表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

サーベル登場

 セリアたちは王都ザラームへと戻っていた。

 報告を受けたサイファーン王は、南部村の惨状と副官カシーム討伐の功績を正式に認め、セリアとグリに再び礼を述べた。

 だが、その表情は以前よりも険しい。

「……烈砂のサーベル本人が動き出した可能性が高い。王都を守る防衛線を強化しなくてはなるまい。」

 玉座の間で王が静かに告げると、ラシードが一歩前へ出た。

「陛下、私より提案がございます。  神獣様とセリア殿を危険な最前線に立たせるのではなく、逆にサーベルを誘い出す陽動部隊として彼らを囮に——」

「ちょっと待って!? 私たちを囮に!?」

「……合理的ではあるが、あまりにも危険だ。」

 サイファーン王は腕を組み、深くうなずいた。

「しかし、奴と戦う覚悟があるというのなら……手を貸そう。  サーベルが目をつけるとすれば、恐らく——西の神殿跡。  そこはかつて、この地に神々を祀っていた場所。そして……神獣伝承の残る唯一の地だ。」

「神獣伝承……」

 セリアはグリの頭を見つめた。

「そこに行けば……何か、分かるかもしれないんですね?」

 王はうなずいた。

「本来であれば、伝承の地を訪れるのは聖職者の役目だ。  だが、今は非常時。おぬしたちに託そう。」

 セリアは小さく頷き、グリに目配せをした。

「行こう、神獣様……そこが、たぶん……決戦の地になる。」

「イコウ!」

 こうして、彼らの次なる目的地は——

 バルハッド西部に眠る、忘れられた神殿跡に決まった。


 数日後。

 セリアとグリ、そして護衛として同行するラシードは、ラクダの背に揺られながら砂漠の西へと進んでいた。

 太陽は容赦なく照りつけ、熱風が砂粒を巻き上げる。

 だが、不思議なことに——  その道のりは、どこか静かすぎた。

「……変だな。ここ数日は盗賊や魔物の姿すらない。」

 ラシードが周囲を見回しながら呟く。

「神獣様が一緒だから、避けてるとか……?」

「ヨケテル?」

「……それならいいけど、なんか、嫌な予感するんだよね……」

 セリアがつぶやいたその時だった。

 ——地鳴り。

 砂の海が揺れた。

「っ……!? この音……!」

 ラシードが咄嗟に前へ出て、剣の柄に手をかける。

 次の瞬間。  砂の地面が爆ぜ、舞い上がった砂塵の中から、

 赤い布を纏い、黄金の曲刀を携えた男が現れた。

「……ようやく会えたな、神獣よ。」

 その声音は、灼けた岩のように乾き、鋭かった。

「……烈砂のサーベル……!」

 セリアが声を詰まらせる。

 男はゆっくりと砂の上を歩き出しながら、薄く笑った。

「この砂漠に、神などいらぬ。神を崇める民も、使いも、すべて潰す。」

 砂漠の風が吹き抜ける。  灼熱の地で、最後の戦いが——始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ