夏の終わり。未来の始まり
夏休みが終わると、当たり前だけど学校が始まる。
僕は寝ぼけた目をこすりながら、布団から起き上がった。
昨日は、夏休み最後の一日だからって、花火やらバーベキューやらをして夜まで遊んで過ごしたから、今朝はどうにも寝不足だ。
誰かが来る前に、僕は制服に着替える。
以前見られたときは、不審者でも見たのかってくらい叫ばれたから、最近は出来るだけ朝早くに、しかも素早く着替えるようにしている。
「おはよ~……」
「おはよ」
「うぇ……もう制服着てるの? 家出るまでまだ一時間くらいあるけど」
「誰のために早く着替えてると思ってるんだ?」
鈴夏が起きてきて、それからお父さんとお母さんが起きてくる。
三人が身支度を済ませているその間に、僕は朝食を作る。
これが、朝からこの家にいるときの日課だ。
朝食は簡単にトーストとベーコンエッグ。お好みで牛乳もついてくる。
ちなみに、通常一つずつのところ、鈴夏の皿にはベーコンとエッグが二個ずつ乗っている。おいしそうに食べてくれるから、いつもついつい乗っけてしまうのだ。
そして、「いただきます」で始まった朝食は十五分ほどすると、「ごちそうさま」で終わり、みんな忙しく家の中を駆け回る。
「鈴夏、そろそろ行かないと。新学期早々遅刻はまずいよ?」
「んー……わかってるよぉ……はぁ、じゃあ、行こっか」
玄関で靴を履きながら、リビングでうじうじとしていた鈴夏に声をかける。
すると、憂鬱そうにしながら、玄関に来た。
靴を履くと、ようやく登校の準備が整った。
「二人とも、忘れ物はない?」
「大丈夫だよ、お母さん。一昨日ちゃんと準備したから」
「はい。僕も大丈夫です」
「そう? それじゃあ気を付けてね」
玄関のドアを開ける。鈴夏が先に出たら、僕も出た。
「じゃあ、行ってきます」
そして、ドアを閉めたら、通学路を歩きだす。
「……ん?」
「どしたの?」
何気なくポケットに手を入れたら、なにかが入っているのに気がついた。
取り出してみると、四つ折りの紙が三枚入っていた。
「あれ? それ持ってきたの?」
「置いてくるの、忘れてたみたい」
「じゃあ、今日帰ったらちゃんと入れておきなよ?」
「忘れちゃうかも」
「そしたら、わたしが勝手に取って入れておくよ。いつものところでいいんでしょ?」
「おぉ。ありがたい」
なら、今日は学校に持っていくか。三枚くらいなら、落とすこともないだろう。
十五枚全部あったら、わからないけど。
***
夏が終わって、秋が来て、冬が過ぎて、春が始まる。
そうして、それが二度繰り返された日、僕たちは高校を卒業した。
あの夏が終わってからというもの、鈴夏は学校でもずっと僕と一緒に過ごした。
学校側が異例の配慮で、鈴夏と僕を同じクラスにしてくれたおかげで、本当にずっと一緒だった。
それが嬉しくもあったけど、ちょっと恥ずかしくもあった。
鈴夏もそれがわかっているから、僕にくっついてきたんだと思う。
そういえば、彼女は光一やかなめとも仲良くなった。二人と話すときは、本当に楽しそうに喋っていた。
特にかなめとはやけに意気投合して、卒業のときには二人してわんわん泣いていた。
お互い泣き虫だなと、僕と光一はにやけてた。
卒業式のときに、鈴夏が描いた絵は全部で四枚。僕たち四人、それぞれが一枚ずつもらった。
もうコンクールとかのためには描かないのに、僕たちに向けて描くときには楽しそうに描くのだから、やっぱり絵を描くのが好きなんだと思う。
その絵は、今も僕たちの家に飾ってある。




