幻想空間 ―0―
どうも蒼月です。
……今回は本編ではありません。
これから時々、こんなのがはいってきますが、どうぞ生暖かい目で見守ってやってください。
― 幻想空間 0 ―
……闇。
何も見えない漆黒の暗闇。
目を開けると、まず始めにそんな言葉が思い浮かんだ。
何もありはしない無の空間。
そこに僕は在った。
……此処は何処だろう?
……何時から此処に居るのだろう?
……どうして此処に居るのだろう?
そんな幾つもの疑問が、浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
……それらの疑問に対する答えを、生憎僕は持ち合わせてはいなかった。
ただひとつ、僕にわかることといったら、僕はこの世界にひとりだけ存在しているという事実だけ。
他に誰もいない。
たった独り。
本当の孤独。
僕の中にある空洞。
それが奏で続ける幾つもの不協和音。
そしてこの虚無感。
……此処は、終わってしまったセカイ。
何も無いこの場所に、鐘の音が響くことはない。
全てを失った僕に、光が射すこともない。
まるで亡者のように、ただ存在し続ける僕に残されたものといったら、感情とも言えない様々なものが混じり合いできた耳障りな音色。
そして、もうひとつ――
……セカイは廻っている。
つねに等しく。
それは、何が起ころうと変わることがないこと。
そう、たとえ僕が世界よりも大切に思っているものを失ったとしても、世界は廻り続けるし、僕も生き続ける。
それどころか、今は苦しくても、いずれ全てを忘れてしまうのだろう。
……ふと、顔をあげる。
そこには、光が在った。
この暗闇を照らす光が。
僕は、その光に手を伸ばす。
……そうだ。
僕は独りじゃなかった。
“ソレ”は、このセカイでの唯一の温もりだった。
ずっと……二人でずっと一緒に生きてきたんだ……
――この誰もいない、寂し気なセカイを――
……僕の中に残っているのは、感情とも言えない不快な音色と、あの頃の記憶のカケラ。
それは、もう届かないあの頃の希望。
未来を、奇跡を信じていたあの日の面影。
……僕たちが求めていたもの。
多分それは、ちっぽけでいて大それたもの。
やさしくて、やわらかくて、そろでいて、あたたかい――
……そう、僕たちはこのセカイで生きていた。