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プロローグ

 天界。


 魔界。


 人間界。


 世界を巻き込んだ大戦が勃発した。


 1000年にも渡る盟約が破られたのだ。


 世界の均衡を保つこと、【完全平和】という盟約だった。


 強大な力を持つ者達が互いに手を取り合ってこそ、為せるものである。


 しかし、突如として魔界が【大魔王】を筆頭に人間界に侵攻。


 天界も人間界に加勢すべく、三勢力を巻き込んだ大戦へと発展したのだ。


 人間界では【大魔王】を討ち滅ぼす存在、【勇者】が誕生し、数百年にも渡り魔王の軍勢と世代を超える戦いとなる。


 そして、天界では一部の天使勢力が武装蜂起し、女神勢力との激戦が繰り広げられた。


 平和とは程遠い戦乱。地獄絵図だ。


 終わりの見えない戦争に、終止符を討つ存在がとうとう現れたーー。


「進めッ踏み潰せッ!他種族を滅ぼさなければ魔族に安住の地など訪れないッ!!」


 幾千万の魔族、魔物を従える大魔王ゴラッサ。


 紫の肌を持ち、剥き出しになった牙、頭には二対に伸びる歪な角。


 血管が浮き出る程の豪腕に、背中に広げる悪魔の羽、体長は10メートルを超える巨体。


 立ち塞がる勇者や数多の英雄を屠って来た。


 唸る豪腕は地を割り、咆哮は空を切り裂く。


 放たれる魔法や魔力による攻撃は、虫を踏み潰すように命を簡単に奪い去る。


 大魔王の軍勢に立ち塞がるのは、歴代勇者の中でも最強と謳われる【覚醒勇者】フリー。


 金色の短髪に碧き瞳を持ち、金色の鎧。


 あらゆる色を持つ宝石が埋め込まれた宝剣を大魔王に向ける。


 後ろには十人の英雄達がフリーを見守っていた。


「貴様らも懲りないなッ!勇者如き、また捻り潰してくれるッ!!」


 大魔王は拳を硬め、豪快に拳を打ち抜いただけで暴風が吹き荒れ衝撃波がフリーを襲う。


 他の魔族達は勝利を確信し、余裕の表情だ。


 大魔王でさえ、口角を上げていた。


 フリーはただ宝剣を静かに、水平に払うと金色の光と共に衝撃波が掻き消される。


「何をした貴様ッ!俺様の一撃を防いだだと!?」


 大魔王は声を荒らげ、目の前で起きた現実を受け入れずにいた。


 受け入れられるはずもない。


 歴代の勇者達は先程の攻撃で致命傷になるか、防ぐだけか、葬るか。


 完全に掻き消す者は存在しなかった。


 苛立ちを見せた大魔王は再び拳を固め、勇者ではなく自身の軍勢へと放った。


「大魔王様!?」


 咄嗟の行動に反応出来なかった魔族達は暴風が吹き荒れる衝撃波の餌食となった。


 抉れる地面と共に、体は捻れて潰れ、ぐちゃぐちゃのまま、肉塊にすら残らず消滅する。


 仲間である魔族すらも手に掛ける残虐さ。


 失ったところで痛くも痒くもない。


 大魔王にとって同族であっても道具でしかないのだ。


 その証拠に自身が誇る絶対的力を試したのだ。


 それ程までに立ちはだかる勇者の存在を認めたくなかった。


「何度やっても同じ事だ。俺にはお前の攻撃は通用しないぞ」


 警告するように、勇者フリーが金色に輝く宝剣を掲げる。


 放たれた光線は、空を貫き、乾いた大地さえも豊かな緑が生い茂る。


 温かな光。


 真の平和を願う心に、宝剣が応え、今の勇者の力がある。


「行くぞ大魔王!ここでお前を倒す!」


 パタン。


 少女は、本を閉じた。


 先の出来事は全て、物語で描かれた事である。


 深い溜め息を零し、長い銀髪を靡かせ、本を自室の棚へと戻す。


「ようやく読み終わったかー」


 モグモグとクッキーを頬張りながら、少女に声を掛けたのは紫色の肌に黒き角、短めの紫髪を揺らす少女。


 声を掛けられた少女を溜め息混じりに碧眼を向けながら言葉を返した。


「居たのね。早く声掛けてくれたらいいのに」


「ずっと居たよ!なんならもっと前に声掛けたよ!!」


 ご立腹だ。


「これから冒険者の登録行くってのに、待たせんなよな!」


 クッキーを頬張っていた少女の名は、


 ネイフェン・ヴィ・アルセレス。


 かつて他種族を滅ぼそうとした大魔王ゴラッサの直系魔族である。


「別にいつでも出来るじゃない」


 銀髪の少女の名は、


 ストリア・エストリカ。


【覚醒勇者】として語り継がれる勇者フリーの末裔である。


 語り継がれる勇者と大魔王の決戦の後、人類と魔族は争いを止め共存することを誓った。


 魔族は人類に力を。


 人類は魔族に繁栄を。


 それぞれ約束した。


 魔族が他種族を滅ぼさなければならなかったのは、増えた魔族達を養う為だったという。


 奪う事、与えられる事でしか存在出来なかった魔族に人類は自給自足の術を伝え、その見返りとして魔族は人類に対して、魔法や魔術、身を守る術を伝えたのだ。


 もう1000年前になる出来事だが、過去は過去と今を生きる人達は前を向いている。


 今では魔族と結婚…なんてしている人間もいるくらいだ。


 この2人は、似た境遇から意気投合し、大親友となった。


 ストリアは、代々勇者の血族が治める勇王国フリーの女王となるべく育てられたのだが、縛られるのが性にあわなかったのか頑なに拒否。


 ネイフェンは、魔族を統べる大魔王となるべく育てあげられるも自由を奪われるのに嫌気が差し断固拒否。


 そんな2人が偶然出会い、現在に至る。


 今を生きる人達に伝わるおとぎ話がある。


 真の勇者と真の魔王は惹かれ合うーーーと。


 これは、彼女達が未来へと紡ぐ物語…?



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