようになる日が来るかもね」
わたしたちはその子の頭を一緒になでて、三人で海を眺めた。
どこまでも、どこまでも、見えないくらい遠くまで続く、青い色の綺麗な世界。
わたしたちは、そんな世界で生きている。
あとがき
ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。楽しんで頂けたのならば幸いです。
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ちなみに、「投降しました!」などの報告はあんまりしない予定です。あんまり毎日やっていると、皆さまのタイムラインの邪魔になりますしね。あ、初回や各章の終わりなんかの重要な時は許してね!
さて、最後に少し宣伝を。
何の問題も起こらなければ、近いうちに新しい作品を投稿する予定です。
恋愛にバトルにファンタジーな作品となっています。自分で言うのもなんですが面白いです。
とりあえず、十万文字書き貯めたら投稿するので、見かけたら「お、この作者見たことあるな。ちょっと見てみよ!」的な軽いノリで読んでみてください!
それでは改めて……。リキッドシャインを読んで下さり、どうもありがとうございました!




