EPISODE4、準備期間1
騒ぎの後、無事に適正職業を登録した2人は、雑貨屋に足を踏み入れ、店内に並ぶ様々なアイテムに目を奪われた。
色鮮やかな数々の魔法瓶や、冒険に必要な小道具が整然と並んでいる。
店内は穏やかな音楽が流れ、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
「まずは、必要なものを揃えよう」
と、ストリアが棚に手を伸ばす。
「水筒に食料は買うとして、傷を治す魔法瓶とか必要?」
ネイフェンが尋ねると、ストリアが首を傾げる。
「要るのかなぁ…」
すると店主が声を掛けて来る。
ストリアが山に必要な道具を尋ねると、傷を治す魔法瓶を勧めて来た。
「この魔法瓶は、どんな怪我にも効きますよ。特に山奥では何があるか分かりませんからねぇ」
店主は緑色の魔法瓶を片手に自分の指をナイフで切る。
血が流れ落ちるも、緑色の魔法瓶を掛けるとたちまちに傷が塞がった。
「ほら凄いでしょう?」
店主は生き生きとストリアに勧めるが腕を組んだままだ。
そして、心の中にあるのは、
「正直に言うと要らないんだよね。でも店主に悪い気もするし…」
という気持ちだった。
勇者の末裔であるストリアは、あらゆる魔法に精通し常人ならざる回復力を持つ。
自分で治せるから回復魔法瓶は必要ないのだ。
店の片隅で、二人は店主と交渉しながら、必要な物を一つ一つ手に取っていく。
店主は親切で、彼女たちの冒険に適したアイテムをいくつかお勧めしてくれた。
「ありがとうございます。せっかくなのでこれもいただきます」
と、ストリアは感謝の言葉を述べながら必要な物を揃えていく。
しかし、ギルを持ち合わせていない事をすっかり忘れていた。
「弱ったな…お金忘れたんだった」
「また誰かから取って来ようか?」
「それじゃあ、ただの強盗じゃない…」
ストリアは魔法瓶に目をやると店主に尋ねる。
「申し訳ないですが、今、ギルを持ち合わせていなくて物々交換でもいいですか?」
「構いませんよ。宝石でも何でも…」
ストリアの外見だけを見れば、清廉なドレスに立ち振る舞い。
お嬢様に見える。
支払いには不安要素はないと判断したのだ。
「瓶に入った水を頂けますか?」
「どうぞ」
ストリアは瓶に入った水を左手で持つ。
「ん…」
金色の輝きと共に瓶に入った水は金色の液体へと変わる。
「こ、これは!?」
店主は金色の液体を受け取り、持ち前の鑑定スキルで鑑定すると、目玉が飛び出そうになるほどの衝撃が走った。
「ここまで、高密度の聖水は初めてお目に掛かりましたよ…!」
鑑定の結果は、金色の聖水。
体力回復だけでなく状態異常までも治してしまう優れもの。
腕の良い錬金術師や魔術師が生成するという事もあり、実際に購入すると、1本1万ギルはする。
大国では流通しているか、地方には流通おらず希少価値が高い。
「お嬢さんは、さぞ高名な魔術師ですな!」
「あ、いえ。そんな大層な者ではないので。お気になさらず」
勇者の末裔が扱えるとされる【浄化の光】。
汚染された水さえ浄化し、枯れ果てた作物はたちまちに実りある作物となる。
「代金の代わりになるか分かりませんが、10本ほど作りましたので、どうかこれで…」
「お釣りが来ますよ!!ありがとうございます!これからもどうか、ご贔屓に!!」
店主は御満悦だ。