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理学の支配者たちへ!〜地球の科学好きな女の子が知らん惑星に転生して頑張って生きる話〜  作者: タイプCのケーブル


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第2話 理学という支配者は

あれから何日経っただろうか。


夜が何回来るか数えていたが、めんどくさくなった。

多分、一年位経ったんじゃないだろうか。


あれから私は、ずっと考えた。前の人生について。


私は死んだんだろうか?死んでなかったら、あっちでも私は生きているんだろうか?

むしろ、今、この時、地球はどうなっているんだろうか。今、あの時から何億年もあとかもしれないし、あるいは何億年も前なのかもしれない。ここはどんな惑星なんだろうか。みたことない繊維だから、変な球がひたいに埋まっているから、と違う惑星とは言ったが、違う惑星でこんなに類似性を持った生物が生まれるだろうか。そもそも、どうやって転生なんかしたんだろうか。胎児になんらかの現象で記憶情報を送ることができたら可能なのか?

というか、人間でない生物なら、発達にも大きく差があるかもしれない、むしろあったほうがそれっぽい。私が一年だと思っているものは、実際は一年なんかじゃなく、そもそも時間感覚も全然違ったりするんじゃないだろうか。もはや、私の生物が、人間に比べどれくらいのサイズ感なのかもわからない。もしかしたら、アリンコレベルに小さいかもしれないし、ゾウより大きいかもしれない。


そういうことを悶々と考えた。


そして、ある程度考えて、あれから体感にして半年が経ち、ある日の夜、母に外に出してもらった時に絶望した。

自分が地球に絶対に帰れないだろうということに。


多分ずっと、もしかしたらという気持ちがあったのを、全部壊されたようだった。


夜空には星が輝いていた。東京に住んでいた私にとっては、大きく改善したがまだよくは目の見えないこの目でも、綺麗に星が見えることが本当に新鮮だった。昔、田舎の天文台に泊まりに行ったことがあったが、その時よりもよく見えた。むしろ、ちょっと見えないからこそ、強い光の星がよく見えた。


私は必死に知っている星座を探した。ぼんやりと強い光の星を頭の中でなぞって、どうにか知ってる星座を見つけようとした。


私が星を気に入ったと思った母がなん度も夜外に出してくれたので、なん度も諦めず、探した。


結果は惨敗。どの星の位置も整合性は取れなかった。


それは多分、今までのどんなものよりも決定的な、ここが地球でない証拠だった。


世話をされている感じからしても、文明レベルがそれほど高いとは思えなかった。

私がここからどんなに頑張っても、地球に帰るなんてことはできないだろう。そもそも、ここは同じ銀河なのだろうか。同じ宇宙なのだろうか、わからない。


それに強い確信を持った時、深い絶望と、開放感と、虚無感が襲った。


大学に行けないことはそれほど問題ではなかった。単純に、これからいろんなことを学んでいくはずだったのに、もう無理だろうというのが絶望だった。


家族にもう会えないこともとても辛かったが、それと同時に、義務感からの解放を覚えた。家族を背負っていかなくてもいいことは、思ったよりも解放感がすごかった。そしてそう思う自分に苛立った。


前の人生が終わったという妙な納得感に、絶望と共に虚無感を感じた。これからこの人生を生きていく意味はあるのかと、何度も考えた。


生活レベルも日本とは比べ物にならないほど低いことは、明白だった。

赤ん坊ということもあって、食べ物は母乳とドロドロしたよくわからないなにか粥のようでたぶん何かが違う食べ物。これを思えば、学校の調理実習で食べた、とてもまずいと思った赤ん坊の離乳食は、多分めちゃくちゃに美味しい部類だったと思う。

布のおむつ、絶対に清潔ではない黒い手でべたべた触ってくる家族。よく見えなくてもすぐに理解した、家族で住むには明らかに狭い家。

それと、常に漂う異臭。


しかし、人は、いやもう既に人間でないかもしれないが、わたしは、どうやら適応する生き物らしい。


私はその絶望のどんぞこから、わりとすぐにこの生活に適応した。

あのままの人生では絶対にいけなかったであろう、地球ではない惑星にこれたのだ、というポジティブな思考を持てたのは、赤ん坊の柔軟さゆえか、それとも確かな時間をここで過ごしたからなのか、わからない。

ここまで能天気なのはさすがに、前の私では考えられないことだ。

まあ、もう前の私ではないのだろう。


絶望から完璧に立ち直れたわけではない。常にここからいなくなりたいというのは消えなかった。


そんな中でも、多分、私にベットから落ちて死んでみる、という選択を取らせなかったのは、たぶん、科学だ。


ーーある時母が、持っていた木のコップから水をこぼしたことがあった。ベットの枠の上に、水滴が落ちていた。


別にただ、水滴が一滴、そこにあるだけだった。


立つことができるようになっていた私は、ふと立って、それをじっと見た。


水滴は、表面張力で丸くなっていて、だんだん枠の木らしきものに吸い込まれていった。


それを私は、ずっと見ていた。

そしてふいに、高揚した。

よくわからない繊維に、ひたいの玉、知らない星に、知らない人。でも、こういう現象は変わらない。


色々参っていた私には、ただその、小学生が友達と不思議だね、といいあうような、誰でも知ってる現象が、私が唯一縋れる頼りがいのある命綱に見えた。


こんな地球の遠くの惑星でも、地球の偉人たちが探求した再現性は損なわれない。


ああ、なんと身勝手で、なんと美しいのだろう。


理学という支配者は。

前置きはここまで、次こそは科学に触ろうね。

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