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第四話  他者と自分、人と化け物 ―クラネットの晩餐会―

どうも、蒼月です。



今しばらく、こんな感じの話が続く、かな。


ただ、明日から部活が始まるので、更新が滞るかもしれませんが御容赦下さい。



また、感想、評価、要望、質問等、常に受け付けております。




これからも『end・of・days』をよろしくお願いします。



 『人にはその人その人の、人それぞれの歩み方が在るものである』










 「キョウさん、お代わりは沢山ありますからね」




 少女、アリス・クラネットが言う。






 「じゃんじゃん食えよぉ、少年」




 寮母、ミリア・クラネットが背中を叩いてくる。










 ……なんだ、この状況。










 あの後、自室に向かうのを早々に諦めた俺は、お礼やらお茶やらとやけに高いテンションの二人に押し負け、流される内になんやかんやあって、夕食にお呼ばれすることになった。









 なんやかんやって何だとは聞かないでもらおうか。



 ……俺だって何でこうなったのか解らないのだから。








 「へぇ〜、キョウさんも一年生なんですか。じゃあ私と同い年ですね」




 さんじゃなくて君ですね、と言いながら笑う彼女を見ると最初の印象が段々と薄れていく。










(……まぁ、元気無いより元気なほうがいいとは思うけど)







 ……さて、気づいた人もいるだろうが(というか皆解っていると思う)、アリスとミリアは同じクラネット性であり血縁関係、つまり家族、更に言えば姉妹だ。



 姉であるミリアは聖セレスティア学園の卒業生で、卒業後はそのまま寮母として親元を離れ、住み込みで働いているらしい。




 大のお姉ちゃん子だった妹のアリスは、学園に入学することが決まった次の日から、此処で一緒に暮らしているそうだ。










 「……でね、お姉ちゃんはね学園初の女子生徒会長なんだよ!」



 「へぇ、凄いな」






 少し興奮気味に姉の自慢話をするアリスは、本当に嬉しそうで、そんな妹を見るミリアの目は本当に優しくて、家族って感じが凄くした。









 ……こういうのも悪くない。





 最初は嫌々とは言わないまでも、ほぼ強制的に参加させられていたわけだが、今はこの光景が何だかとても微笑ましく……







 (家族、か)







 ……同時にとても眩しかった。









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 ―意思無き刃に意味など無い―










 「……『影刃』」








 視認することすら叶わない刃の軌跡には、二つに別れた桜の花片。



 幾つものそれは、俺の周りに数多もの道を創り続ける。










   『影刃』



 影を利用することにより相手どころか第三者にすら目視することを許さぬ見えない刃。






 ……暗殺の刃。






 「……ハァ」




 溜め息をつき手を止める。





 その手には一振りの刀。










 ……この世界では刀は珍しい。


 というか、存在すらしないのかも知れない。








 そんなことを思いながら、ふと目を刀に落とすと、ソレは月明かりをうけ、黒く煌めいた。










 “黒刀”『月影つきかげ





 月の光を意味するその刀は、刃文すら解らないほどの漆黒の刀身を持ち、その漆黒はまるで水面の様に全てを映し、光を反射し黒く輝く。








 ……ちなみに刃文というのは、打刀の製造工程で刀身に浮かぶ模様のことだ。


 大別すると直刃、乱刃の二種類、細かくなら数十種類はある。





 焼き入れの仕方で模様の型が変わるので、刀匠によって個性が出るため、鑑定にも使われるのだ。










 まぁ、詰まるところ誰が刀を造ろうが、それが人である限り刃文はできるわけであり、それが黒刀であろうと決してそれは変わらないわけで、このような刀は人の手では創れないものだというわけだ。




 そしてこの材質も、人の手の届かぬ物質だということが、素人目ですらわかるほどの物だ。










 ……人外の存在に創られた刀。










 化け物の俺に相応しい。










 刀を鞘に仕舞いながら、俺は少しばかり自嘲気味な笑みを独り漏らした。










………………………………










 ……結局、俺がクラネット姉妹の晩餐から逃れることができたのは、部屋の時計が深夜零時をまわってからだった。










 あの後、酒を飲んで酔っ払ったミリアに散々絡まれたのは、まあ良い。



 アリスと二人で対処できたからだ。










 しかし、あろうことかミリアは、妹であるアリスに無理矢理酒を飲ましたのだ。










 ……そこからは、本当の地獄だった。










 相変わらず絡んで来る姉、ミリア。








 酔ったことにより性格が豹変し、手に負えなくなった妹、アリス。










 「ねぇ、少年。あたしずっと寮母やってるじゃない?学生の時も生徒会の仕事で忙しかったのよね。……だからさぁ彼氏とかできたこと無いんだよねぇ……」










 「キョウくぅ〜ん、わたちのこと好きぃ?好きでしょ?もちろん好きだよねぇ。だぁかぁらぁさぁ、私だけを見てよね?見るよね?ていうか見なさい!でなきゃ××を〇〇にして●●で●〇だからね、解ったぁ?」









 「……今さぁ、凄く体が熱いんだよねぇ。もぉちぃろぉん少年が冷ましてくれるよねぇ、体で」










 「……年頃の娘にもよぉ、いろいろあるんだよ。最近はよぉ、特にさぁ、大変なんだよ、わかる?……ホントやってらんないわ、国は何してんだよ、おい。」






 ………誰だよ。










………………………………











 ……二人が酔い潰れて眠った時は泣いたね。



 泣いて喜んだね、小躍りしてさぁ。










 まぁ、片付けと二人の介抱という仕事が残っていたわけだけど。












 ……そうして、今俺は刀を握っているわけだ。










 今は深夜二時。




 朝に弱い俺はいつも夜に稽古をしている。



 まぁ、例外もあるが。










 仮想敵は複数。



 桜の花片が敵。










 ……まぁ、そんな訓練を終えた俺は『月影』を担いで自室に向かう。




 え、荷物?



 野暮なことは聞くな。




 全ては常に俺と共に在る。











 ……え、性格がおかしいって?



 文句なら姉妹に言え、姉妹に。












……俺が完全に元に戻ったと自分で確信したのは、朝食の最中だった。

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