第零.伍話 愚か者には天罰を……
う〜ん、なんじゃこりゃ?
次回から本編?
「動くんじゃねぇぞ!」
薄暗い空間に男の声が響き渡る。何人かの人間が脅える中、何度目なのかわからないその言葉に、正直俺は苛立ち始めていた。
(うるさいな)
たかが知れる。冷たい目で男を見ながら、心の中で奴を罵倒する。
こういう輩は掃いて捨てるほどいる。
強がってはいるが、結局は小心者なのだ。
そう、何か行動しなければ畏れを紛らわせることのできない愚か者……
……此処は『魔導列車』。その名の通り魔力で動くこれは、国ではなく独立した機関である『最高評議会』が管理している。
その理由は、全ての国の人間が平等に利用するには、国という垣根を越える必要が在ったためであり、そのためにはどこかの国が管理するというわけにはいかなかったからだ。
そのお陰で、たとえ戦時中の国でも、その戦争相手の国以外に向かうのなら、数少ない『例外』を除いて利用することができるのだが……
(こんな輩が出てくるわけだ)
今、この魔導列車はとある犯罪グループに占領されている。
目的は不明。知らないし知りたいとも思わない。
なぜなら……
《ゴトン!》
突然、列車が大きく揺れる。
この場所にいる全員が体勢を崩した。
……勿論、俺を除いて。
体勢を崩した男に飛び掛かり、後頭部に手刀を叩き込む。
それだけで男は無力化した。
(……む)
おかしい。何か違和感を感じる。
(弱すぎる)
そう、弱すぎる。
この犯罪グループは少人数だ。多分十人はいないだろう。
この人数で警備をものともせず、こんな短時間でこの列車を占拠する手腕は俺から見てもなかなかのものだと思う。
だが実際はどうだろうか?
想像から大きく外れるこの弱さ!
この期待ハズレ感!
気がつけば、もう五人ほど倒している。
……いつの間に……
「…笑えねぇ」
疑問が残る。これだけ弱いのなら、どうやってこの列車を占拠したのか?
考えられる可能性は二つ。
よほど頭のいい奴がグループいて、そいつが計画練って、その計画通りに事が進んだのか、それとも……。
「随分きな臭くなってきたな」
遊んでる場合じゃなさそうだ。
もしかしたら、とんでもない事になるかも知れない。
俺は残りの奴らを片付けるために扉を開け、視認できない速さで飛び出す。
狙うは……。
男達の中心で黒刃が閃いた時、紅い、紅い華が咲き乱れた。