EPISODE2、いざ、依頼!
ネイフェンは、ストリアの横で嬉しそうな笑顔を浮かべる。
彼女の心の中には、冒険への興奮とともに、少しの不安も渦巻いていた。
新しい世界に飛び込むことへの期待と、これから待ち受ける困難に対する緊張感が走る。
受付係は、二人の様子を見つめながら、手続きの説明を続けた。
「こちらの用紙に必要事項を記入してください。登録が完了すると、冒険者としての証明書が発行されます」
ストリアは用紙を受け取り、項目に沿って慎重に記入を始めた。
「ほらネイの分もあるから書いて。ちゃんと読めるように書くんだよ?」
「うん、わかった!」
ネイフェンは目を輝かせながら、自分の名前や好みを考え、楽しそうに書き込んでいく。
既に心の中では、どんな冒険が待っているのか、どんな仲間と出会うのか、想像を膨らませていた。
やがて、二人は必要事項を全て記入し終え、ストリアは少し緊張した面持ちで用紙を受付係に渡すと、彼女はにっこりと微笑んで受け取った。
「ありがとうございます。確認しますので少々お待ち下さい」
受付係は受け取った用紙を確認し、項目をチェックしていく。
「1つご確認なんですが…」
受付係が苦笑いを浮かべると2人は首を傾げる。
「何故、お2人は冒険者に?」
「「自由だから」」
即答すると、受付係はその返答に驚きながらも「そうですか…分かりました」と頷いた。
「登録手続きは以上となります。最後にこちらへサインをお願いします」
ストリアはサインをし、ネイフェンも続けて自分の名前を記した。
受付係はそれを確認し、すぐに冒険者としての証明書を発行した。
「お待たせしました。これがあなたたちの冒険者証です。これを持っている限り、様々な依頼を受けることができますよ」
証明書を手にした二人は、まるで宝物を手に入れたかのように目を輝かせた。
「やった!ついにわたしたちも冒険者だ!」
ネイフェンは嬉しさを抑えきれず、ストリアに抱きつく。
周囲の冒険者たちもその様子を微笑ましく見守っていた。ストリアは少し恥ずかしげに笑いながら、
「これからが本当の冒険だね。まずは掲示板でも確認しに行こうか」
2人は掲示板へと向かうと、担当した受付係は深い溜め息を零す。
「どしたの?溜め息なんかついちゃって」
受付係に声を掛けたのは、豊満な胸を持つ先輩の受付係だった。
「いえ、さっきのお2人珍しいなと…」
少し困惑した様子だった。
「なして?」
「これ見てください…」
登録用紙を先輩受付係に差し出すと吹き出しながら小声になる。
『 勇者の末裔と大魔王の直系!?何で冒険者に!?』
『 私が知りたいくらいですっ!』
誰もが憧れる職業といえど、常に危険が伴う。
約束された将来がある2人が冒険者になる理由に驚きを隠せない様子だった。
一方、2人は掲示板の前でしばらく考え込む。
掲示板にはさまざまな依頼が掲示されており、色とりどりの紙が風に揺れている。
その中には、魔物の討伐や、失われた宝物の探索、村人の手伝いなど、冒険者を求める依頼が並んでいた。
「これ、面白そう!」
ネイフェンが指さすと、ストリアもその内容に目を通した。
「『山の奥に現れる魔物を討伐せよ』か。難易度★5つ…て。あのねぇ」
ストリアは目頭を抑える。
「装備をままならないのに、最高難易度に挑戦して死んだら即終了じゃない…」
開始早々冒険者人生に幕を降ろす羽目になる。
「ちぇ」とネイフェンは、そっぽを向く。
「仮に私達に特別な力があったとして、特別な力=強さじゃないでしょ」
ストリアの言う通り、勇者の末裔、大魔王の直系といっても冒険には豊富な知識と経験が必要となる。
力だけあっても命を落とす可能性が高い。
「じゃあ、これは!?」
ネイフェンは意気込みを見せ、ストリアへ依頼を突き付けるのだった。