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introductionσ 初めて動物を殺した日

動物は好きだ。千葉動物公園には子供の頃から何回も行っている。お気に入りの動物はレッサーパンダの風太くんだ。動物を殺そうと思ったことはこれまで一度もないし近くの畑で蝶々が飛んでいたら思わずうっとり見惚れてしまう。


「由香莉は優しい子だね」


子供の頃から何度も言われてきた。父に、母に、先生に、友達に。

そんな私が今、生まれて初めて目の前の動物を――自分の意志で殺そうとしている。


苦しい、苦しい、苦しい……!

目の前には脊髄を破壊されて動けなくなった解剖実験用の巨大なウシガエルが横たわっている。これから私がやる作業は今も生きているこの子の胸にメスを入れ、鋏で骨を切り、肺を取り除き、心臓「だけ」を摘出する作業だ。

この課題をクリアしないと単位がもらえないということは頭では理解しているが目の前で手足をピクピク動かして必死に生きようとしているこの子を見ていると体が鉛のように重くなってしまい手が動かなくなった。それなのに心臓だけは激しく動いていて私の胸をギュッと締め付けてくる。そんな時、ふいに胃から喉にかけて「何か」が駆け巡ってきた。


(嘘でしょ……こんな時に!?)


昔に比べて減ってきたものの、発作の時に使う頓服薬は常に持ち歩いている。「それ」を使っている姿を人に見られたくないので発作の時はトイレに隠れて使用することが多い。だけど、今私たちがいるのは動物実験用の実習教室。ここでは走るのは厳禁だ。今からトイレまで歩いて行って「それ」を使っても間に合わないかもしれない。仕方ない。みんなに見られたくなかったけど使うしかない……そんな風に考えていた時だった。


「相葉さん、大丈夫?凄く顔色悪いよ。休憩しようか?」


そう、声をかけてくれたのは私の実習パートナーの柳朱莉さんだった。

薬学部1年生ではいきなりカエルを解剖します。今でも多分……

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